鶏がらスープと朝の通信
起きると通知のバナーが表示されていた
時刻は午前6時、友一はまだ寝ている
今日は新入生の歓迎会だ
私は生徒会長だから、この催し物の主催者となる
そのために今日は早く起きたのだが、どうやら前日の夜中に入っていたらしい
面倒だからとパスしたくなったが、連絡の相手がちかちゃんだったからやめた
しかしその文面は、見て見ぬ振りをしたくなるようなものだった
『昨日はお疲れ様!ところでさ、昨日自転車置き場で乃愛と話してた人の名前って、誰だっけ?忘れちゃった』
記憶力に自信のあるちかちゃんが忘れるなんて意外だな
私はそう思いつつ返信を送り返した
『新倉友一って言うらしいよ』
って言うらしいよの部分は昨日の決め事を意識しつつ差し込んだ
どうせ朝だしと思ってスマホを布団の上に置いた
そしてそのままお湯と鶏がらスープの素でできる鶏がらスープ(具材0)を朝ご飯がわりにしようとやかんに水を入れていた
どうせ時間経ってから返信が来るのだろうと睨んでいたのだが、ソッコーで返信が来た
ああ、ちかちゃん野球部のマネだから、この時間もう練習に向かってるのか
そう納得しつつやかんを火にかけてからLINEを見た。
『新倉くん!覚えとくよー』
そんなことが聞きたくてLINEしたのか
真面目なところが彼女らしいなと思いつつ、底の深い容器に鶏がらスープの素を入れた
スプーンで一杯、これで十分だ
後はお湯が沸騰するのを待つだけと思っていたら、追加の連絡が来た
『2人はさ、本当に自転車置き場で初めてあったの?』
私は間を空けずに返した
『そうだよ』
『よく分かったね。同じクラスだって』
『い、いやさ。自転車壊れて頭抱えてたらたまたま通りかかって、助けを求めたら同じクラスだって言ったから』
『ふーん、それはまでは知らなかったんだ』
『そうだよ!!』
頭で必死に考えながら嘘を積み重ねていった
『その割に仲良しだったけどね。口元抑えたりとか』
あーそんなことされたなそういえば
『いや、結構慣れてくるとあれくらいのことしてくるよ!気さくだし、ちかちゃんも話してみたら?』
よし、こうやって逆用してやろう!
昨日はちかちゃんにこのことを知らせるの反対されたからな
ちかちゃんとよく話すようになったら考えが変わるかもしれない
何より、最高の友人にさえ嘘偽りで塗り固めなければならないのは割とストレスだ
胃の下あたりがキリキリする
罪悪感で頭がいっぱいになる
そんな苦しみ、友一は感じないのだろうか?
……そもそも、友一友達いるのかな?
そんな失礼なことを考えている内に、やかんが沸騰した
即座に止めて容器に入れる
残った分は拾い物のポットで保管だ
立ちながらスープを啜っていると、連絡が来た
『わかった!また学校話してみるね!それじゃ私部活だから!』
よしよしこれで、友一も考えを改めるかもしれない
私は満足な顔でスープを飲み干したのであった




