一体何を思うというのか
ザクザクザクザク
野菜が切られていく。的確な大きさに切られていく。
グツグツグツグツ
野菜が煮詰まっていく。適切な時間までボイルされている。
何も感じなくなったような、この世界が
心地良くなんてないことくらい、ここにいる誰もが理解していた。
古村乃愛は、なんとなく新倉友一を避けている。
避けている理由だって、よくわかる。
それを気にしているのは古森采花
気にするものの多くのことを語らないように振る舞っているのが新河誠
気にしてはいないが、何かあったんだと察しているのは近藤憐
他の人ほど察しているわけでは無いけれども、持ち前の感性で何かあったことを察している武田魅音
何も感じていない梅野傑と衞藤駿平
どうやって会長と近づくか考え続けている竹川和
そして、どこか上の空の遠坂苑辞
楽しい旅行のはずなのに、辛いことなんて起こっていないのに、どことなく空気は緩んでいる。
正でも負でもない、中和。
中庸で中間でちょうど良い……わけがない。
何でもない関係が、心地良いなんていうのは詭弁だ。
それほど都合の良い人間なんて、彼らの眩しさの中には誰もいない。
でももしかしたら、青春というのはそんなものなのかもしれない。
大人でも子供でもない時期を過ごし
未成熟と成熟の狭間で、不明瞭なメトロノームが音を立て続ける。
目に見えないことを偽りの箱に入れないで
いつか見えるんじゃないかと目を凝らす。
仕方ないのだこの結末は
Neither nor がこの時期の自明なんだ。
そう思えばこの時間も、緩くて不確かでどことなく定まらない空中楼閣も、愛せてしまうのが不思議なことで……
ん?どうしたんだ?
貴女は誰だって?
下手なポエムなんて書くなって?
まあ、誰でも良いじゃないか。
君達と同じ、この捻れに捻れた青春物語を拝見し続けている酔狂者だよ。
登場人物じゃない奴が話すなって?
そういうの冷めるからやめてくれって?
まあそういう固い意見は置いといてよ。もう2度と出てこないから許して欲しいな。一回だけの我儘だよ。
許されない?やり直せない?
まあまあ。でもさ、みんなも一度考えてみなって。
新倉友一は、この時一体何を思っていたんだろうねって。
残念ながらまだ、彼の気持ちは語らせてくれないようだ。
もしかしたら、自分すら分かっていないのかもしれない。
いや、やめておこう。無駄な先入観は、斜視の世界へと誘ってしまう。
まあ、さ。彼に想いを馳せながら、もう少しだけこの不穏で面倒でどうしようもないお話を楽しもうじゃないか。
はじめてのおつかいを見守るような母性溢れる顔でも良いし
リアクションのいい芸人さんをいじるようなテンションでもいい
たまにこうして、臭いポエムを吐いてもいいから
この歪んだ世界の結末を、一緒に観に行こうじゃないか。
ね、いいでしょ?私はねそう思うよ。
あのときの私はね、そう思ってるんだよ。




