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Neither Nor〜友人にも恋人にもなれない2人の物語〜  作者: 春槻航真
とあるクラスの海色ダイアリー
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初日昼の部その①

「そういや、海見るの初めてかも」


 俺の発したこの一言によって、車内は騒然としてしまった。よく考えれば神戸に行った時海を見ていたなと思い返したが、そんなものは記憶の片隅にすら置かれて無かった。ほとんど見てないし。


「え!?!?!?!?!?」


「まじか!?!?!?!?」


「うっそいまだにそんな人いるの!?!?!?!?!?新倉(にいくら)ってどこの国の人!?!?!?!?」


 車内の武田、遠坂(えんさか)竹川(ちくかわ)からは総ツッコミを喰らってしまった。特に竹川からは心底信じられないという目線を向けられてしまった。


「子供の頃に海水浴とか、一回は行くと思うんだけど」


「魅音の言う通りよ!!!!!何??山派!?!?山派だったのご両親」


 山派か海派かは不明だが、施設の方々は近くが山だからと紅葉狩りとかにはよく連れて行ってくれたな。俺はそう思って竹川の質問に首を振った。


「まじかー!!山派かあ」


「いや……」


「なら納得……するわけないでしょ!!!!!」


 若干遠坂と声が被り気味になったものの、竹川は更に突っ込んだ。いやそう言われても、少なくとも海水浴経験はないぞ?


「いやいやあり得ないって!!引きこもりすぎだって!!いくらうちらの学校海から距離あるからってそれはないって!!」


 まあ街中の学校だからな。そこだけ同意だ。そこだけ。


「んー、でも中学校の時、臨海学校とか無かったの?確か槻山の中学校みんな福井に行くって……」


 武田が痛いところをついてきた。確かにそんなものあった気がするが、あれは積み立てのお金を払わなければ参加できなかった。そしてそんなもの、払う余裕が我が家にあるわけない。


「あーでもそれ風邪ひいて休んだ……」


「あー!!!!!」


 俺の弁明を遮るように、先ほどから隣の席で黙っていた近藤(ちかふじ)が大声を上げた。無論みんなそれに気を取られた。近藤は何かを指し示していたようだったが、次第に人差し指を下降させていった。


「ど、どうしたのちかちゃん!?いきなり大声出して……」


「え?あーごめんごめん。海がチラッと見えた気がしたんだ!ほらあの木々の隙間から」


「あー確かに見えるけど、ほぼ見えないね」


「海だー!!!!!ってやつ、早くやりたーい」


 そして自然な流れで、俺の身の上話は流されていった。何故ならこの直後だった。


 これまで遮ってきた木々が退転した。コンクリートの建物もなくなった。そこに出てきたのは、淡い青色の液体集合。波音を荒々しく立てて白い泡を発生させるそれは、知識として認識できた。そう、


「わーきた!!!!!!!」


「おー!!!!!!!!」


「いくよ!」


 え?え?何をするんだろう??そう思ってたら近藤が小声で声をかけた。


「ほら、海だって叫ぼ」


 周りに聞こえないほど小さく、周りが聞き取れないほど早口なそれは、とても色っぽく聞こえた。


「せーのっっっ」


 そして竹川の号令をきっかけに、車内の5人で叫んだ。


「海だーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」

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