8月18日その⑥
その日家に帰ってきてスマホを見た時に、とある通知が入っていた。差出人は近藤からだった。
「そういや全然決めてなかったけど、明日何時にどこ集合にするー?服も見たいから個人的にはなにわまで出ちゃいたいかな??」
最初この通知を見た時に、何の話だろうと思ってしまった。もしかして誰かに送信し間違えているのではないかとすら思った。程なくして、そう言えば一緒にお出かけをする約束をしていた記憶を想起した。完全に忘れていた。本当に申し訳ないくらい忘れていた。
既に乃愛はお風呂に入っていたにも関わらず、不必要にあたりを見回してしまった。彼女に見つかったらまた変な煽られ方をしてしまう。やっぱり近藤ちゃんに気があったんだあなんて面倒くさい小学生のように煽り文句なんて聞きたくなかったのだ。
部屋内に誰もいないことを確認しつつ、俺は返信した。
「別にいいけど、18時からバイトだからなにわ市なら結構早めに出なきゃいけないかもー」
記憶から消していた件についてはスルーだ。報告しても何の益にもならないことは自明だったからだ。流行りのスタンプも知らない俺のLINEは、さながら業務連絡のようだった。
野菜チャンプルを口にしていたら再度ブーっとなった。通知主はもちろん近藤だ。
「あーそっか!帰りやすさだったら……槻山のイオンのほうがいいかな?」
お、中々地味なところに目をつけてきた。槻山のイオンは所謂駅前の商業地域からは大きく離れた国道634号線沿いに存在している。正直言って地味だしあまり他の市の人間とは行く機会もない。
「いいけど……駅から遠くね?」
次の返信も早く返ってきた。流石は花の女子高生である。
「や、自分の家からは近いから平気平気!!」
あっそうなのか。ならば好都合だ。自転車で目的地まで向かえば、そのままバイト先へ直行できるし。
「ならいいよー!開店は10時だっけ?」
「そうそうー!」
「ならその時間に集合にしよっか?」
折角行き先は向こうが決めてくれたのだから、時間くらいはこちらで指定しよう。
「いいよー!」
という返信とともに、近藤は少し気持ち悪いゆるキャラが親指を立てているスタンプを貼りつけられていた。これが女子高生のLINEか。すごいな。
「それじゃあ、おやすみ」
と送った瞬間に、乃愛がシャワーから上がってきたのだった。また何か変態行為をしている人はいないか、少し確認したくなったが、それよりも疲れが優ったので大人しくそのシャワーで汗を流すことにしたのだった。




