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異世界辺境村スモーレルでスローライフ  作者: 滝川 海老郎


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58. 唐揚げ

 第一弾のヒヨコたちはもう、立派に大きくなった。

 メスが二羽、オスが二羽だった。


 第二弾のヒヨコたちも、もうヒヨコではなく若いニワトリになっている。

 こっちはメスが三羽、オスが一羽。


 そしてうちではフリーのオスを呑気(のんき)に飼ってる余裕はないのだ。


「ということで」

「「「はいっ」」」


「うんあのね」


 言いにくいが、まあね。


「オスの一羽は、お肉にします」

「「「お肉!!」」」


 こうして、一羽が犠牲になった。


 作業は父ちゃんにお任せなので、俺たちは見てるだけだ。


 普段、山の猟は、大型動物の罠が中心なので、鳥とかは仕留めてくることがない。

 だからうちでは肉と言えば、シシ肉だったんだけども。


 庭に放たれているオス鳥を、追いかけて捕まえた。

 そして絞める。


 殺しちゃうのは残酷ではあるけど、普段食べてるお肉や魚だって結局のところ、一緒なのであって、それは前世だって変わらない。

 ただ、目の前で殺されないってだけだ。


 父ちゃんはさっさと血抜きをして、そして羽とかを(むし)ってささっと処理を済ませてしまった。


 それからお肉を部位に切り分けると、俺たちのターンだ。


 すでに前世で見たスーパーの鶏肉と大差がない。


「本当は醤油っていうのがあるといいんだけどないから、今日は代案で。これはこれで、とっても美味しいと思うから、大丈夫」

「「「美味しい――」」」

「うん、たぶんね」


 鶏肉に塩胡椒(こしょう)、少しだけ砂糖、この前買ってきた酒とニンニクを使い下味をつける。

 酒は蒸留酒で料理酒みたいなのがあったので、買っておいた。

 十分に揉んで味をなじませたら次だ。

 片栗粉なんてないので、小麦粉を使って粉を薄めにまぶしていく。


 それをちょっと贅沢に、サラダ油を注いだフライパンに入れて揚げる。


 じゅわああ。


 唐揚げの揚げている音がする。


「「「うわあああ」」」


 いかにも美味しそうだ。


 焦げない程度に揚げたら、油から上げる。

 お皿に並べていき、そして横にレモンを添えて、完成。


「熱いよ」

「はい……」


 もうリズとかヨダレが垂れそう。


 ついでにこれはお昼ご飯なので、サラダとかも作っておく。

 それからジャガイモのポタージュスープもある。

 この前のおろし金がジャガイモをすって、それっぽくしたものだ。


「食べていいよ」


「「「いただきます」」」


 三人娘は我先にと、フォークを唐揚げに突き刺して、持っていく。


「ほふほふ、熱い、でも、美味しい」

「おいしー」

「美味しい、です」


 この集落で鶏肉を食べたのは、たぶん、初めてだ。

 しかも鮮度のいい「若鳥の唐揚げ」だから、そりゃあ、美味しくなきゃ、おかしいよな。


 うちの両親もちょろっと唐揚げを食べる。


 ニワトリ一羽分なので、そこそこの量がある。

 部位によっても味とか食感とかも違って、それぞれ美味しいと思う。


「ジューシーでおいしい」


 ジェシカも来ている。ご飯そのものは宿舎で食べるんだけど、騒ぎを見ていたので、唐揚げの味見をしていった。


「ジェシカさ、町ではニワトリとか食べるの?」

「え、まあ、たまには食べるよ。豚が多いけど、オスのニワトリはやっぱり卵産まないから要らないでしょ」

「だよねえ」

「うん」


 町でも一緒なんだな。まあ、そうだよな。


 唐揚げは全部なくなってしまった。


「もっと食べたかったにゃ……」

「まあ、またの機会に。オスがまた生まれて余ったらね」

「うん」


 リズがそういうけど、基本的には卵用なので、お肉用はおまけだから、あまり機会はないだろう。

 村まで行って、ニワトリ仕入れてくるとかすれば別だけど、生きたまま運ぶのも面倒だし、かといって生肉を運ぶわけにもいくまい。


 いや待てよ。


 ジェシカにひとっ飛びしてもらえれば、町まで買いに行って、新鮮なお肉も買えるのでは。

 いやあ、やっぱ持つべきものは、翼人族の友達だな。


「ジェシカ。悪いんだけど、たまに生の鶏肉買いに行ってくれる?」

「ど、どうかなぁ。あんまり任務外の仕事してると、怒られちゃう」

「だよねえ」

「うん。でも、これ本当に美味しいから、隊のみんなの分も作れば、喜んでくれると思う」

「みんなも巻き込んじゃうと。なるほどねえ」


 こうして唐揚げは、集落のごちそうメニューとなるのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 使っている材料が余りにも高額な唐揚げ。 領主相手に出しても、絶対に文句など言われない。
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