4月14日その①
「なあ、新倉、僕と一緒に昼ご飯を食べないか?」
次の日の昼休み、いつものようにぼっち飯を敢行しようとした俺に、遠坂は話しかけてきた。まあいいかと思いつつ、俺は首を縦に振った。そしてそのまま、高見の席に腰を下ろしていた。確かに彼女はバスケ部の昼練中だが、帰ってこないことを悟ったかのような立ち振る舞いだった。
「遠坂はいつも何処で昼飯食べてんだ?」
「生徒会室かな?」
「今は使えねえの?」
何の他愛もない話題で、何一つとして裏のない言葉だったのに、遠坂は少し沈んだ顔をしていた。
「今は立候補の受付場所になってるから」
「マジで?あっこでやってんのか」
「さっき行ってきた」
生徒会役員選挙の立候補、そういえば今日からだったな。結局、乃愛はどうするのだろうか。個人的には彼女の好きにすればいいとは思うが、更に個人的な話をすると彼女には生徒会を続けて欲しかった。
「何の役職で立候補したの?」
「副会長」
「あー前任の副会長引退するんだもんな」
「………」
不自然な間が空いた。あまり話題が膨らまなかったな。一緒に食うからには話さないとと思い、次は遠坂の出身地の話をしようと思っていたその時だった。
「何で知ってるんだ?そのことを」
「え?だって副会長は次3年生で、もう受験だから」
「別に3年生だからといって生徒会をやめるとは限らないだろ?その証拠に、去年の会長は3年でもやってた」
確かに、そういえばそうだった。乃愛から副会長の3年生は生徒会を引退して東京の難関私立を目指すと聞いていたから、つい先入観で話してしまった。
「確かにそれはそうだな」
素直な意見だった。自分の論理構成に欠如が見つかり、反省の弁を述べたのだった。しかしながら、遠坂は追及をやめなかった。
「会長から、そう聞いたのか?」
「まあ、そんなところ」
別に隠すつもりなどない、といって強がるのはキャラではないものの、俺はできるだけ興味なさげに答えた。
「最近、仲良さげだな、君ら」
「良いように扱われているだけだよ。俺は下僕、あいつは女王様」
「それが君らの関係なのか?」
「んなわけねえだろ?ドン引きすんな」
少しだけリアルにのけぞった遠坂を見て、俺はカムカムと手を動かした。
「んじゃ、会長とはどんな関係なの?」
遠坂は顔に1ミリも汗をかかずに、そんな複雑なことを真昼間から尋ね始めた。正直億劫だったのは内緒だ。




