初日昼の部その③
ご厚意で更衣室を貸してもらい、全員水着に着替えた。俺も安物の海パンを履いて、その上からTシャツを着ていた。どちらも急場で揃えたものだ。
浜辺に着いた瞬間に、一斉に服を脱いだ。家族連れに混じって男女10人、一斉に水着になったのだ。カンカンに照りつける太陽光。海水浴日和を絵に描いたような日だった。
「んじゃ夕方まで自由時間!!!」
そう宣言した近藤は、周りがうおおおおと盛り上がる中、こちらへ近づいてきた。
「あー近藤お疲れ様」
駆け出していく他のメンバーを尻目に、俺は持ってきたビーチパラソルの下で氷漬けになったアクエリアスを飲んでいた。暑いのが嫌いとか、海に興味がないのではない。むしろ、氷漬けのアクエリアスというこれまで一度も飲んだことのなかった贅沢品に触れて、少し感動していただけだ。
「あーうん、お疲れ。海行かないの?」
「ん、あーもう少ししたらいく」
と言いつつ腰を下ろしていた俺の隣に、近藤は座った。すらっと長い手足が派手に露出していた。赤色の髪にとても似合う、灰色の少し大人しめな色をしたホルターネックビキニ。一緒にショッピングをした時に買ったものだ。やはり、というか。ちゃんと身につけてきたんだなと俺は感心していた。
「にしても晴れてよかった」
「それな。せっかくここまできて海に入れないって悲しいしな」
「そして良いくらいに人が少ない」
「あっ、これ少ないんだ」
海水浴場にいる人の平均なんて、試行回数1回目の自分には何一つわからなかった。ニュースとかで流れる映像も、ここ数年は家にテレビがないから見ていない。近藤はあまり意外そうな顔をしないで、
「そうだよー!もっとぎゅうぎゅう詰めの状態だったりするよ。ゴミ落ちてたりするし」
そう言って笑う近藤は、ふっと表情から笑みを消した。そしてこちらをじっとみてきた。紐の部分をふんわりと掴みながら、こちらを少し上目遣いして尋ねた。
「どう、かな?この水着」
その顔があまりにも色っぽくて、少し後退りしてしまった。こう言ったらアレだが、近藤はそこまで胸が大きいわけではない。むしろ小さい方だ。でも、それを感じさせない色香がそこにはあった。
「いい、と思うよ。ってか相談して選んだやつだし」
「そ、それもそうだね」
しかし流石に少し恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして視線を逸らした。
「……嬉しい」
そう率直な彼女の感想を遮るように、背後から塗るって手が入った。
「ひぃっっ!!!」
とびびった声を上げた俺。その手は胸のあたりで少しいやらしく撫でてきた。
「にーくら!!おーよご?」
黄色のオフショルダービキニを着た古森に手を引っ張られ、俺は太陽の下に連れてこられた。
「ほら、ちかちゃんも!」
無論近藤も一緒だった。




