それは偶然の産物なのだろうか
「はあああああああ」
近藤はあまりに落ち込んだ様子で生徒会室に入り浸っていた。まあいってもその日の昼休みは僕と近藤しかいなかったから、仕方ないとは思うけれども。
「どうした?近藤」
「いや、私めんどくさい女になってしまったなって」
そこから前日、近藤が電話したこと、そして結構面倒臭い一言をしてしまったことに対し
散々に愚痴られてしまった。
「最悪….本当に最悪…絶対重たい女だと思われた……こいつめんどくさいなって絶対に思われた……」
「そ、そんなことないだろ」
「いやいや、あの子だよ。友一君だよ!絶対に面倒やって思われたって。あーゆー女の子好きになりそうな感じないし。はあああああ。何であんなこと言ってしまったんだろうって、ずっと後悔してる…」
落ち込む彼女の表情は、中々真に迫っていた。
「まあ、過ぎたことはしょうがないでしょ。それよりほら、な」
そして僕は彼女に一通のメールを見せた。そこにはこう書かれていた。『日曜日空いてるから、大丈夫!どこ行く?』発言者はもちろん、先程から話題の彼だ。
「え?これもしかして遠坂君が予定作ってくれたん?」
「そんな面倒くさいことはしていないぞ。日曜日代わりに休みだって聞いたから、誘ってみたら結構簡単に了承してくれた。
「え?…ありがとう…」
「というか、あいつ、簡単に了承して簡単に断り過ぎな。どこまで淡々としてるんだ?」
褒められるのに慣れていないから、僕はさっと話題をきった。
「いやほんとに、簡単に来るって言ってくれてすごい嬉しかったけど困惑したし、簡単にこないって言ってきて困惑した上に落ち込んだし、結構振り回されてしまったなって感じ」
はあとまたため息をついていた。彼女は本当に新倉友一のことが好きなのだろう。心の底から好きだからこそ、本来の彼女では絶対に出てきてこないであろう面倒臭く人間臭い一面が垣間見れるのだろう。近藤憐は純粋だ。純粋に新倉を追いかけている。彼女みたいな崇拝の入り込まない恋愛を僕もしてみたいと心の底から思った。彼女と同盟を組んではいるが、彼女の恋愛の仕方には本当に憧れてしまう。
「遠坂君あれだってね。結構私の恋を助けてくれたんだってね。昼休みとかちょこちょこっとそういう話振ってくれたり…」
「何1つ反応しなかったけどな、あいつ」
「むううう、ガード固い…でもそうだね。それだけ手伝ってもらってるんじゃ、頑張るしかないか。ありがとう、遠坂君」
なるほどこれが彼女の魅力か。その赤色の髪とは思えぬ純粋な乙女姿は、染髪拒否厨も親指を立てるであろう。
「それじゃあ、私も頑張らないとなあ。乃愛に色々進言していかなきゃ…」
「ん?私?」
本当にタイミングよく、会長が入ってきた。今日も相変わらずお美しい。胸が高鳴って仕方ない。しかしこれは好機だ。またとない好機だ。
「乃愛!いつからそこにいたの?」
「いやいやさっき来たばっか。昼休みここで食べようと思ったらまた水泳部の顧問に捕まっちゃって…で、なんのはなししてたの?」
自然に席に着く会長へ向けて、僕は緊張しながら尋ねた。
「会長、今週日曜日って、空いてますか?」




