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4月3日その②

「同じクラスってことはさ、教科書共有できねーよな」

「ああああ、そっか!やばい、1年の時から使ってる教科書(もの)、私の手元にない!」

「それも買わないとだなあ」


 俺は一つため息をついた。


「ってか、こうならないように俺は文系、乃愛(のあ)は理系に進路選択したってのに、なんで同じクラスになってんだよ!!文理は分けるっつう話だったのに」


 乃愛は机に顎を乗せつつ答えた。


「まあ、全校生徒の文理の比率1:1とか不可能に近いから2つとも混ざったクラスが出るだろうなとは思っとったけど……それ引くかね。そして2人とも入るんかねそこに」

「ほんとそれ」


 俺は水をもう一杯飲もうとしたが自重した。やけ酒ならぬやけ水をしたい気分だったが、ぐっと堪えることにした。


「教科書リストは水曜日にもらえるんだっけ」


 乃愛はこくんと首を縦に振った。今日は月曜日だから、2日後になる。


「まあ、諦めて2人分買おうぜ」

「それしかないかー去年は完全シェアできとったのに……」


 乃愛はため息をつきつつ机を頬擦りしていた。確かに去年は、お互い全く授業が被っておらず、教科書を2人で使うことができた。なんなら授業時間の合間に教科書を渡しに行くことすら、殆ど無かったと思う。これにより、1人分の教科書代に節約するという新倉(にいくら)メソッドが完成したのだが、一瞬で瓦解してしまった。


「足りないのはなんだっけ?」

「1年から使っとうやつ?」

「うん」

「えーと、現代文と古文、あと数学2は事前にもらっとう。後は青チャートとネクステと……」

「その辺の問題集とか資料集はいいよ。乃愛が使いなよ」


 彼女は成績優秀だから、そういうの使ってもっと勉強してくれよ。なんて、言うはずもないが。


「まあ授業で使う感じないし、それもそうか。今言った3つは今度教科書を()うとくとして、残りは……」

「まあ貯めたバイト代下ろしたらなんとかなるだろ」


 うん、4月は何かと出費が多いから、春休み頑張って貯めたのだ。少し多めに貯金しておいて良かった。


「それ以上に、さ。どうする?俺ら」

「ん?何々?」

「ほら、同じクラスになったら色々大変だろ。周りの目とか。いつも以上に行動気をつけないと、すぐにバレちまうぞ」


 と、ここで俺に激震が走った。


「ち、ちょっと待て。同じクラスってことは同じおかずの弁当入れてたらバレるよな!?」


 は!!!乃愛は頭を抱えた。


「完全に見過ごしとった!!どないしよう……」

「おかず2種類作る?」

「手間暇かかるからパス」


 しかしここで抱えていた頭を解放した。乃愛、何か思いついたようだ。


「どっちかがぼっちで飯食べたらいいじゃん!私しよるよ?」

「いやいやいや、生徒会長がぼっち飯とか目立つこと請け合いだぞ。それなら俺がやる」

「……まあ、設定キャラ的にはあっとうけど……」

「だろ?」

「流石に辛ない?」


 そう言われて俺は、少し間を空けてから答えた。


「いいってもんよ。ほら、俺はぼっちの帰宅部、お前は人気者の生徒会長。そいういロールプレイでしょ?」

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