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Neither Nor〜友人にも恋人にもなれない2人の物語〜  作者: 春槻航真
とあるクラスの海色ダイアリー
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初日昼の部その⑧

「いや俺はさ、幼馴染とうまく付き合っていく方法について新河(しんかい)先生にご教授願いたいわけよ。もう夜通し語りたいくらいに」


 そう言って衛藤は鞄を下ろした。


「その意見には賛成しかねないな。何故なら俺と衛藤では個人の性格が全く違う。参考にならないだろう。どっちかっていうと新倉(にいくら)だな。夜通し語り合いたい」


 新河もそう言って登山用と見間違うようなリュックを下ろした。


「や、俺は別にどこでも良いけど……」


「いやあ困るなあ僕も新河がいいと思っていたんだよ。色んなところを旅してきた彼の話はとても興味深い。うんとても興味深い」


 遠坂(えんさか)はそう言ってエナメルバックを下ろした。


「んなこと言ったら俺は衛藤ともっとあの話について語りたいっての」


「マジでやだ」


 衛藤の反論など耳に入れず、梅野(ばいの)はビニール袋を置いた。ここがどこか?2人用の部屋だ。宿泊は2人と3人で部屋が別れる仕組みだ。どうせ宿の宴会場で一夜を過ごすような気がするのだが、何故かここで争いが起こっていた。いや違うな、ただこいつらこれを題材に楽しんでいるだけだ。


「いやいや俺は恋話をしたいだけなんだって。ほら無理じゃん!!新倉とか新河とかじゃできねえじゃん!!馬鹿にしているわけじゃなくて」


「俺はリア充だぞ?」


「だから余計にだよ!!!何聞いても幸せでよかったねーって感じで終わりだっての!!」


 新河は納得していない顔をしていた。


「んじゃ俺と新河が一緒の部屋になって、残り3人が3人部屋行けば?」


「俺はそれがいい」


「いやだ!」


 俺の提案に梅野は即決で賛成し衛藤は速攻で反対した。俺は当初、この変な流れは何の意図でしているのかわからなかった。しかし次の質問でそれがわかった。


「おーけーおーけー!じゃあ遠坂が恋話できるってんなら、遠坂新河で泊まろうじゃん」


 梅野の言葉で、俺だけハッとなった。これは遠坂を吊ろうとしていたのか。


「なんかあるか?」


 衛藤の言葉に、遠坂は真っ直ぐな目をしてこう言った。


「僕は会長が好きだ」


 真っ直ぐで、あまりにもど直球で、全ての恋話を一瞬で終わらしかねない爆風が吹き荒れた。まるで目の前に会長がいるかのような告白。


 え!?!?!?あ!?!?そういうこと!?!?!?俺は結構混乱した。会長……古村乃愛(こむらのあ)に恋慕の情を抱いていると。こんな真面目な奴が!!!


「こういうことじゃないのか?」


「い、いやこういうことだけどこういうことじゃないっていうか……」


「俺遠坂と組むわ!」


「いやいや新倉それは認められん。詳しく聞きたい」


 俺は強引に彼と同じ部屋になろうとしたが、他の連中から引き止められたのだった。なんで!?!?え!?!?なんで!?!?


 遠坂苑辞は古村乃愛のことが好きである。それは俺にとって、寝耳に水を垂らされたようなものだったのだ。

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