核心②
少しシーンとなってしまって、私は動揺してしまった。いやここからが、本番なのだが。
「え?じゃあ誰がなったの?」
ちかちゃんは純粋な目をしながら尋ねてきた。
「現当主の息子と古森家の令嬢の間の子供」
「え?なにそれ近親相姦じゃん」
「もしかして、話の途中で出てきた、クソみたいな当主の次男坊?」
「そう、あの時に手を出した男の子が生まれちゃって、どうしようって話になってたのよ。因みに古森家の令嬢はその子供を隠れて産んで、すぐに亡くなっちゃった。当時15歳には心身ともに負荷がかかっちゃったみたい」
「なにそれ。しかも古村家関係ない……」
「でも、鷹翅の血は流れてるでしょ?」
そう言っても、ちかちゃんは納得していない顔をしていた。まあそりゃそうだろう。
「まあ本家でも議論を呼んだみたいよ。私の両親は絶対反対だったけど、本家の中には孤児院出身より現当主の孫の方がありがたいって声も多く上がってね。そしてそれ以上に、とある無茶苦茶なことを言い出した男が居てね」
「次男坊?」
「まさか、自分の息子をごり押したの?」
私は首をふるふると振った後で、心底呆れた口調でこう言った。
「古村家の娘を、側に置きたいって思ったらしくてね」
「え?それって……」
「それでも、次期当主に手を出すほど彼は愚行を繰り返すことはなかった。だから考えたのよ。古村家の娘は孤児院出身で、まだ次期当主か確定していない。ならば、そのレールを外して仕舞えば、自分の愛人にすることだってできるんじゃないか?って」
は?と思われるかもしれない。その気持ちは重々わかる。しかしこんな、訳のわからない要求をする人間がこの世にはいるのだ。
「そして現当主の父が、孫の願いを聞き入れて圧力をかけた。それがこの結果よ。当時3〜4歳の子供が古村家の跡取りに決まり、私はあいつの元で愛人になる予定だった。鷹翅本家で、部屋も与えられて、ある程度の贅沢なら許される、結構な立場ね。あの気持ち悪い男の相手をしなきゃいけないのが最高に嫌だけど」
「え?じゃあ乃愛がここにいるのって、逃げてきたから?」
ちかちゃんの質問に、私はしっかり頷いた。
「そうよ。私はその打診をもらった瞬間に、家を出たの。家出少女なのよ?私。そして流れ着いたのが……この家だったのよ」




