7月13日その③
風呂から上がってきて、タオルで頭をくしゃくしゃと吹いていた。遠くで2台の自転車が遠くへ走り去っていくのを、影だけで察した。隣に住んでいる老丹さんは、周りをキョロキョロしながらシャワー室へ向かっていった。残念ながらそこに入っていたのは俺だよ、何てそんなことはわかった上で向かっていったんだろうけども。
「お風呂上がりましたー」
ガチャリとドアを開けると、まだ乃愛は部屋を片している途中だった。コップが3つ並んでいた。だいぶに早く帰ってきていたはずなのに、乃愛はまだ学校にいる時と同じ服を着ていた。
「……そんな綺麗にしようとしないでいいんだぞ?別に俺、潔癖症でも何でもないんだから」
「や、ちゃうねんそういうことやないねん。ほら、あんたおらんのええことに派手に汚してもうたから、流石に直さんとなあって思って……」
そう言いつつ乃愛はコップをシンクにぶち込んでいた。そして冷蔵庫をばあん!!と開けて、ラップされた今日の晩御飯を温め始めた。
「お、今日は炒飯?」
「せやでー!好きやろー?」
「おう好きだぞ。あの味付けがさっぱりしたほとんど味のしない炒飯が」
「……何回も言ってきたけど、そんな炒飯ないからな!!」
電子レンジが仕事をしている間に、俺は尋ねることにした。
「で、俺がいない間に、一体誰がこの家に来たんだ!?」
へあ!!?!?って顔をしてこちらを見る乃愛に、俺は呆れてしまった。どうやらまだバレていないと思ったみたいだ。
「え?そ、そんなこと、してないよ?」
「3つ汚れたコップは?」
「み、水の飲み比べしてたの!!」
「何だその貧乏人がやる高貴な遊びは。それじゃあ久し振りに出されて奥に置いてある2枚の座布団は?」
「そ、それは……1人枕投げしてたの!!修学旅行の予行演習で!!」
「何だその世界一いらない演習科目は!?良いんだって、そんな無理しないで」
俺は電子レンジから炒飯を取り出して卓袱台に置いた。
「自転車のステッカー。藤ヶ丘には名前を書く欄があって、それ書かなきゃ駐輪場の使用許可が降りなかったよな?」
乃愛は自然な流れで対面に正座して、少ししゅんとし始めた。
「そういうことだ。ここに近藤憐と、阿倍中高の誰かさんが来たことは知ってる。ここからが本題だ。何をしてたんだ??」
ここから長い長い話し合いになったのは、想像に難くないだろう。




