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Neither Nor〜友人にも恋人にもなれない2人の物語〜  作者: 春槻航真
とあるクラスの海色ダイアリー
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初日昼の部その②

 まずは宿泊施設へと荷物を下ろすことになったご一行、どうせ大したことないだろうと思っていたその施設は、ものすごい豪勢なものだった。


「露天風呂あるー!!!!」

「うっわ何この土産コーナーやばくね!?!?!?」

「リラクゼーション施設!!!マッサージとか受けられるんだ!!!」


 綺麗で広くて気品のあるこの施設を、高校生が泊まるなんて……みたいなことを古森(ふるもり)は望んでいたのだろう。しかしその金持ちっぷりを十全に知っている俺と乃愛(のあ)はあまり驚かなかった。少なくとも至る所へ顔を出しに行ってはすげーすげーと言いまくる竹川(ちくかわ)梅野(ばいの)衛藤みたいなことにはなっていなかった。


「あの狸の置物信楽焼かなあ」

遠坂(えんさか)は相変わらず目の付け所がすごいな。俺はそれよりあっこの庭枯山水なのに岩の周りに波紋が入っていないのが気になる。水の質感なくね?」

「悪いけど新河(しんかい)君の方が目の付け所がすごいよ」


 武田はそう冷静な顔で突っ込んでいた。どうやら先ほどの落ち込みムードは少し払拭できたようだった。


「卓球とかできるんだってさ」

「温泉旅館って感じだな」


 なんとなく話を合わせる俺と乃愛。いや別に不満があったわけでは無い。乃愛は知らないが、少なくとも俺は旅館という類に泊まるのは初めてだし、文句を言えるほどの知識の蓄積もない。ただひとつだけ、ニヤニヤが止まらない古森がなんとなく鬱陶しかっただけだ。


「テンション上がらない!?2人とも?」


 近藤(ちかふじ)にそう声をかけられた。近藤もどっちかっていうとこの旅館に気分が高揚している様子だった。やばいなこれ、乗らないとやばいな。


「めっ、めっちゃあがってるよ!!!!!」

「す、すっごい!!!」


 たまには自分の感情を押し殺すことも大事だ。そう思って2人して声を上げた。前の方で満足げに頷いている古森を見てなんとなくイラッとした。


「絶対あいつ、これがしたくて企画したよな」

「まあ嬉しいけどな。滅多に泊まれるホテルやないやろし」


 そんな陰口を小声で付け足すのも忘れなかった。


「まだ部屋の方清掃が終わっておりませんので、こちらにて荷物をお預かりいたします。清掃が終わり次第順次こちらで運ばさせていただきますので、ご理解の程よろしくお願い致します」


 そう言われてみんなごつい荷物はそこに置き始めた。俺はないんだけれども。


「それでは竹の間にて昼の膳を用意しております」


 支配人にそう言われて、ご一行はお昼ご飯の場所へと向かっていった。


「これもドヤ顔案件なんかな」

「いやゆーて昼飯は大体が弁当やろ?んなとこまで自慢案件ではないやろ……」


 乃愛の予想はこうだった。大したことない弁当予想だった。なおその実態は……


「うっわお刺身じゃん!!!!」

「和牛のしゃぶしゃぶだって!!!」

「茶碗蒸しマジでうまい!!!」

「赤だしって渋くね??」

「それよりご飯これあきたこまちだぞ」

「……食べてわかるのそれ??」

「美味しいねー?新倉(にいくら)くん」


((しょっぱなからクライマックスしてんじゃねーか!!!!!!!!!!))


 その時、乃愛と俺は思った。ああ、この古森采花という女は、とても鷹翅家にあっているなと。あ、もちろん良い意味で、な。


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