表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
修復ギフト持ちの貴族の息子でしたが追放されました  作者: ヒコしろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/54

第36話 運命の追撃

季節は秋、タンカランダンジョンでの生活は概ね順調である。


カサールではそろそろ盗賊討伐作戦が始まっている筈なのでそろそろ帰っても

良い頃合いではあるが、マーチンの町ではグラーナを狙った大型魔物が襲来しているらしく、


『危ないですから街道へは湖を避けて山を迂回して下さい』


と、このダンジョンの村まで注意情報が出されている程なのだ。


まぁ、順調と言ってはいるが、未だにこのダンジョンを攻略出来ずに朝に潜り、夕方には戻るといったダンジョン生活で六階層までは行けたが、そこからの敵が急に手強くなり数匹倒せば僕もベルもクタクタで撤退する毎日であり、ここに来てから目覚ましい成長を見せたのは、ベルの料理の腕と、僕の錬金術師としての知識ぐらいである。


マーチンの町にて物々交換で手に入れた物は、バルザックなる錬金術師さんが研究していたゴーレムの資料であり、その研究資料によると僕が生まれたリント王国ではゴーレムの研究が進んでおり、このニルバ王国においては、少し遅れているのだそうだ。


背景には【ゴーレムマスター】のギフト持ちは珍しいながら同じぐらい両国に生まれるのであるが、ダンジョンなどで手に入るゴーレムコアだが、ゴーレムの特性でスライムと同じくコアが弱点である事から、そこを狙って倒す為にコアを無傷で回収出来る事が希であり、ゴーレムを上手に倒しても確率でダンジョンでは魔石プラスαのドロップ品がゴーレムコアとは限らず、ゴーレムのボディーの鉱物の可能性が含まれるので無傷なゴーレムコア自体がレアな物である事も影響する。


しかし、それよりもこの国でゴーレムが普及していないのには、無傷のゴーレムコアを覚醒状態になるまで魔力をすぐに満たせるゴーレムマスターがほとんど居ない事が大きい。


リント王国はヒト族が主流の国であり、魔力が多く有る者がよしとされる風潮から特に貴族は魔力が高い傾向にあり、そんな中からゴーレムマスターが出れば有り余る金で我が子のギフトが活きる様にゴーレムの研究が進むのは必然である。


そして、かたやニルバ王国は、獣人族の国とリント王国が遥か昔に戦争をしていた時代に両国から戦争に嫌気がさした人々が集まった国であり、魔力は極めて低いが身体能力が飛び抜けて高い獣人族とヒト族のハーフが主流な国家で、魔力を魔石から供給する魔道具の研究が盛んである。


しかし、今回の戦争においてリント王国側のゴーレムマスターが操る前進して壁となるだけの盾ゴーレムや石を投げるだけの投石ゴーレムの驚異に苦しめられ、マルダートの町を取り返す事すら叶わずに十年近く戦争を続けた事から、マーチンの町から魔道具技師として戦争に参加していた錬金術師のバルザックさんは亡くなられるまで魔道具によるゴーレム操作の研究を続けていたらしい事が手書きの日記がわりの資料から解ったのである。


物々交換により手に入れた器具の1つは、ゴーレムコアに魔石を使い魔力を満たし覚醒させる装置であり、これは魔道具全般に使われる魔石から魔力を取り出す回路を使い見事に完成しているみたいである。


次にゴーレムマスターがゴーレムに念話のような能力で指示を与える機能には、戦場などの指揮にも使われる通信魔道具を応用して、ゴーレムコアに伝わる魔力振動周期を研究し、何パターンかの簡単な指示ならば与えらるらしくその試作品と、その他はゴーレムが周辺の石や鉱石を取り込み体を作るプロセスまで独学で解明した資料は実に読みごたえがあった。


ゴーレムはコアに魔力を満たした状態から土属性の魔法が流れる物体にコアが触れるとその物体を取り込み人の形に近い形態になるそうで、この時に用意した鉱物の固さと量がそのままゴーレムの大きさや形状、それと頑丈さに繋がるのであるが、バルザックさんはゴーレムコアをセットし、ゴーレムを起動させると魔道具の受信機をコアの近くに配置出来る【ゴーレムハート】の設計図と、


『如何なる物でも人の形に配置した魔鉱鉄や魔銀であるミスリルを芯にすればゴーレムになるのでは…』


という仮説を立てた所で研究は終わっており、最後になった日記のページには、


【まだまだやりたい研究があるが、神は猶予を与えてくれない様だ…ワシも友の様に多くとは言わぬが弟子を育てておれば…この研究が埋もれて消えて行く事だけが悔やまれる】


と震えた文字でかかれており本の背表紙には、


【神よ、願わくば我が友エルバートにこの資料を届けたまへ】


と、書かれていたのであった。


『なんか気楽な物々交換で重い願いを背負い込んでしまったな…』


とは思ったのであるが、


『まぁ、お探しのエルバートさんもニルバ王国の錬金術師さんらしいし、エルバ師匠にでも聞けば解るでしょ…』


と結論づけて数秒、


「エルバートさんて、エルバ師匠か?!」


と驚いた僕だったのだが、マーチンに旅立つ前にエルバ師匠もマーチンの町を良く知っている風な口振りだった為に、


『あり得るな…』


と、見知らぬバルザックさんの願いは叶えられそうな事に安堵したのであった。


しかし、順調な日々が続くと、


『どうやら僕は前世で何かしらの罪を犯したのか?』


と疑いたくなる程に、必ず予想外の事が起こるのである。


なんとタンカランダンジョンの冒険者ギルドに、カサールの町が盗賊団に襲われて大変な被害が出たという情報が入ったのである。


どうやら盗賊討伐に向かう前に相手に情報が漏れたらしく、盗賊討伐作戦の為に他の町からの応援の騎士団が到着したタイミングで奇跡的に町を落とされることだけは避けられたが、あと一日か二日到着が遅れていればどうなっていたか分からない状態まで追い込まれていたらしのである。


まだ盗む物もなく新たに王都あたりで雇用した兵士が守る国境のマルダートの町は無視して、討伐作戦を指揮するカサール男爵様をピンポイントで狙い、ついでに金品まで奪おうと近隣の盗賊団が手を組み雪崩れ込んだそうなのであるが、流れてきた噂によると、町に盗賊団を引き入れたのはあの門兵達らしく、ここでも何かしらの因果が僕にまで繋がっているのを感じて、険しい顔になる僕は、この知らせを聞いて、


「お兄ちゃん…」


と、不安そうなベルに、


「大丈夫だよ、助っ人の騎士団が間に合ったって言ってたから…でも皆が心配だから帰ろうか」


と、自分も動揺している事を悟られないように落ち着きながら答え、大型魔物が襲来しているらしいマーチンの町を避け、乗り合い馬車を乗り継ぎ少し遠回りでカサールを目指したのであった。


天候に恵まれた事もあり僕とベルは10日あまりで到着したカサールの町は出発時とは別物となってしまっていた。


盗賊達に抗う為にスラムの方々まで力を合わせたが、盗賊達は町に火を放ち、町のあちこちで暴れ、ギルドの建物すら機能しない程であり、ギルド宿に居た冒険者達がなんとか食い止め、カサール男爵の騎士団と協力し盗賊達を押し返していたそうなのだが、力は拮抗しており、燃える町の消火にまで手が回らなかったらしく町は悲惨な有り様である。


しかし、建物に甚大な被害を出し、怪我人こそ大量に出て町にあるポーションを使いきったが、死者だけは出さなかったという事にカサール男爵様の意地を感じるのだが、男爵様は今回の作戦の失敗が部下の裏切りだった事が解り悔しさと情けなさで、僕に冗談で殺気を放っていた同一人物とは思えないぐらいに老け込み、自らも焼け落ちた家の撤去に参加していたのであった。


僕もベルもかける言葉が見つからないまま瓦礫の撤去に参加してはみたのであるが、ベルとしては親の仇との因縁が更に深まり、僕としてもあのクソ親父が戦争のキッカケや直接か間接的かは分からないが盗賊という者の資金源として十年以上も暗躍しなければ、ニルバ王国側の兵士の数も足りて、襲撃者である一部の盗賊達も力を付ける事がなかった可能性が高く、


『なんでだよ…』


と、申し訳ない気分に押し潰されそうになる…


『普通、物語では追放されたら徐々に楽しくなるものだろ…いつまで追撃してくるんだよ!』


と運命に文句を言いたいが、その運命とやらに直接文句を言う為の窓口を知らない僕は、唇を噛みしめながら炭となった家の瓦礫を片付ける事しか出来なかったのであった。



読んでいただき有り難うございます。


よろしけれはブックマークをポチりとして頂けたり〈評価〉や〈感想〉なんかをして頂けると嬉しいです。


頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ