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21:勇者と聖剣 ☆

 こんにちは、真歩です。


 今、私は伝説の武器を取りにきております。


 そして今、私、飛んでいます。


 雲の上、そこは青が広がる世界。


 空の下、そこは雲が広がる白い海。


「わぁっ! 凄いっ!」


 なんて絶景なのだろうか。


 空を飛ぶ、これは人なら誰しも一度は考えた事があるであろう力。


 それを今は私は実際にこうして生身で飛行している。


「いっけ、いっけーっ!」


 これなら教えられた場所まですぐに着く。


 そこは地の果て、深い霧に覆われた小さな大地。


 昔の船乗りが嵐で航路を外れて偶然辿り着いた場所。


 島に祠があって、その中には大層に飾られた白い剣があったとのこと。


 大地に深く突き刺さったそれを船乗り達はなんとか引き上げようとしたが、総出で力を合わせても、それこそ船でひっぱろうとしたけどビクともしなかったらしい。


 諦めて故郷へと戻った船、もう一度その地に訪れようと試みるも二度と辿り着くことはなかった。


 そこまでが私が聞いた話。


 ここからは尾ひれがついたのか、その大地は実は巨大な聖獣の背中で、つねに移動していう説もあるって。一体どこまでが本当なのかな。


「一応、この辺りのはずだけど」


 厚い雲の層を潜り落ちる。


 白い海が青い海へと様変わりした。


 空中で静止、目を凝らしてみる。


 同時に視界が広がる。


 どんどん角度も増して。


「うぅ、これやっぱり気持ち悪いなぁ」


 前を見ているはずなのに、視界は360度、私を中心に球体のように映し出される。


 自分の意志でずっと先まで拡大可能。


 千里眼。


 浮遊と一緒に私がいつの間にか使えるようになった力。


「ん、あそこ、なにかある・・・・・・」


 灰色の島。


 面積はとても狭く、あるのは中央に突き出た岩の洞窟。


「あれっぽいかも」


 さっそく近づき、島に降りる。


「お邪魔しま~す」


 暗いはずの洞窟内。


 だけど、そこはとても明るく。


 眩い光を放っていたのは。


「あっ、剣だっ! やっぱりここだったよっ!」


 刀身半分、地に埋まっている。


 実際に話通りにあった事がまずびっくりだったのだが。


「・・・・・・なんじゃ、お主」


 女の声が聞こえた。


「え、え?」


 ここには私の他に人の気配はない。


 そもそも隠れるようなスペースもない。


「もしかしてこの剣が、喋った??」


「五月蝿いおなごよの、わらわの寝床に土足で踏み込んできよって、なんと無礼なやつじゃ」 


「えっと、会話できてるのは元々系ですか? それとも脳に直接話しかけてる系ですか?」


「これは元々系じゃ。この数千年で、お主のような迷い人が度々ここを訪れるゆえ、人種の言語など簡単に覚えてしもうたわ」


「数千年っ!」


「そうじゃ、遙か昔の天界戦争、その時神々にわらわは使役され、激しい戦闘の中、わらわはこの下界へと落ちてきたのじゃ」


「なるほど、丁度、この島の上にだったんですね」


「いや、落ちた時は海底だった、じゃが長い年月の末、こうして海面が下がって地上へ出ることとなったのじゃ」


「ほうほう、となればわらわさんは元々神々の武器で今は伝説の武器なんですね」


「別に今も昔も神々の武器じゃっ。本来なら人種ごときが気安く話せる存在ではないのじゃ」


「そうでしたか。もしあれなら抜いて持って帰ろうと思ってたのですが・・・・・・」


「たわけっ! 人種ごときがわらわを扱えるはずなかろうがっ! そもそも人種にわらわは抜けんわっ!」


「あぁ、ごめんなさい、気を悪くしてしまいましたか。まぁそれはどうでもいいとして、じゃあ私が抜ければ持って帰っていいのですね?」


「なぬっ! この娘、ぬかしおるわっ! よかろう、なら特別にわらわに触れる事を許してやるのじゃ、試してみよ、人種ごときがっ、そして身の程を知れっ!」


「じゃあ、遠慮なく」


 私はわらわさんの柄を握った。


 そして思いっきり力を込めてひっぱる。


「せいやああああああああああああああああああああああああああああっ!」


「む、むむ? むむむ??? こ、これはいかん、ふ、ふんがぁああああああああああああああああああああ」 


 あ、本当に抜けない。


 でも、ガタガタいってる。


「もういっちょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「ぐ、ぐぬぬぬぬうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 なんだ、さっきより重くなったよ。


 これ絶対踏ん張ってる。


 こ、これはいかん、って言ってたもん。


「普通に抜かせてくださいよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


「い、いやじゃ、いやじゃ、わらわはここでぐーたら過ごすのじゃあぁああああああああああああああ」


「全力全開ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」


「ふがああああああああああああああああああああああああ・・・・・・あ」


 スポンと気持ちいい音が聞こえたような気がした。


「やったっ! 抜けましたっ! 持って帰りますっ!」


「だ、駄目じゃ、今のは小手調べじゃっ! わらわを持ち帰りたくば、本当の試練を受けよっ!」


 白い剣は、抜けた瞬間さらに大きな光を放った。


 そして拡散した光が一部に集まっていく。


それは人の形に模したなにかになった。


 浮かぶ少女。


 自分の背より遙かに長い黒髪。


 露出のとても多い白いドレスのような格好で。


 その背中には剣の破片を無数に宿していた。


「よかろう、お主に試練を与えて進ぜよう。わらわの力を借りたくば力づくで認めさせよっ!」


 抜けたのに。


 抜けたのに、この擬人剣は新しい条件を突きつけてきた。


 こうなりゃ意地でも持って帰ろうと思います。

ありがとうございます。

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