彼女は勇気を振り絞る②
もしも、もしもの話だ。
彼がここにいろと言ってきたとしたら、
出て行かないでほしいと懇願してきた場合、
少し時間を置いてからこの提案を撤回しよう。
でもその時は、私は君にお願いする事になる。
「好きです。付き合ってくださいと」
もう、名前のない関係は嫌だ。
友人にも恋人にもなれない関係を続けるのは、楽だけど苦しい。
彼を意識し始めた最初は、実はラッキーだと思っていた。
すぐそばに君がいる。昔私のことが好きだった君がいる。いつでもアピールできるし、そばにいれて嬉しい。
でもそれは、空虚なお飯事。
一緒にご飯を食べても、一緒に語り合っても、一緒の布団で寝ても、友一は私を見てくれない。今の私を見てくれない。
ならこんな関係、続けても苦しいだけだ。
本当はもっと早く行動すべきだったのかもしれない。でもあまりに早いと、友一は拒絶しただろう。
彼はいろんなことを私に話してくれた。施設のこと、バイト先のこと、ピアノのこと……
でも一度として、自分の感情について話してくれたことはない。
それは彼の、1人でなんでも解決しようとするメンタリティによるものかもしれない。
でもそれだけじゃない。彼はまだ私を受け入れてはくれない。
ありのままの私を愛してくれない。
だからこその……
「……そっか」
それは無情なる一言だった。
「わかった」
そう、友一は、引き止めてくれなかったのである?




