22:勇者と聖剣 其の二 ☆
こんにちは、真歩です。
「どうじゃっ! どうじゃっ!」
無数の剣の破片。
その全てが私へと一直線に向かってくる。
とっさに両腕をクロス。
物理無効。
スキルは常時発動しているわけではない。
こうしてその都度想像しなければならない。
元々の身体能力がこちらで飛躍的に向上しているとはいえ。
「わわっ!」
まるで突風に襲われた感じ。
目を瞑り通り過ぎるのをただ待つ。
「ほう、耐えたかっ! ならこれならどうじゃっ!」
わらわちゃんが私を指刺す。
忠実に動く切っ先。
今度は前後上下左右、色んな方向から高速で迫ってくる。
これはまるで刃の嵐。
「っ痛」
自力&物理無効を駆使してもダメージが通った。
これは何か付与されてるって事かな。
今、現在私の所有しているスキルは24種類。
これを駆使してわらわちゃんを降参させなくちゃ。
浮遊、これで空を駆け巡り、素早さ向上、そして回避を発動。
「むっ、急に動きが良くなったのじゃっ!?」
まるで小さな隕石。
避ければ海へ向かい、大海原に巨大な噴水が生まれる。
でもすぐに引き返して私に迫る。
私はロックオンされていて誘導されているかぎり避けるしかない。
見切り発動。
刃にうっすら何かが纏っている。
魔法。
なるほど、刃一つ一つに魔法が付与されている。
ならば、魔法無効だね。
距離を詰める。
当然、刃は追尾してくる。
でも今度は避けない。
そのままわらわちゃんに突っこむ。
後方、弓なりに弧を描きながら私の頭上へ。
降り注ぐ。
今度は刃の雨。
「痛っ! イタイタイタイタイっ!?」
おかしい、痛い。
物理も魔法も対処しているはずなのに。
なら、これなら。
物理反射、魔法反射、同時に宿す。
こっちが距離を詰めてもわらわちゃんの動きも素早い。
間合いは詰まらない。
その間、どんどん攻撃を受ける。
「っ! 痛っ、やっぱり痛いよぉっ」
何故なのか、物理魔法両方とも、無効と反射を使ってるのにその刃は私を貫いてくる。
一応跳ね返っているようだけど。
これは単純に私の体に当たっての反動でしかない。
「無駄じゃ、無駄じゃっ!」
となるとこれらのスキルにも発動条件があるのかも。
短い思考。
自分の防御力を遙かに超える攻撃ゆえに全てを無効および反射できない。
もしくは付与されている魔法が私の使えない属性だからかも。
現在、所得している属性は、火、風、土、水、氷、雷。
多分、他に光とか闇とかあるよね。
見た目的には光っぽいなぁ。
これも威力に依存している可能性がある。
つまり、スキルは効いていてその上でダメージを受けてるんだ。
正直分からないけど。
回避だけはできる。
でもそれだけでは勝てない。
だから攻撃するしかない。
攻撃は最大の防御だ。
「え~いっ!」
氷の槍。
雷を纏わせの二重魔法。
さらに下にある海から大量の水を噴き上げる。
そして氷付与。
お返しとばかりの同時攻撃。
巨大逆つらら。
電を帯びたいくつもの透明な槍。
「無駄じゃといっとろうにっ!」
旋回する光の刃の元に全て弾かれ、砕かれる。
ちなみに今のに魔法力向上も上乗せしてある。
青い空と海。
景色は度々変わる。
全体を真っ白に染める光。
海は所々大量の水を噴き上げ。
空は色々なものが飛び交う。
「そろそろ遊びは終わりじゃっ!」
細かい金属の破片。
それが一カ所に集まっていく。
やがてそれは形作り。
一本の巨大な剣となる。
「貫くのじゃっ!」
渦巻く光。
螺旋の先には私。
相手の剣が飛び出す直前の。
瞬きの中。
無意識の行動。
これは私の基本スペック、そしてスキルを越える。
対処のための見切りがそう伝える。
受けられない。
避けられない。
まだ試してないスキルで尚且つ今使えそうなもの。
一瞬の隙をつけるような。
頭に浮かんだのは。
威圧、魅了。
どちらも効けばこの綱渡りの攻防で光明が見いだせる。
「え~い、どっちもだぁっ!」
睨みながらウインク。
とにかく突貫。
前に進むしかない
剣はまだ動かない。
でもわらわちゃんとの距離はどんどん詰まる。
神器。
崇高なるその刃。
人間など愚弄と見下している。
でも、今の私は勇者で。
この世界では人を越える者。
「な、なんじゃ、今、一瞬、わらわの体が・・・・・・」
読心。
直前で相手の思考を読む。
このまま剣の軌道は一直線。
見える。
ギリギリのライン。
高速浮遊、素早さ向上、見切り、回避、そして風魔法での追い風。
今持てる全ての能力を。
攻撃力上昇、体術、その拳に覚えている全属性をのせる。
巨大な剣は私の横をすり抜けて。
ごめんなさい。
そう呟きながら。
私の拳が。
わらわちゃんの体へと辿り着く。
読んで頂きありがとうございます。




