表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロスキルの料理番  作者: 延野正行
第7章
187/209

menu165 退却戦

☆★☆★ 本日 コミックス4巻発売 ☆★☆★

おかげさまで、本日無事発売日を迎えることができました。

コツコツと積み重ねて、4巻までやってこれたのは、

作画担当の十凪先生とキャラデザの三登先生、そして読者の皆様のおかげです。

5巻も出したいので、是非お買い上げいただけると嬉しいです。


挿絵(By みてみん)

 マジックスケルトンの哄笑が響く。


 斬っても斬っても再生する魔獣。


 しかも相手は竜種の1種――蛟竜だ。


 絶望的な空気が包む中で、ディッシュは顎に手を当てた。


 料理をしている時と同じぐらい真剣な表情を浮かべている。


「マジックスケルトンの言うことはもっともだ」


 蛟竜についての情報は少ない。ディッシュが知る情報も、子どもの時に読んだ魔獣図鑑の中のものだ。


 その中には「斬ること能わず」という文言があった。


 つまり物理攻撃は受け付けないのかも知れない。


「なら、斬れるまで斬ってやるだけだ!!」


 走ったのは、アセルスだった。


 スキル【光速】を使って、湖面を滑るように走って行く。


 身構える蛟竜を前にしても速度を弛めず、懐に入った。


「でああああああああああ!!」


 無数の剣筋が閃く。


 アセルスのスキル【光速】はただ移動する時に発揮されるわけではない。


 動作の1つ1つが【光速】となるのだ。


 剣を振れば、【光速】の動きで魔獣を圧倒する。


 斬撃を躱すことはほぼ不可能。


 止めることも難しい。


 ただ1秒間に100回以上の斬撃を、諸に浴びるだけだった。


 ディッシュが意識した時には、蛟竜はバラバラになっていた。


「「「「おお!!」」」」


 冒険者の間で、期待を込めた声が上がる。


 だが、その声はすぐ悲鳴に変わった。


 見えている部分の根っこまで、切り刻まれた蛟竜の身体が元に戻り始めたのだ。


 再生はさせない。


 アセルスとスイッチして立ち向かったのは、ウォンだった。


 大きな牙を剥きだし、蛟竜を食おうとする。


 すると、蛟竜は二つに分離した。向かってきたウォンをスルーすると、何事もなかったように再生した。


「斬撃が無理なら、これならどうだい!!」


 叫んだフレーナの手には、赤い炎が燃えさかっていた。


 スキル【炎帝】


 炎が竜となって、蛟竜に襲いかかる。


 フレーナだけではない。


 炎系のスキルを持つ冒険者たちも、一斉に蛟竜に向かって炎を放つ。


「水系の竜というならぁ、炎に弱いはずですよぉ」


 エリーザベトは言うが、表情は硬かった。


 だが、その指摘は功を奏す。


 蛟竜が炎を嫌がったのだ。炎から逃げるように水の中へと隠れた。


「よし! 今です!! Cランク以下の冒険者は今すぐ退避を! 退却します!!」


 ルヴァンスキーは号令をかける。


 リーダーであるアセルスも退避を呼びかけた。


 そのアセルスの目に、ディッシュが映る。ヘレネイとランクも共にいた。


「3人とも何をやってる! お前たちはDランク以下だろ。早く逃げろ」


 アセルスは注意する。


 ヘレネイがこちらを向いた。


「なんかディッシュくんが見つけたみたいなんです」


「見つけた? ディッシュ、何を見つけたのだ?」


「ん? ああ……。ちょっとな。蛟竜の正体って奴だ」


「蛟竜の正体?」


『くくく……。今さら蛟竜の正体もなかろう。お前たちはここで死ぬのだ』


 マジックスケルトンは眼球のない眼窩を光らせる。


 そして周囲に絶望を振りまいた。


「ウォン……」


 アセルスはマジックスケルトンをポイッと投げる。


 すると、ウォンが飛びつき、またベロベロと舐め始めた。


『ちょ! やめぇ! やめてぇ! 痛い……! 甘噛みで! 何卒甘噛みでお願いしますぅうぅ! ウォン様! 歯が……歯形がのこっちゃうぅぅうううう!!」


 マジックスケルトンは一転悲鳴を上げる。


「正体は気になるが、今は退避を急げ」


「そうね。ディッシュくん、脱出しましょ」


「ん? ああ……」


 ヘレネイ、ランク、そしてディッシュは元来た道へと引き返そうとする。


 だが、蛟竜は再び水面から顔を出す。


 水をいっぱいに浴びながら、逃げようとする冒険者の退路に回り込んだ。


「下がって!!」


 スキル【炎帝】!


 フレーナが前に出て、極大の炎を打ち込む。


 これで蛟竜は怯むかと思われたが違う。


 先ほどまで嫌がっていた炎をモノともせず、フレーナの方に突っ込んできた。


「やばっ!!」

「フレーナ!!」


 アセルスが間一髪の所で救い出す。


 だが危機は終わらなかった。


「キャアアアアアアアアアア!!」


 悲鳴を上げたのはヘレネイだった。


 彼女の前に立ちはだかったのは、やはり蛟竜。


 声に反応したのだろうか。頭をヘレネイの方に向ける。


「ヘレネイ!!」


 ランクがヘレネイの前に出る。


 弓を構え、すかさず放つが蛟竜に避けられてしまった。


 もはや威嚇にもならず、ランクとヘレネイに蛟竜が迫ってきた。


 2人の悲鳴が重なる。


 その時、現れたのはディッシュだった。


 突如、蛟竜の前に踊り出る。


 道具袋に手を突っ込むと、何かを握り締めて、突撃する蛟竜の頭にぶちまける。


 爆弾でもなければ、投擲武器でもない。


 だが――――。


『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっっ!!』


 声なき悲鳴を上げて、蛟竜が怯んだ。


 再び水の中に潜り、退避する。


「ディッシュ! 大丈夫か?」


 心配したアセルスが駆けつける。


「ああ。俺はな。ヘレネイ、ランクも無事か?」


「ありがとう、ディッシュくん。さすがに寿命が縮んだわ」


「うん。もうダメだと思ったよ」


 ヘレネイとランクはホッと胸を撫で下ろす。


 そこにルヴァンスキーが二人の背を押した。


「2人とも安心するのは、まだ早いですよ。蛟竜が大人しいうちに」


「は、はい」

「わかりました」


 憧れのルヴァンスキーを見て、2人は立ち上がる。


「それにしても、ディッシュ。さっき投げつけたのはなんだったんだ?」


 アセルスは尋ねる。


 他のBランク以上の冒険者も気になったらしく集まってきた。


「別に特別なもんじゃねぇよ。俺もまさかあそこまで効果があるとは思わなかったけどな」


「はっ? どういうことだよ、ディッシュ」

「そうですよぉ……。勿体ぶるのはダメですよ~」


 フレーナとアセルスが急かす。


「私も聞いておきたいものですね」


 ルヴァンスキーまで片眼鏡を開けて、瞳を光らせた。


「だから、そんなに大したものじゃないって。水――それも淡水にいる奴には、ちょっと厄介なもんだ」


 ディッシュはマジックスケルトンを入れていた道具袋ではなく、いつも背負ってる背嚢の中をまさぐった。


 出てきたのは、紙袋だ。


 そこに書かれた文字を見て、その場にいたみんなが驚く。


「お、お、お、お……」



「「「「「お塩……!!」」」」」



 絶叫した。


 ディッシュは照れくさそうに鼻の下を指で掻く。


「そう。塩だ」


 にしし……。何か意味深げに笑うのだった。


☆★☆★ 本日コミカライズ更新 ☆★☆★

拙作『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』のコミカライズ更新日になっております。

とても微笑ましい回になっておりますので、是非ニコニコ漫画でご覧下さい(吐血)


いつの間にやら「いいね」をたくさんいただいておりました。

これって作者に通知来ないんですね(苦笑)

感想ともどもありがとうございます。


コミックス4巻は、十凪先生が描かれた口絵も綺麗ので、

是非お買い上げ下さい。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


ヤンマガWEBで掲載中。初の単行本が2月6日に発売されます。
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


1月10日。角川コミックス・エースから最終巻が発売です。最後まで是非ご賞味ください!
↓↓表紙をクリックすると、公式HPに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『劣等職の最強賢者』コミックス2巻 1月19日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月15日に書籍発売! こちらもよろしくです!
↓※タイトルをクリックすると、新作に飛ぶことが出来ます↓
『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~』


カドカワBOOKS様より好評発売中です。おいしいチーズフォンデュが目印です。是非ご賞味下さい!
↓↓表紙をクリックすると、公式HPに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー

― 新着の感想 ―
[一言] 今回も美味しく頂きました。 続けての投稿ありがとうございます。 戦闘シーンは、なかなかないので、久しぶりに興奮しましたが、ディッシュの紙袋の中身で、笑いを押さえるのに大変でした。 アセルス…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ