8月18日その①
「おはようございまーす」
眠たい目を擦りながら、辿り着いたのは鷹翅。養護施設は今日も、子供達が遊んでいた。夏休みだからか、いつもより人数が多く感じた。多くの人が奇妙な目でこちらを見てきていた。
「おにーちゃん何しに来たの?」
近くで遊んでいた女の子が話しかけてきた。ドッチボールを持っていた。懐かしい。
「樫田さん、いるかな?」
俺は背を屈んで受け答えをした。子供には子供の目線で話すのがいいらしい。心理的にも、物理的にも。しかしその子は少し怯えながら首を振った。
「あれ?いないの?」
「なんか、怖そうな人と一緒にどっかいっちゃった」
そうなのか。せっかく貸し出していた乃愛の両親の形見?的なあの写真を返そうと自転車を漕いできたというのに、とんだ空振りだ。しかし、怖そうな人とは誰だろうか?鷹翅の人間が視察にでもきたのだろうか。
「わかった、ありがとうね」
俺はそう言って感謝の意を示しつつ立ち上がった。まあ子供に聞かなくても、施設のカレンダーを見れば勤怠表はわかるのだから。豆な人ならどこに居るとか書いてくれているだろう。
その日は随分と暑くって、昨日までと変わらず暑くって、やになるくらい暑かった。俺は養護施設からの眺めを見つつ、昨日の大変カオスフルな1日を思い出した。多くの情報が1日にぎゅっと詰まりすぎていて、到底処理しきれるものではなかった。
結局帰りは遠坂家のワゴン車で帰ることとなった。夜に出て夜中に家に着いた時、既に2人とも疲れ切っていた。本当はバイトの時間まで寝続けたかったのだが、写真の件を思い出し再びここにきたのだ。
もしも俺に会えて実家を一つ指定しろと言われたのなら、この施設を指差すだろう。幼少期を育った素晴らしい養護施設だ。いや、もしも世間から質問を受けたのなら、俺はこう答えなければならない。いいところに住んでいます。快適です、と。本当は住んでいないと言うのに。
歪だか、それを受け入れた過去の自分がいて、いまだに受け入れている昔の自分がいる。パラドックスにならないの?そう尋ねる悪魔面の俺に対し、全俺が唾をぶっかけた。こんなもんだよ、俺の人生は。
じじいみたいなことを思いつつ、屋内に入り予定表を見た。子供の名前よりスタッフの方が名前のわかるようになった俺は既に引退したOBみたいだ。その勤怠表には、こう書いてあった。
「保護者様との最終面談、10時半まで。京華ちゃん」
それを見て俺はわかった。あっ、京華ちゃんが相手型に対し養子に迎え入れてもられるよう調整してるんだなと。それは、遅れても仕方がないと俺は思った。




