6月19日その①
「プールの更衣室なんか盛り上がってんなと思ったら、んなことしてたのな」
俺は呆れつつ肉野菜炒めを頬張っていた。給料日直後だからか少しだけ飯が豪華だった。一時期の火の車は多少鎮火していたのだろう。
「え?男子の方まで声届いとった!?」
「歓声とかは届いてたけどなんて言ってるかまではわからんかった。まあ今野と沢木は耳そばだててたからあいつには聞こえてたかもな」
「そ……それはちょっと恥ずかしい…」
「いやその話聞いて、女子相手でもこいつ何やってんだって俺は思ったぞ。なんだよCRAZY FOR YOUの季節って。また適当なロックバンドの歌詞拝借したんだろ?」
「ええやんええやん茶目っ気やん」
「茶目っ気なあ」
俺はよく炒められ味のついたニラを頬張りつつご飯を口に運んだ。
「乃愛のそれってなんか定期的に発症するよな」
「病気みたいに言わんで!なんかほら、それっぽいこと言ってみたくならん??冗談の範囲で見栄張ってみたり、それっぽいこと言ってそれっぽく微笑んでみたり……」
「ならねえな」
俺は即答したが、目の前の少女は満足していない様子だった。
「で?結局思わせぶりな態度と発言をした古村さんの、本当の夏のご予定は?」
しかしこう聞かれると、徐々に視線を逸らしお水を飲んで答えた。
「秘密☆」
「なんもねえんだろ」
「ほら!そういうとこやで友一!やっぱりあんたにはロマンがないわ」
「まああると思ったことはないな。必要とも思ったことないし」
そして意に介せず飯を食べ続けていた。
「そういう友一の夏の予定は……」
「それより乃愛、今日のおかず味濃い」
「嘘やろ!?これで味濃いって、それもう味付けすんなレベルやで。ご飯のお供やねんからこれくらいの味付けやろ?」
「もっと薄味でもご飯のおかずになるぞ」
「それはあんただけや!だいたいこういう炒め料理はまとめてぱっぱとやるから味付け変えられんわ!わがままいうな!」
そう言われて俺はしょぼーんとしつつもやしを頬張った。うん、やっぱり味が濃い。それに、ご飯では打ち消せないほど口の中に脂が残ってしまっていた。一般人はこの味付けが普通なのだとしたら、俺はいつ一般人になれるのか不安になるほどだった。
「それより……」
「やっぱさ、こういう味付けに好みの分かれる料理は避けようよ」
珍しく2人の話し出すタイミングが被ってしまった。
「いやや、簡単やしコスパええし次の日の弁当にも最適やろ?」
「それは否めんが……」
「ってそんな話とちゃうねん!友一!」
ビクッとなった俺を尻目に、乃愛は少し目を見開きつつ尋ねてきた。
「友一の、夏のご予定はいかが?」




