7月23日その②
事の顛末としてはこうである。
その日は午後の5時に一度休憩に入ったのだが、そこで店長から悲鳴のような呻き声が漏れてきていた。
「2日目ですか?」
「俺は男だぞ?」
「や、お酒の……」
「あーそっちか!クソみたいな下ネタを言ってしまった。ハシラはまだ来てないな?」
「来てないです」
実はその下ネタの意味がよくわかっていなかったのだが、スルーすることにした。
「来てたらセクハラで訴えられていたな……まあいい。ちょっと問題があってな」
「どうしたんですか?」
「この後午後7時から近くの少年サッカーチームがここを打ち上げて使いたいって言い始めてな。まあ勿論対応するのだが……」
「やーまあ入りますけど……」
この店舗は50人以上収容可能だ。しかし、むしろ貸切の方が楽なのかもしれない。小学生の対応と、お母様方コーチ達の対応と、一般のお客さんの対応。聞いているだけでめまいがしてきそうだ。
「ハシラとお前と俺じゃ、対応しきれんよなあ」
「柱本先輩はレジつきっきりで、洗い場死んじゃいそうですね」
「他の奴らは忙しいらしいし……樫田もどうしても9時からしかダメらしい」
「そうですか……」
「洗い場だけでもやってくれる人いないか?そうだ!新倉の周りに暇な高校生とかいないか?もうそんなレベルでいいんだ。皿洗って食洗機にかけてくれたら、それだけでいいから……」
「そんな急に連絡取れるやつなんていないですよーしかもこの辺に住んでるの前提ですよねー?」
「まあそうだな……」
はあと漏れるため息。俺は飯を食おうと下に降りようとしたその時、乃愛から電話が来た。
「なあ友一?あんた洗濯物干し忘れとったで」
今日の洗濯当番は俺だった。日替わり制である。
「あれ?マジで?」
「正確には丸まった靴下が一つ」
「あー取り忘れてたんだな」
「さっき気づいて干しといたったから、感謝しーや」
「おーありがと……」
「彼女?」
電話中なのに店長はふらっと話しかけてきた。
「クラスメイトっすよ」
「ほーん、なんの電話だった?」
ここで俺はうっと詰まってしまった。正直に、洗濯物を忘れていたなんて言えるわけもない。
「と、とりとめのない話ですよ」
「お、なんか隠している顔だなあ??」
無論店長にも、同居人がいることを伝えていない。
「そんなこと……あ、じゃあの……古村さん!バイト来ない??」
適当に場をごまかすための言葉だった。よしこれで、会話を終わらせて下に降りてしまおうと、そう思っていた。俺のスマホに耳をそばだてる店長なんて知りもせず、彼女は言った。
「ん?友一のバイト先?別にいいけど……」




