昔の話②-1
新しいクラスになって、私は真琴や友一と同じになった。そのクラスはまあ、有り体に言えば外れのクラスだった。5年生になって転入してきたガキ大将の影響もあったかもしれないが、クラスはまともに授業を受けられない状態に陥ってしまった。所謂学級崩壊だ。
授業中にぺちゃくちゃ喋るなんて日常茶飯事だった。いきなり起立して、教室で野球を始めたこともあった。お菓子をぽりぽり食べ始める女子生徒の集団もいた。そんなクラスの雰囲気を、先生は何1つとして制限できなかったのである。
これでまだ、生徒間仲が良いのなら僅かな救いがあったが、残念なことにクラスの内部でも派閥だのなんだので忙しくなっていった。そんな中で、私も爪弾きにされてしまった。1つに、私は中学受験を控えており、この辺りで学力No. 1の女子校を志願していたため、塾通いが増え授業も真面目に勉強していたからだと思う。面白くないと思われたのだろう。他に理由があるとしたら、お金持ちを僻まれたのだろう。多分。
しかし私を標的としたいじめは一瞬で鎮火した。一度明らかにわざとチョークの粉を吹きかけられたのだ。黒板消しを目の前で叩かれ、お気に入りの紺のワンピースが真っ白に雪化粧してしまった。
「あらーごめんねー。でも似合ってるわよ?」
そしてそのまま抵抗せずに、チョークの粉を被り続けた。ギロッと睨むことなく、服が真っ白になるまでかぶった。そして、そのまま教室を出たのだ。
去年までの同じクラスの子達が呼び止めるのをかわし、下駄箱で不思議そうな視線を送る友一君にも見向きせず、校門まで来た。そしてお待ちの運転手の前で、私はあたかもこれまで我慢して来た感情を爆発させたかのように泣き始めたのだ。
「な、何があったんですか!?!?お嬢様!?」
「……クラスの子達に……いじめられた」
勿論、嘘泣きだった。しかし嘘は言っていない。そしてここからの対応が異常に早かった。数分待てば学校に抗議の連絡が入り、30分と待たずに向こうの親が呼び出され、1時間も待たずに謝罪が始まった。あの時のいじめてた側の親の形相をいまだに覚えている。それはまるで、女王様に対して命乞いをしているような、そんな悲愴感漂う顔をしていた。
思えばこの時から、少しだけ調子に乗り始めたのだろう。クラスで大声を出し喚き、強い言葉を使って人を傷つけ、平気で周りの人間を痛めつける彼らさえ、私には逆らえないのだ。それは中々に痛快だった。そしてその感覚が、私の黒歴史の始まりだったことは、言うまでもないだろう。




