5月21日その⑥
「そういうことで、本日の反省会を行いたいと思う。異論はないな」
「さーえっさー」
帰り道、生徒会の用事と野球部の野暮用で2人がご飯を食べずに解散したから、2人だけで少しだけ奮発してサイゼリアへと赴いていた。2人して頼むのはペペロンチーノとミラノ風ドリアだ。どちらも半熟卵を乗っけるアレンジすら行わない。ドリンクバーもなしで、水をかぶがぶと飲む予定だった。
「まずは2人して寝坊したところからやなー」
「だなー」
「友一が寝坊って珍しない?あんましとるイメージないわ」
「確かにイメージないな。我ながら」
氷でかさ増しした水を飲む。最近徐々に暑くなってきた気がする。またクーラーをねだられる夏が来たのかと思うと、今のうちにどうやって切り抜けるか考える必要があるなと頭を抱えていた。
「つうか乃愛は結局何してたの?生徒会の用事って」
「あれやて、今年の文化祭の詳細な予定について生徒会担当の奄美先生から相談を持ちかけられてたから、遠坂君と話しつつ他の生徒会メンバーとLINE電話しててん。先合流しても良かってんけど、あんまり生徒会外秘のこと2人の前で話すんもどうかなあと思て」
実際乃愛からは9時半過ぎに連絡がきた。生徒会の野暮用のため、合流が遅れると。そして合流した頃にはもう昼どきになっていた。それまで2人して、苦手な数学に対して真摯に取り組んでいたのだった。褒めて欲しい。いや本当に。
「まあそれは仕方ないとして、次の反省点は…」
「私の声がハンドフリーの電話に載ってもうたことやな」
乃愛はスパゲッティをスプーンを使って巻き巻きしながら答えた。
「流石に用心足りとらんかったんちゃう?」
「いや、それに関しては何一つとして言い訳できない」
「私も流石にそんな状態やとは思っとらんかったわ。つうかなんで電話しとったん?別にLINEでよくない?」
「完全にノリがバイト遅れた時になってたわ」
「あーなるほど」
乃愛は一応納得した表情をしていた。一度学校の終わりが遅れ遅刻しかけた時に連絡を入れたことを思い出したのだろう。バイト先内でのLINE交換はしてあるが、遅刻連絡はいつも電話だ。これは社会人として当然のマナーらしい。俺はまだ、社会人とバイトの違いなんて理解してはいないけれど。
「で、着替えるためにハンドフリーにしたと」
「まさかあんな絶妙なタイミングで声が入るとは思ってなかった。これに関しては100%俺が悪いわ。すまん」
俺はミラノ風ドリアを口に含みつつ恭しく頭を下げていた。
「ばれてもうたかなあ…」
「聞かれたのは妹さん?とかだったけどな」
「それもなんか心外やけど、でもそれ本気にしとるんかわからんなあ。言い訳も苦しいし…これはもう、ほんまのこと言うしかなくない?」
俺はその提案を沈黙で却下しつつ、ふとこんな事を尋ねてみた。
「俺ってさ、家族のこと聞かれたら、どう答えるべきなのかな?」




