8月9日その④
大量に並んだダイニングテーブルを見て、流石に俺は自分の単純さに頭を抱えてしまった。完全に作り過ぎである。ちょっとしょぼくれたホテルの朝バイキングが、多分こんなくらいだと思う。そう旅行慣れしているようなことを思ったが、実際ホテルなど泊まったことはない。
作ったものを以下に列挙しておこう。
ソーセージ
先述の卵の炒め物
白身魚のアヒージョ
ペンネをトマトソースで和えたもの
明太子入りポテトサラダ
普通のグリーンサラダ
コンソメ基調の野菜スープ
冷たいコーンスープ
お椀に入った小うどん
赤味噌の味噌汁
缶詰を開けて作ったお手製フルーツポンチ
ミキサーで作ったスムージーを、グリーン系とベリー系とバナナ系の3種類
クロワッサン
ご飯
俺は我ながら自分をバカだと思った。後で近藤には謝ることにしようと思った。冷蔵庫の食材を結構使ってしまい、返済すら考えた。
そろっと逃げてしまおう。もう眠気マックスな俺は、そのまま布団の部屋に向かおうとした。その瞬間に、すごい音を立てて野球部組が階段をドタドタと降りてきた。
「まじかもうこの時間??」
「おいしのちゃん!なんで起こしてくれなかったんすかー」
「文句はいいから、河川敷にゴーしろ」
「あ、新倉君朝ごはん作ったの?」
この言葉を皮切りに、俺の朝飯はどんどんと減っていった。
「これうめえっす!このオムレツうめえっす」
「ご飯お代わり!」
「そうだ篠塚、いっぱい食べろ!食べることでお前はそのヒョロイ身体を……」
「んん???どうしたのー??」
思い返したら高校生が何人もいるのだ。食べ盛りの若者が集まれば、減りが早くなる。俺は自分の作ったものが無条件に食われていくのを、ただただ黙って見ていたのだった。
「ということで、俺の得た教訓は『結局人に奉仕する方が心が安定するので、誕生日など祝わないで……』」
「アホみたいなこと教訓にすんな!」
自宅に戻り、お揃いのストラップを買ってきた乃愛は、そう突っ込んでは頭を掻いていたのだった。




