6月21日その①
高校生男女4人、一つ屋根の下、夏の盛り上がり
檸檬の弾ける季節、劣情と欲望の坩堝、突き刺さる日差しすら意に介さぬ桃源郷
登る大人の階段、シンデレラは王子様に手を引っ張られ、眩しき舞踏会へと赴いていく……
「許されるわけないよなあ!?!?こんなの!?!?」
「のどかちゃん何いきなりポエム読みだしてるの?」
「あんたらが浮かれてっからだ!!」
次の日の昼休み、4人で集まって飯を食べていたら、すごく凄んだ顔で竹川が駆け寄ってきてこう宣言してきた。
「竹川、今の詩もう一回言ってくれ」
「なんで!?」
「それメモして夏の作文課題に書いて提出する」
「ゆ……新倉君?あなたがそんな文章書いて提出したら先生飛び上がるよ」
そして乃愛は小声でこうささやいた。
「ロマンのかけらもないのに」
うるさいなあと思いつつ、表立って反論しないのは暗に自分でもそれを認めているからだ。
「で、竹川は何の用でここにきたんだ?」
遠坂は億劫なものを見るような目で竹川を見ていた。
「当然、あんたらのその不純異性行動を取り締まろうとしているのよ!風紀委員としてね」
「いつの間に風紀委員になったの?あんた」
「と!に!か!く!この私の目の黒いうちは……」
「そんなに言うなら、竹川も来るか?」
俺がそう言うとみんなが黙ったから、少し恥ずかしくなって続けて言った。
「いやまあ、まだどこに行くのかも決まってねえけど」
「へー、新倉君がそんなこと言うなんて意外だなあ」
真っ先にそう言ってにやにやしたのは乃愛だった。他の2人は意外そうな顔をしてこちらを見てきていた。そんなに意外だったか?別に普通の回答だと思ったけど。
「なになにー?なんの話ししてるのー?新倉と遠坂いるから小難しい話?」
「近藤が居るんだぞ。んなわけねえだろ」
「ちょ!遠坂何こっちに喧嘩売ってきてんの!」
「夏の予定を決めてるんだよ」
俺がそう言うと、古森は目を輝かせてテンションを上げて尋ねてきた。
「え???楽しそう!どこ行くの?いつ?」
そして彼女の声はよく通る。更に彼女はクラスの人気者だ。古森采花に連れられるように、俺らの周りには人が集まってきた。
「なになになんの話?」
「あー魅音ちゃん!この夏どっか遊びに行こうって」
「いいじゃん面白そう!」
「あ、しゅんペーもそう思う?」
「何の話っすかー?」
「あ、沢木!ちかちゃん休みってことはお前も休みだろ?」
「お、旅行っすか?いいっすねー」
「話か聞かせてもらった!僥倖僥倖」
「あ、巴南ちゃん!」
どんどんと机に人が溢れてきたので、一旦どこに行く話は置いておかれることになったのだった。全く、こう言うのをインフルエンサーと言うんだなと陰で納得していたのは内緒の話だ。




