閑話休題①
「乃愛、本当に申し訳ないこと言っていい?」
「ん?」
「話にリアリティがないんだけど」
そのちかちゃんの正直な告白に、思わず私は噴き出してしまった。その姿を見て、ちかちゃんは少し動揺して居る様子だった。
「いや、ごめんごめん。そうだよね。いきなりご令嬢でしたー!なんて言われても信じられないよね」
「それに、乃愛の性格も全然違うし……嘘ついてないよね?」
ちかちゃんは少し目を細めていた。
「え?嘘とは……?」
「本当は2人付き合ってて、騙しにかかって居る、とか?」
「そんなことしないよー!本当に付き合ってないし、本当に一緒に住んでるし、今の話も本当の話よ」
そう言われてもちかちゃんはあまり信用できていない様子だった。
「仕方ないなあ。ちょっと証人呼び出すか」
そして私はスマホを取り出した。そしてラインを開いて電話をかけ始めた。
「もしかしたらバイトに行ってるかもだけど、そうじゃなくてもこないかもだけどね」
「へ?誰呼び出して……もしかして新倉く……」
「あん?なんのよう?」
電話口に出て来たのは女の子だった。
「あー真琴ちゃん。今暇?」
「テスト勉強しないでいいんなら暇ね」
「あら、まだ勉強してるの?」
「こっちは少しずれてんのよそっちのテスト期間と!!で、話は何?」
「今私の学校の友人と昔の話ししてるんだけど、信憑性がないって言われちゃって……証言してくれない?」
「はあ!?!?」
「ほら、勉強教えてあげるから…次のテストは教科何?教科書持って家来てよ」
「あんたの家!?……もしかして……」
「友一の家にきて!」
ぷーっぷーっ
電話は切られたが、後からりょという連絡が入った。
「そういう訳で真琴ちゃんがきてくれるから、彼女の話も加えたら少しは信憑性増すんじゃない??」
「え?真琴ちゃんってもしかして……」
「塚原真琴ちゃん、今はそういう名前で生活してる子だよ。でも小学校の頃は新原真琴って名乗ってた」
「やっぱり!ってことはその子って、めちゃくちゃ昔から友一くんのこと知ってるんじゃない!?」
「うん、3歳くらいから知り合いなんじゃない?」
そっかあ……というなんとも言えない表情で少し顔を伏せるちかちゃんに向けて、乃愛はちろっと呟いた。
「もしかして、少しだけ心配してる?」
「!?!?!?」
「まああの子結構可愛いからなあ。そうなんだよー?友一って、あんなモテなさそうな顔してるのに可愛い幼馴染がいるだよー?」
「……あんたは、心配じゃないの?」
私は少しだけ虚ろな目をしながら舌を出した。
「私は、ね。なまじ今の彼を知ってるから、そんな次元じゃないってわかってるからね」
その微笑みは声に出ていないにもかかわらず空虚に響いたのだった。




