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5月19日

「で、先輩なんでここに居るんすかー?今日クラスでボーリングって話だったっすよねー?」


 大量に溜まりまくってる皿を対処しつつ、塚原真琴はいつもの似非後輩会話方法でまあまあえげつないことを尋ね始めた。


「そりゃお前、ハシラ先輩が食中毒でダウンしたからに決まってるだろ?」

「別にこれくらいの客の入りなら私1人で対応できたっすよ」

「お前今の洗い場の惨状見て同じことが言えるのか?」


 そう言いつつ俺はお皿を大量に運んでいた。時刻は8時50分。ようやく人の入りが収まって、俺としても最低限やらなければならない仕事が終わりほっとしていた。


新倉(にいくら)、そっちはどうだ?」

「刺身サラダデザートは前出てるやつで全てです。残ってるのは肉じゃが2セットくらいですね。焼き魚は店長の判断で焼いてください。一応フルセット前に並べてます」

「…少しストックがない気がするんだが…」

「鍋振るのは考えたんですが、食材が足りなくてチャーハンすら難しいですね」


 店長は一通り冷蔵庫の中身を確認したのちに呟いた。その間に俺はお皿を元の位置に戻していた。


「いやあ、発注間違えたか?」


 そしてこちらを向いて言った。


「わかった。洗い場は?」

「死にかけてますね。ヘルプで洗うほどではないですが、お皿運んでおきます」

「おっけ!そろそろレジの中途確認入るから、塚原の手伝いよろしくな」


 そう言って店長は2階へ向かっていった。休憩を兼ねてデスクワークしにいくのだろう。まあこれから1人で回すんだから、仕方ないと言えば仕方ないだろう。


 もう一周行くかと思って洗い場に向かうと、既に塚原の姿はなかった。少し早いタイミングだが、レジ残金の確認を始めているようだった。俺はお皿を持って帰ろうとすると、来ているお客さんがいないのを見越して塚原真琴が声をかけて来た。


「昔っから、先輩ってそうっすよねー」


 それを意に介せず持ち場へ歩いて行くと、厳しいツッコミが入った。


「ち、ちょ!!そこは普通足を止めてくれるところっしょ!?」

「悪いがこれ仕事なんでな。昔話は後で聞く。聞かねえけど」

「聞かないんすか!?なんでっすか!?」

「いやだって、さっさと帰って飯食べたいし。今日客の入りやばかったし。疲れたし」

「全部正論っすけどー!たまには後輩の昔話にも付き合って欲しいっすよー!」


 後輩(同い年(幼馴染))だけどなお前。


「別にいいんだよ。クラス会の1つや2つ。どうせまたやるだろ。あいつらのことだし」

「いやいや先輩、最初に行くか行かないかって割とでかいんすよー?前のクラス会であったノリとかわからないと、コミュ障の先輩にはついていけないんじゃないっすかー?」


 にたあと笑う塚原真琴に少し腹が立った。結局こう言う小悪魔キャラでいくのだろうか。彼女がここに来てから何回もどんな風に俺と接するか悩むと言い続けて来たが、その結論がこれか。


「まあ?私的にはそれでも問題ないって言うか?むしろ最近の先輩なんかリア充過ぎて違和感だったって言うか?でも…」

「お客さん来てるぞ」

「!?!?!?」


 一気に勢いが落ちた。流石にお客さんがいると、彼女も大人しくなるのだ。お客さんがレジに来るまでに、小声でこう言うのが精一杯だった。


「先輩、やりたいことはやりたいって、やりたくないことはやりたくないって、ちゃんと言うんすよ。人生我慢していいことなんて1つも無いんすから」


 それを俺は受け止めつつ、大声でいらっしゃいませーと叫んでいたのだった。

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