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駄目社会人の姉と、その他問題児たちが魔法少女になったから、俺がサポートする  作者: そら・そらら
最終章 決着

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15-11.悠馬がいないと

「悠馬ー。わたし頑張ったー。褒めてー。……いないんだった」

「そうよ。いないの。悠馬がいなくても、わたしたちなんとか勝てたわね。しかも割と強そうな敵に」

「でもお姉さん。悠馬がいないとレールガン呼ぶのにちょっと手間でしたよ」

「それに、セイバーを行かせるかどうかの判断にも迷ってしまいました。悠馬がいれば、たぶん連絡はもっとスムーズに行ったかな」

「それはまあ、わたしが疲れて寝てたからで。普段通りならわたし、駆けつけてたと思うわ。でも状況を伝える人がいないっていうのが厄介なのは確かね」

「悠馬さん、いた方がずっといいですもんね」

「そうなのよねー」

「皆さん! 電源車に戻りましょう。ずっと変身し続けてるのも大変ですよね。一旦テレビ局に行ってから、局の車で家までお送りしますよ」


 澁谷が駆け寄ってきた。フィアイーターが倒されたことは周りも見ている様子で、街の英雄に人々が殺到して話しかけたり写真を撮ろうと試みないのは、警察が規制線を張っているからだ。さっさと撤退した方が、面倒がないのは事実。


「あ、わたしは直接家に帰るわ。人前で変身解ける格好じゃないし」

「お姉さんどんな格好してるんですか。まさかまたバニーさん」

「そんなのじゃないから。スカート履いてないだけよ。それに早く寝たいしねー。剛。麻美に、今から帰るって連絡しておいて。あの子どうせまだうちにいるんでしょ?」

「あ、はい。わかりました」


 確かにスカート脱ごうとしている様子は剛も見たけど。そんなこと堂々と言っていいのかな。呆気に取られてる一同に手を振ってから、セイバーはひとり駆け出した。


「スカート履いてないってどういうことだろう。ううん、考えるのはやめよう。澁谷さん、家の前に病院に送ってもらえないでしょうか。車椅子をそっちに置いてきてるので」

「車椅子は、樋口さんが家まで持っていったそうよ」

「そうですかー。悠馬ともう一回顔合わせたかったんですけど」

「明日でもいいだろ」

「明日はわたし、義足の調整の予定が入っているから」

「あー……」


 遥は今も定期的に病院に行き、義足のトレーニングをしている。


 そろそろ、これで日常生活に出てもいいと言われる頃らしい。


 そんな会話をしながら、みんな電源車に乗っていく。


 戦いを見守っていた市民たちから、今日もありがとうとか声をかけられるのが聞こえた。



――――



 フィアイーターの出現をスマホの警報システムで知ってから、樋口に誰かから連絡が来るまでに少し時間がかかった。

 いつもは悠馬が真っ先に連絡して、遥の車椅子がどうとか、他の大人たちへの連絡の要請とかをしてくるのに、肝心の悠馬が動けない状況だからな。


 とにかく樋口は遥の車椅子を家まで送り届ける仕事をすることになった。当然、悠馬とも顔を合わせることになる。


 悠馬はベッドに寝転んで、ぼーっと天井を見上げていた。そんなことする子ではないと思うのだけど、他にやることもないのだろうな。


「普段、家ではどう時間を過ごしているの?」

「樋口さん……」

「呼び捨てでいいわ。前のあなたはそうしていた」

「そうか。家では、家事と勉強ばかりしていたな。姉ちゃんがそういうの苦手だから、俺がやらなきゃいけなくて。料理とかも」

「ええ。知ってるわ。下手なのよね」

「……手を抜いてるだけだ」

「けど最近は、あなたもそれなりに料理に手間をかけるようになったわ。遥に教えてもらいながらね」

「……またそれだ。俺のことなのに、俺が知らない俺について話している」

「怖い? それか、気味が悪い?」

「わからない。変な気分だ。なあ。姉ちゃんたちは今、戦ってるんだよな?」

「ええ。模布駅のモモちゃん人形とね」

「やっぱり現実感がない。遥たちが変身したのを目の前で見たっていうのに。こうやって、手放せないはずの車椅子をあっさり乗り捨てて走るなんて。……信じられない」

「仕方がないわ。ゆっくり思い出しなさい。わたしはもう行くわね」


 再び、ぼーっと天井を見つめるのに戻った悠馬をちらりと見てから、樋口は無人の車椅子を押して病室から出る。


 本当に、こういうのは似合わないな。急かすわけではないけれど、早く戻ってほしかった。



 ――――




「あー! 惜しい! もう少し! もう少しだったのに!」


 魔法の鏡で人間の世界を見ながら、キエラは悔しそうな声をあげて床に寝転んだ。ジタバタと手足を動かせば、両足と左手だけかかとや手の甲が床に当たってポコポコと音を立てる。右手だけは先がないからそれが出来ない。

 キエラは義足の訓練もしつつ、さっきは積極的にフィアイーターを作りに行った。模布市の人が集まる場所で、シンボルになる物をフィアイーターに変えてたくさんの恐怖を集めたけれど、少しだけ足りなかったらしい。


 メインコアに恐怖が満ちるまであと少し。その少しがじれったいらしい。


「あと一回だよ。頑張ろう」

「またコアを作らなきゃいけないのよ。面倒……というわけじゃないけど。なんかこう、手間なのよね」


 キエラはこういうの、本当に苦手だよね。目標まであと少しで届かないと、すごくやる気を無くす。もう一回、いつものことをすればいいだけなのに。

 元気を出させてあげないと。


「ほら。チョコレート食べて。それから、覆面男のことわかったよ。双里悠馬のこと。テレビに出てた」

「ほんと!? さすがねキエラ! 何者なの!?」

「高校生だよ。車椅子の彼女を支えてるらしいの」


 そういう内容でテレビに出てた。というか、メインは車椅子の子の方なのだけど。

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