CRAZY FOR YOUの季節
この夏、みんなは何して過ごすのだろう。そう思うだけで私の心はウキウキになる。
人の輝くところを見るのは好きだ。スポーツマンは大好きだ。音楽家は憧れだ。普通の女の子だったら気持ち悪いと言われるであろうカードゲームに興じる眼鏡男子でさえ、私は大好きだ。だって眩しいじゃないか。自分が何一つとして輝くことのできない人間だからこそ、他人の輝く姿が尊くて尊くて堪らないのだ。いつだって私は傍観者、いや観測者だ。キラキラと眩しいみんなを、余すとこなく記録しては離さない。脇役だって?気にしないさ。私にはそれが適任だから。
「つうわけで、乃愛ちゃんの予定教えて?」
私は乃愛ちゃんにそう尋ねたら乃愛ちゃんは困った顔をしていた。
「水泳部じゃないの?乃愛」
「んーでも今年も県大会止まりだったからなあ」
近くにいたちかちゃんの質問にも、乃愛ちゃんは飄々として答えていた。
「それじゃあ生徒会?」
「生徒会もそんなにないよ。まあ文化祭の準備はあるけど…」
采花ちゃんの疑問にも飄々と答えていた。
「ふっふーん!わかった!かいちょーは私達といっぱい遊んでくれるんだよね!」
「まあ、今度遊びに行こうね」
のどかちゃんにもどこか上の空で対応していた。私はちょっと探りを入れるようにこう尋ねてみた。
「男の子と遊んだり?」
「んー、ん?」
ええー!!!!という歓声が上がった。周りに囲んでいた女子達からの黄色い声だった。
「何何何??今の反応!?」
「誰?彼氏いたの?」
「どこの!?!?!?!?どこの!?!?!?!?どいつ!?!?!?!?」
1人だけ反応が違ったが、まあいい。それに対して乃愛ちゃんは、人差し指で口元を押さえてこう言った。
「秘密だよ。秘密」
「えええ教えてよ!!!教えてよ!!!」
采花ちゃんはなお食い付いていたが、他の子達は近くにいた人達と耳打ちしていた。誰だろうねー?他のクラス?他校?もしかして同じクラスじゃないよねー?そんなヒソヒソ声すらも、彼女は意に介していないようだった。言い出しっぺだが、私はぐっと黙ってしまった。
「まあ、ね。巴南ちゃん」
乃愛ちゃんは唇に人差し指を置いて、私にだけこう言った。
「CRAZY FOR YOUの季節だからね」
その意味を私はよくわからなかったが、その姿はまさにこの学校で1番輝いていると示さんがばかりの眩しさだった。




