5月21日その①
そうやって夜中になってもグダグダと起きている日々が続いたからこそ、その日はやってきたのだ。この世の事象には全て原因がある、なんて偉そうに高説を垂れるのは若輩ならではの勘違いであるが、しかしその日に関しては間違いなく因果応報を端的に示していた。
パチっと目を覚ました時、時刻は8時45分をさしていた。別にいつもの休日ならばそれでいい。我々は今日、9時にイオン集合と言っていたのだ。あ、説明が足りなかったかもしれない。イオンとは藤ケ丘高校近くの、駅前に立っているイオンだ。そしてここから藤ケ丘高校までは大凡40分かかる。後は…説明しないでもわかるだろう。
そう、遅刻確定である。俺は隣でスヤァと眠る乃愛を無視して、さっと電話をかけつつ着替え始めた。別に遠坂にかけても良かったんだけど、着信履歴が先にあるのは近藤だったからそっちにかけた。
とりあえずズボンを履き替えられた辺りで、近藤は電話に出た。
「もしもし?」
「あー近藤?ごめん今起きた遅れる」
「えーほんと?珍しいね」
珍しい?珍しいと言われるほど一緒に出かけたことあったっけ?見た目のイメージからそう思われているのなら、まあ理解できないわけではないが。
とここで、数点の注釈を入れておこう。まず1点目、俺は寝起きで頭が回っていなかった。次に2点目、着替えたらなんたらを遂行するために、俺はハンドフリーで机に携帯を置いたまま話していた。そして3点目、
「ごめん適当に時間潰しといて!30分には行く!」
ここで一度焦って切るボタンを押せずにスマホを落としたことだ。時刻にしては1秒にも満たない刹那だったが、これによって次の彼女の言葉が、恐らくだがスマホの音声に乗ってしまった。
「ゆういちおはよー!今何時?」
この寝起き感が山盛りにのっかったぼけぼけの声が、音声に乗ってしまったのだ。俺はすでに引いていた血の気が更に引いてしまった。それを紛らわすためにさっと鞄を持った。
「って、ふわわわわわ!!!!友一!!友一!!めちゃくちゃ寝坊しとるやん!!どうする?どうする?連絡しとかんと…」
「俺の分はもうしておいた。俺はもう出るぞ」
「えー?私の分もやっといてよ!気が回らんなあ」
「できるわけねえだろ!!!お前が寝坊したかどうかなんて、一緒に住んでねえ限りわからんねえだろ!!」
あーそっかという顔をした乃愛も相当に頭が回っていない様子だった。俺は彼女を見捨てるように出発したのだった。何?遠坂に連絡入れたのかって?勿論そんなこと忘れていたに決まっている。




