表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/365

4月14日その⑤

 その大手回転寿司チェーン店は、食べ終わったら皿を流しに滑り落としていくのだが、10皿毎におもちゃのもらえるルーレットが始まる。因みに10皿目は何気なく俺が入れて外れた。そして、俺が皿を流し入れたことで19カウントになった。次が最後の皿だ。


乃愛(のあ)、いつまで悩んでんの?」


 俺は肘をつきながら嘲る視線を彼女に送った。


「え、ええやん別に!!というか友一の食べ方がおかしいんや。レーンに流れているもん適当にパッパッと取って!あんた、マグロもサーモンも食べとらんやろ!?」

「脂の多い食べ物は嫌い」

「じじいか!!」


 そう言いつつじーっと注文を考える乃愛。いくらにサーモン、赤身にはまち。子供のような注文だなと思ったのは内緒だ。


「あーもう決めきれん!!友一、決めてくれへ……」

「いかか〆さば」

「はやっ!!即答しとる!!しかもチョイスはじじくさ!!」

「良いだろ別に。ほらもう2時間くらいここにいるだろ。そろそろ出ていかないとここ9時には閉まるんだし」


 そうだ。俺達はここで色々と話をし過ぎた。竹川(ちくかわ)が家を出て10分くらいノーパンで歩いてしまい急いで家に取りに帰った話とか、古森(ふるもり)がスタバでチョコフラペチーノぶちまけた話とか、近藤(ちかふじ)が最近ジャズを聴きながら勉強していることとか……あれ?話しているの、大体乃愛じゃないか?まあ俺は比較的寡黙だから、そうなるのも自明かもしれないが。


「…んじゃ、えんがわ!」


 ポチッと注文しようとした瞬間に、えんがわが流れてきた。


「あっこにあるぞ、えんがわ」


 ぽけっとする乃愛。そして自然な動きでそれを取る俺。乃愛の前にそれを差し出すと、ちょっとむすっとした顔をしていた。


「何がご不満ですかな?」

「ほんまあんたって、ロマンないな」

「回転寿司屋にロマン求めんなよ」

「いや、ここは最後の注文をするという踏ん切りが大事な要素な訳やん。それを無造作にこうやって置かれるのは、うん、どうかと思うで、うん…」


 そんなことを言いつつ、乃愛はもぐもぐとえんがわを食べていた。


「コリコリしてる」

「してるな」

「脂味薄い」

「そうだな」


 乃愛はコリコリ言わすことなく上品に飲み込んだ。


「友一はこういうのが好きやねんな」

「まあ、な」

「私にはまだ早い世界やったわ」


 そう言いつつしっかりと2つ目も食べていた。別に残すというのなら食べたのに。


「そりゃ人の好みは千差万別だからな。俺からしたら脂ギットギトのサーモンの良さがわからん」


 そして空っぽになった皿を流しに滑り落とそうとすると、鬼気迫る表情で乃愛が俺の手を掴んだ。


「それは!!それは許さん!!何考えとう!?!?」

「いやいや、食べ終わったから捨てようとした……」

「なんであんた1番楽しい所持ってこうとするんや!!」


 乃愛はまだ口の中にえんがわが入っている状態で、俺から皿を奪い取った。そしてゆっくり飲み込むと、唇についたご飯粒を拭った。


「いくで!!こい!!」


 ガチャコンと音を立てて、20皿目が投入された。そしてそれとともに、間の抜けたファンファーレが鳴り響いたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ