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昔の話①-5

 子供にとってクリスマスは、大人のそれよりも特別だ。この1年間良い子にしていたご褒美として、サンタさんから何か1つ特別なプレゼントをもらうことができる。それは子供に対する褒賞だけでなく、自分は知らない誰かにも愛されているのだという自覚を植え付ける行事でもあった。幼少期くらい、誰かに愛された経験がないと、誰かを愛することなんてできやしない。誰が言ったか忘れたこの言葉は正論だと、今の私も思っていた。


 この頃になると私は友一に話しかけなくなっていた。これは新原真琴が怖いからではなく、信頼していたお母さんからそう言われたからだ。当時の私は高貴で雅な振る舞いをする母親が憧れだった。いつかはこんな大人になりたいと、そう思っていたのだ。だから彼女の言いつけは、しっかりと守っていた。


 世界が違うと言われて初めて鷹翅を訪れた時、カレンダーは12月中頃になり、街はイルミネーションで満たされ始めていた。過度な装飾が好きになれないという感性は、旧家ならではのものだろうか。しかし養護施設には、子供が作った簡単な飾りがあるだけで、街の喧騒とはかけ離れたものだった。


 相変わらず大人達はつまらない話に終始していた。つまんないなあと思っていたら、児童達もお昼寝の時間となっていたみたいだった。小さな子供達を寝かしつける中高生に混じって、小学4年生の2人も混じっていた。そおっと部屋を出た大人な子供は、中高生は児童施設から何処かへ遊びに行ってしまった。


 残された2人は、ぼーっとしていた。おそらく外に出て遊ぶなと言われているのだろう。行くなら施設外がお昼寝ルーム、それに併設している休憩部屋の三択なのだろう。ガラス張りのせいでどこにいるか丸分かりだった。


 2人にサンタさんは来るのだろうか。もうその頃には私は、サンタさんの正体を掴んでいた。だからこそ思ってしまったのだ。あの子達は、サンタさんが来たことあるのだろうかって。


 帰り道、お父さんに聞いてみた。


「ねえねえお父さん」

「ん?」

「サンタさんってさ、良い子にしていると来てくれるんだよね?」

「もちろんだよ!サンタさんは子供達の1年間をしっかり見ているんだ!そして良い子にしていた子供達の元に訪れるんだよ!」

「ってことは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってこと?」


 お父さんは少しだけ言い澱み、メガネを少しだけ持ち上げた。


「そうだね、でも……サンタさんの来なかった子供達は、可哀想だろうね」


 そしてそうやって逃げるのが精一杯だった。

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