4月6日その①
その日は珍しく昼間に働かされていた。流石に徐々に春休みが終わっていっていたので、客足も疎らとなりつつあったのだ。これからはゴールデンウイークまでしばらく閑散期になる。
俺のバイト先はチェーンの飲食店である。ごはん亭というなんとも直球なブランドを展開しているのだが、この外食不振の中意外なことに業績は順調らしい。食材を仕入れ調理して品出しをし、お客さんが好きなおかずを選ぶというシステムである。バイキング形式、いや丸○製麺形式と評した方がわかりやすいだろうか。
店内の配置としては、出入り口に近い側から野菜や刺身、デザートのコーナーがあり、野菜炒めや焼き魚、唐揚げといった惣菜のコーナーがあり、おでんや天ぷら、卵焼きのコーナーが独立してあって、最後にごはん、味噌汁、麺類を頼むコーナーがある。そこまでいくと最後は会計だ。無論自動レジなどではないので、レジ係になると大変である。そして今日はその大変なレジ打ちをやらされていたのだ。
平日でも昼間は人が来る。近くに市役所があることもその遠因だ。今日昼の11時から入っているのもそのためであろう。延々と並ぶレジを打ち続け、2時を迎える頃には疲弊しきってゾンビのようになってしまっていた。ここで休憩があって本当に助かった。客足が減る2時から6時は、極端に少ない人数構成になるのだ。そのあたりは、どの飲食店も同じであると思う。
「あー新倉?ちょっといいか?」
パートのおばちゃん達の輪から離れていた自分に、店長は馴れ馴れしく声をかけて来た。まだ30になったかどうかの店長は、どこか頼りなくて手際も悪く感じていた。まあそれほど、自分の技術が上達した証拠なのかもしれないが。
特に何も考えずに事務部屋(通称店長の部屋)に入った俺に、店長はこんな言葉を投げかけた。
「新倉明日から学校よな?」
その通りだ。少し離れてはいるがこの辺りには馴染みのある高校出身だから、情報が回るのも早いのだろう。俺は無言で頷いた。
「その割にはバイト量多くないか?いや多いのはありがたいんだが、平日5-9時、休日は全部いけるとしか書かれてないぞ」
「まあ、やることないですし」
店長は少し心配な目をしていた。まあそんな目をしても、これまでの悪行は無くなったりしないんだからな!俺は少し湧いた希望を原動力に変えることもなく目の前で同情を見せる店長の姿を見ていた。
「まあそれならいいんだが……あまり無理すんなよ」
店長はそう声をかけて来た。別に無理なんぞしていないのだが、恐らくそれは部活も一緒にしている同僚達のせいであろう。塚原とか、確かダンス部って言ってたような……
「善処します」
そう言って笑顔を作りつつ、俺は休憩へと向かっていった。




