6月3日その①
テスト週間が開けてすぐのことだった。昼間から俺は、少し離れたデパートの7階で焼肉を食べようとしていた。何?日頃の節制生活はどこに行ったのだ、だと?無論タダ飯である。奢ってくれる心優しい人はこの人だ。
「お前ら、わかってるな?私はまだ大学1年生だぞ?こんなとこ、2回と来たことないんだぞ?だから、わかってるな?」
「タン塩を希望する」
「お、新倉君渋いね!私はこの山形牛1頭かな?」
「ホルモンがいいな。あとお酒!生欲しい」
「樫田先輩高校生いる前でお酒頼まないでくださいよー。あ、私は五領先輩に全ノリで!山形牛食べたーい」
「空気読めっつってんだろ!!!」
柱本先輩の叫び声が響いた。しかしこれは自業自得である。彼女がそもそも埋め合わせで休日の昼間どこかご飯を食べに行こうと提案したのだから、我々はそれに乗っかっただけだ。まあ焼肉を選んだのは間違いなく樫田先輩だったが、そんなことは些事である。
「ほら、辻子君も頼むんだよー」
「え、ええ?良いんですか?自分まだ入ったばかりなのに」
「良いんだよ良いんだよ!むしろハシラはこの子に1番感謝しなきゃダメでしょ。働き始めたばっかなのにこいつのせいで慣れない仕事して店長に怒られてたんだから」
五領先輩にそう言われ、柱本先輩は深々と頭を下げていた。
「にしてもこの配置…」
「ん?どうしたんすか樫田先輩?」
「合コンみたいだな」
樫田さんが呟くようにそういった。合コンとやらに自分は出席したことはなかったが、向かい側に女子3人、こちら側に男子3人が座る形なのだろうか?とりあえず俺は通路側に1番近い席に座ったから、焼肉奉行たるものをすれば良いのかな?ダメだ、振る舞い方全然わかんねえ。焼肉に行き慣れていないの丸わかりだ。
「とりあえず店員さん呼びますね」
そう言って辻子さんは甲斐甲斐しく呼び鈴を押した。
「まあ先ずは山形牛1頭立てと、みんなの分ご飯頼もーよ」
「え?先ずはって何??ゴリョちゃん?それが限界というか、一頭の時点でもう予算オーバーというか」
「とりあえず生6でいいか?」
「樫田君!?!?わかってる!?高校生2人と私は完全に未成年なんですけど?」
「樫田せんぱーい、私、このフルーツミックスジュースってやつ飲みたいです!生中より高いの!」
「まこちゃん!あんたこんな時に高いの頼まないでよ!」
「ほうれん草のおひたし…」
「いやそれ、焼肉屋で食べる料理じゃないよね?っていうかメニューにあるの?……あるじゃん!新倉君よく見てるね…」
「すみませーん、ご注文を…」
店員さんが来たので1番近くの俺が言おうとしたら、すらすらとした口調で辻子さんが注文していた。
「タン塩一人前、ホルモン一人前、山形牛1頭立て、白ごはん、生中6本、フルーツミックスジュース、ほうれん草のおひたし、それと山形牛のロースを3人前お願いします」




