表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Neither Nor〜友人にも恋人にもなれない2人の物語〜  作者: 春槻航真
とあるクラスの海色ダイアリー
325/365

初日昼の部その③

 ご厚意で更衣室を貸してもらい、全員水着に着替えた。俺も安物の海パンを履いて、その上からTシャツを着ていた。どちらも急場で揃えたものだ。


 浜辺に着いた瞬間に、一斉に服を脱いだ。家族連れに混じって男女10人、一斉に水着になったのだ。カンカンに照りつける太陽光。海水浴日和を絵に描いたような日だった。


「んじゃ夕方まで自由時間!!!」


 そう宣言した近藤(ちかふじ)は、周りがうおおおおと盛り上がる中、こちらへ近づいてきた。


「あー近藤お疲れ様」


 駆け出していく他のメンバーを尻目に、俺は持ってきたビーチパラソルの下で氷漬けになったアクエリアスを飲んでいた。暑いのが嫌いとか、海に興味がないのではない。むしろ、氷漬けのアクエリアスというこれまで一度も飲んだことのなかった贅沢品に触れて、少し感動していただけだ。


「あーうん、お疲れ。海行かないの?」

「ん、あーもう少ししたらいく」


 と言いつつ腰を下ろしていた俺の隣に、近藤は座った。すらっと長い手足が派手に露出していた。赤色の髪にとても似合う、灰色の少し大人しめな色をしたホルターネックビキニ。一緒にショッピングをした時に買ったものだ。やはり、というか。ちゃんと身につけてきたんだなと俺は感心していた。


「にしても晴れてよかった」

「それな。せっかくここまできて海に入れないって悲しいしな」

「そして良いくらいに人が少ない」

「あっ、これ少ないんだ」


 海水浴場にいる人の平均なんて、試行回数1回目の自分には何一つわからなかった。ニュースとかで流れる映像も、ここ数年は家にテレビがないから見ていない。近藤はあまり意外そうな顔をしないで、


「そうだよー!もっとぎゅうぎゅう詰めの状態だったりするよ。ゴミ落ちてたりするし」


 そう言って笑う近藤は、ふっと表情から笑みを消した。そしてこちらをじっとみてきた。紐の部分をふんわりと掴みながら、こちらを少し上目遣いして尋ねた。


「どう、かな?この水着」


 その顔があまりにも色っぽくて、少し後退りしてしまった。こう言ったらアレだが、近藤はそこまで胸が大きいわけではない。むしろ小さい方だ。でも、それを感じさせない色香がそこにはあった。


「いい、と思うよ。ってか相談して選んだやつだし」

「そ、それもそうだね」


 しかし流石に少し恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして視線を逸らした。


「……嬉しい」


 そう率直な彼女の感想を遮るように、背後から塗るって手が入った。


「ひぃっっ!!!」


 とびびった声を上げた俺。その手は胸のあたりで少しいやらしく撫でてきた。


「にーくら!!おーよご?」


 黄色のオフショルダービキニを着た古森(ふるもり)に手を引っ張られ、俺は太陽の下に連れてこられた。


「ほら、ちかちゃんも!」


 無論近藤も一緒だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ