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昔の話②-2

 たとえいじめがなくなったからって、私がグループに入れるわけではなかった。というかむしろ、今まで以上に遠巻きになりながら生きていくことになった。手を出してはいけないあのお方といえば、ヴォルデモートっぽくてかっこいいだろうか。そんな冗談がかき消されるほど、私は1人で過ごしていた。


 別にどうでもよかった。いじめられなければ、干渉されなければなんとでもなれと思っていた。元々この出自のせいで友達というより取り巻きのような女の子ばかりだったのだから、それが離れたところでノーダメージだ。当時私はそう思っていた。でもそれは、また別の問題を生み出してしまった。


 簡単な話だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それこそまるで、本物のお嬢様のように。


 自意識は行動に表れる。いじめられて2日後、たまたま給食当番が一緒になった友一が話しかけてきた。


「い、いじめられてない?大丈夫?」


 恐る恐る尋ねてきた記憶があった。私は鼻で笑って答えた。


「あんなのいじめでもなんでもないわ。お父様とお母様が出てきて万事解決よ」

「でも、ひとりぼっちで可哀想……の」

「の?」

「……古村さん、自分と違って何もしていないのに」


 友一はこう言っていたが、無論彼もクラスに対して何もしていなかった。しかしクラスではこんな風に言われてしまったのだ。


「あんた、貧乏人だの臭いだの菌がうつるだの、ひどい言われようね」


 小学生らしい攻撃だ。今ではそう思えるが、当時の彼ら彼女らからしたら死活問題なのだ。


「まあそんなの、言ってるあいつらの方が嫌な菌持ってるって私は思うけどね。悪口菌?絶対に感染したくないって」

「……自分の話は、大丈夫。それより、古村さんの方が心配だよ」


 普通誰かに心配だと言われたら、嬉しいとか申し訳ないとか思うのが一般的であろうと認識している。しかしその時の私は、イラついてしまったのだ。


「な、何か心配なことがあったら言ってね!頼りない自分だけど、きっと君の役に立つよう頑張るから……」


 なんでイラついてしまったのか、今となっては手に取るほどわかる。当時はそれが何かすら分からずそれにもイラついていたのだが、大人に片足突っ込んだ今ならわかる。


「……あんたに助けてもらうこととか、ないし」


 私はその時、既に友一のことを()()()()()だと思ってしまっていたのである。その勘違いが、今後も継続していくことになるのだ。


 だってそりゃそうでしょう?女王様の身を案じて進言する奴隷なんて、身分不相応にも程があるでしょ?そういうことだ。だからイラついたのだ。


 私の認知が、振る舞いが、徐々に歪み始めていたのだった。

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