初日朝の部その①
目覚めは意外と明瞭だった。もっとドキドキして寝られないのではないかと危惧していたが、案外とすんなり寝れたしすんなりと起きることができた。時刻は朝5時。もう既に外は若干明るかった。
「あー友一おはよう」
そう言いつつ乃愛はぐうううっと手を天に突き上げていた。2人して目を擦って、2人して布団から出て、2人して速攻で布団を畳んで仕舞い込んだ。ちゃぶ台を出してきつつ、朝飯である白ごはんと味噌汁を食べた。
「今日はやたらと豪勢だな」
と言っては見たもののご飯は数日前の余りで味噌汁に至ってはインスタントだった。
「つうかひどい時は朝飯ない時あるもんな」
「昼飯と一緒になってたりな」
「そうそう」
「節約とか言ってええ風に言っとるけど、完全にあれよな。健康に悪いよな」
そう言いつつ2人の箸は止まらなかった。どうやらお腹が空いていたようだ。結構楽しみな旅行の前だというのに、案外胃腸も自律神経も正常に動いていた。
「これからは1日3食取らないとな」
「それに一汁三菜がええらしいで。ご飯以外に汁物とおかず3つ」
「んなに毎食毎食贅沢してたら我が家は破綻するな」
「ほんまそれ。間違いないわ」
そして俺は一足先に食べ終わった。シンクに持っていった茶碗お椀お箸を、丁寧にスポンジで洗った。これからこの家を開けるのだから、片付けもしっかりする必要があった。立つ鳥跡を濁さず、とは少し違うが。
「明日は旅館で朝飯食べよるんやんな?」
確認事項のように乃愛は尋ねてきた。俺は首を縦に振った。
「贅沢や言って食べれないかも……」
「あれ?友一弱気やな。寿司屋の時と大違いやん」
「あれは覚悟を決めた上だったからな」
そう言いつつ乃愛の分の食器も片付けた。それが終わった瞬間だった。今回の旅行を最初に計画した人にして、すぐに何かしらのしょうもない事件を起こす張本人、古森采花からの挨拶だなと一瞬でわかった。そしてそのままスマホに目をやると、通知にとんでも無いことが書いてあった。
「あんたら2人には、交通費なしでいいよ。お付きの人派遣しちゃうから、と」




