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核心③

「そろそろ私は聞かなくていいわよね?勉強教えてよ」


 突然真琴はそう言って、教科書を取り出していた。


「真琴ちゃんは聞いたことあるの?」

「ここから先は、ね」


 簡単そうな問題だなと心の中で思いつつ、私は続けた。


「最初にそれを知らされたのは、中学3年生の冬だった。私は目の前に差し出された大金を見つつ、今まで私が語って来たことを全て告げられたわ。私はそのお金を受け取らず、公立中学への編入と前述のお金だけ用意してもらって家を出た。出て行かなければ、連れて行かれる可能性があったからね」

「え?じゃあ今でも?」

「いつ誘拐されてもおかしくないわね。ただ、幸運だったこともいくつかある。1つはTwitterとかSNSが広まって、昔ほど手荒なことが出来なくなったこと。例えば学校から帰宅する時に無理やり車へ連れ込もうとしたら、即Twitterに動画上がるでしょ?」


 これにはちかちゃんもしっかり頷いていた。


「それに加えて次男坊のわがままだから、鷹翅本体が動いていないというのもある。本気で人を攫おうとしたら、証拠も何もなく綺麗に行うことなんて容易だけど、そこまでの労力を割くことは許可されていないらしくてね。代わりにあれらしいよ。私が言われたこと、週刊誌とかネットで書き込んだら即処理されるらしい」

「すごい世界ね……あんたがこんなところで生活していなかったら、空想少女(デイドリーマー)としか思えない話の連続だよ」


 真琴も簡単な計算問題で頭を悩ませつつ、首を振っていた。


「そういう訳で、私は家を出た。両親からの援助は期待できないし、それ以上にイラついて出されたお金はたき返して家を出ちゃって、戻れなくなったんだよね。それで年末の街を、死んだように闊歩してた。それで……ここから見えるかなあ」


 私はカーテンを開けて、少し先の方にある公園を指差した。もう夜だというのに外は明るかった。本格的に、夏が始まってきたのだろう。


「あっこ!あっこだよ。あの公園の砂場に、変なオブジェクト置いてるでしょ?」

「あーあの亀みたいなやつ?」

「そうそう!中に空洞あるじゃん?」

「あるね。ちょっとひんやりしてる……もしかして」

「そう、あそこにいたんだよ。真冬の真っ只中にね。そして、あそこにある公衆トイレに行った帰り道に、友一と出会ったんだ。

「えっ?でもさ……」


 ちかちゃんは言いかけて言い淀んでしまった。それを察して、私は口に出した。


「なんで私を受け入れてくれたかは、私にだってわからないよ」

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