表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/365

7月13日その②

 部屋に入ろうと思って階段を登り始めた俺に対して、ドアノブを手にする前から乃愛が顔を出してきた。やたらと焦っている表情で、額にはうっすら汗があったのだが、それはこの季節の気温のせいかもしれない。とにかくいつになく真剣な表情でこちらを見てきていた。その割に服はルーズなジャージだった。


「あーただいまー!どうしたのお迎えなんて……」

「友一!シャワー浴びたない??」


 突然の申し立てに、俺は少し仰け反ってしまった。まだ階段を登りきってすぐだったから、もう少し後ろに下がったら転げ落ちてしまうところだった。


「お風呂にする?シャワーにする?それとも……bathroom!?」

「全部同じじゃねーか!!いや確かに汗かいててシャワー浴びたい気分だけど、お腹もすい……」

「それじゃあシャワー浴びてき!!めちゃくちゃスッキリして気持ちいいと思うで!!ほら、あんた今日球技大会しとったやん!!いや私もやけど。でもめっちゃ洗い流せていい感じになると思うで」


 どうやら彼女は、どうしても俺をシャワーへと行かせたいようだ。俺は無粋であることを理解しつつ、形式的にこう提案した。


「おっけーわかった。んじゃあとりあえずカバンを置かせてくれ。そして……」

「や、それ持って入っとくわ!!いつもんとこに置いてたらええんやんな??」


 そう言って乃愛は半ばぶんどるように俺の鞄を奪っていった。いつものところというか、そんなに置き場を決めているんけではないのだが……


「マジでサンキュー!んじゃ、着替え持ってシャワー行くとする……」

「着替え持ってきとうから、ほら入りに行き!!こんな感じでええ??」


 そう言って乃愛は俺に服を押し付けてきた。よく着用している黒色のadidasのズボンと、その辺の古着屋で買ったダボダボの青いTシャツ、それに黒色に赤色のラインが入ったボクサーパンツに、児童施設の不用品を回収して手に入れたポムポムプリンの黄色いバスタオル。いつも俺がお風呂に行く際持って行っているものだ。


「なんで今日こんなに準備がいいんだよ」

「そりゃ、いい事あったからやって。ほら、球技大会うまいこといったやん?」

「いやそうだけど……んじゃ水飲んだらシャワー浴びに……」


 バタン!!!とドアが閉まったかと思ったら、すぐにガン!!っと開いた。乃愛が、コップの中に並々と水を入れてきていた。


「ほら、持ってきとるから飲み飲み!!」

「いや流石に準備し過ぎじゃ……」


 そう言いつつ一度水を飲んで、そのコップを渡し、俺はシャワーを浴びることにした。結局俺は、バイト帰りに一度も部屋へと帰還しなかったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ