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6月21日その②

「友一ってさ、めっちゃクラスに馴染んできとるやんね?」


 その日の放課後、夜9時半の我が家では、いつも通りの夕食の会話にこの日の昼休みの出来事が入り込んできていた。


「そうか?」

「いや前も思ったんやけどな。一昨日の昼休みやっけ?昔は誰1人として話しかけて来んかったけど、今は誰かしらが声かけて来るようなっとるやん」

「まあ主に古森(ふるもり)新河(しんかい)か現田か……その辺だろ?」

「十分やろ。友一はもうちょっと、向こうから話しかけてきてくれる人の存在がどれだけ大きいものなのか熟考すべきやと思っとる。相当恵まれとるんやで?」


 乃愛(のあ)はそう言いつつ生徒会で使う書類に目を通していた。タンクトップやノースリーブの服が増えてきたのは、季節が進んでいる証拠だろう。この日も青地に黄色いボーダーのノースリーブで、脇が丸見えだった。


「で?結論は何だ?」

「オチをはよう求めるのはようないで。お笑いというのはのんびり楽しむもんやねんから」

「これはお笑いではないコミュニケーションだ。コミュニケーションなら先に結論から入るのが親切というものだろう?」

「……ほんま、ロマンないわ」


 視線をこちらに向けた乃愛は、急にこんなことを言い始めた。


「結論はこう!で、どの女の子狙っとるん?」


 そして唐突な質問に、俺は啜っていたカレーうどんを喉に詰まらせてしまいそうになった。気管支に少しカレーが流れ込み、死ぬほど咳き込んでしまった。熱い!身体が、熱い!!!俺は無言のまま助けを求めた。


「あれー?何動揺しとるんかなー?もしかしてもう意中の女の子が……」

「ゲホ!!!!ゲホ!!!!!ゲホ!!!!!」

「ちょ、ちょ、ちょっと友一大丈夫!?咳の仕方めっちゃやばなっとるやん!」


 さすがに飄々としていた乃愛もビビったらしく、こちらに近づいてきて背中をさすってくれていた。別に背中をさすっても苦しんでいるのは喉なのだから何一つとして関係ないのだが、少しだけ気が晴れたのだった。


「ほんと、お前がいきなり訳のわからんこと言うからだぞ」

「ごーめんごめんって!いやでもあれはそれくらい聞きたくなるほどの集まり方よ!?泊まりがけ旅行するってだけでめっちゃ人集まっとったやろ?」

「あれは乃愛と古森と沢木のお陰だろ?最後には最早古森と沢木主催になってたし」


 あの後謎の、一泊2日クラスみんなでお泊まり会とかいう訳のわからない提案がなされる程、あの話は飛躍したのである。これはひとえに陽キャな男女達によるものだった。俺はそんなもの別にいらないのだが。どうせ修学旅行に行くんだし。


「まあでもさ、もう2ヶ月以上経ったしさ」


 乃愛はさすっていた手を背中に置いたまま尋ねてきた。


「おらんの、そういう人?」

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