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修復ギフト持ちの貴族の息子でしたが追放されました  作者: ヒコしろう


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第21話 それぞれの能力

二階層にて一時間もせずにスライムを20匹近く倒したのだが、確かに地上で20匹のスライムを狩るには広範囲に探し回るか、または魔物の死体等を放置して集めるしかなく、どれだけ効率良く狩れたとしても一時間以上は掛かるだろうが、手に入ったのはダンジョン産という事で少し魔力量多く大きめの粒魔石20粒である、


いくら大きめとはいえ所詮は粒魔石であり、一粒で大銅貨1枚ぐらいと思われるので、一時間の成果がホーンラビット1匹とどっこいどっこいならば、ホーンラビットの方が楽である。


しかし、ダンジョンにはダンジョンの良い所があり、解体の手間が無く、手がスライムの粘液で痒くなる心配もないのである。


倒した魔物はシュワッと泡の様に消えるとドロップ品の魔石だけが残される。


スライムならそれでも良いが、ホーンラビットなどならシュワッと消えたあと、魔石と追加で角などの素材のどれかになる為に地上より手に入るお金は少なくなってしまう。


しかし、それでも人々がダンジョンに潜るのはボス部屋で初回のみ必ず貰えるボーナス宝箱と、ボスも含め普通の魔物からも極希に出てくる宝箱を目指してチャレンジを繰り返すのであるが、このウエスのダンジョンでは駆け出し冒険者向けのちょっと良いナイフや回復ポーションが一般的な宝箱の中身で、かなり当たりなレアアイテムでは【祝福の腕輪】という名前は凄いが自分のギフトの熟練度がほんの少し上がり易くなるというアイテムや、【魔力回復の指輪】というほんの少し魔力の自然回復量が増える指輪というのがあるというのを上の冒険者ギルドの出張所のカウンターにて教えてもらえた。


レアアイテムの腕輪や指輪のどちらも今の錬金術師には作れない品物の為にそれなりに高値であり、魔法系のギフトを授かった貴族の子供の中でも魔力の少ない者には一発で一発以上の熟練度が上がったり、魔力の回復が早くなれば1日に練習出来る回数も増える為に是非物の品である。


しかし、そんなこのダンジョンのレアアイテムは、街中でも安全に魔法を連発出来る安全なギフトな上に、魔力はかなり有る方な僕には特に必要ないので、このダンジョンでの狙いは、僕とベルのレベルアップがメインであり、ボスクラスの魔物を倒そうと生息地に行けば数匹同時に現れる可能性もあるので、安全に決まった数の強めの敵と戦えるという利点のみ、


『まぁ、運が良ければ売れるレアアイテムやら、ボスのドロップ品の魔石だけは高値らしいからな…』


というオマケつきのダンジョンアタックであり、お金が欲しければウエス周辺の森で罠を使った狩りをした方が稼げるのである。


『そりゃあ、不人気だわ…このダンジョン…』


と思っていると、向こうの親子は休憩に入り、走り回っていたベルも、


「お兄ちゃん、もうスライムいないよ」


と残念そうにしている。


『狩り尽くしたか?』


と、思いながら辺りを確認してから僕が、


「あちらさんは次のスライムが出てくるまで六時間ほど休憩らしいが、どうする?」


と聞くとベルは、


「そんなに待てないから次に行こうよ」


と暴れ足りない様子でありる。


やはり獣人族の遺伝子のせいかハーフといえどベルは年上の僕よりも力が強く、スタミナもスピードも普通のヒト族の子供とは比べ物にならない様子であり、そして獣人族は戦闘系のギフトの中でも強化系のギフトを授かり易く、これで使い勝手が良さそうなギフトでも授かれば益々強いボクっ娘に成長しそうなのである。


しかし、ベルちゃん成長で唯一の不安は、


「う~ん…トイレするには物陰がないし…お兄ちゃんに隠れたらあっちから見えないかな?」


と、かなり思考と言動がヤンチャな事だけである。


僕は、


「下の階層にあの親子は来ないし、三階層は毒や酸の危ないスライムが居るらしいから四階層まで我慢できる?」 


と彼女に聞くとベルは、


「大丈夫、漏らしても替えがあるから」


と自分の鞄をポンと叩いているが…


『そういう問題ではない…』


そんな野生の少女を連れて下の階層に向かったのであるが、そこは二階層と全く違いジメジメとした湿地のエリアであった。


地面も歩き難そうで、水溜まりを迂回しないと進めないが、四階層へ続く道は目視出来る為に、


「確かに経路を見定めたらギルドのお兄さんが言ってたみたいに駆け抜けれるな…」


などと考えていると、ウチの野生っ娘が、


「やっぱり居た!上のスライムより匂いが強いからすぐ分かるよぉ、お兄ちゃん」


などと、アシッドだかポイズンだかよく判らないないが水溜まりに隠れていたスライムさんに喧嘩を吹っ掛けて、メイスでシバいていたのである。


僕は慌てて、


「ベル、ここは走り抜けよう!」


と言うが、戦闘民族と化したベルちゃんは、


「え~、コイツらだけでも…」


と、器用にギャン盾でアシッドの粘液攻撃をガードしメイスで魔石に変えてしまう。


「もう、ベルが強いのは分かったから…毒って怖いよ…」


と、僕が心配していると、ベルは、


「あぁ~!」


と、叫び声を上げたのである。


僕は焦りながら、


「どうした、毒を食らったか!?」


と彼女に駆け寄ると、ベルは袖口を僕に見せ、


「お兄ちゃんに直してもらった新しい方のシャツなのに…」


とギャンさんの店でリペアしたシャツがアシッドスライムがピュッと飛ばした酸の粘液により穴が空いていたのである。


「粘液が触れたのが服で良かったよ…」


と、安堵した僕であるが、裂けたのではなくて、その穴は溶かされてなくなっている為に試しにかけたリペアの魔法も効かず、この一件によりテンションが駄々下がりになったベルは、


「もう、次いこう…」


と、溶かされない様に大事なパパの帽子をソッと脱いで鞄にしまい、やっと下に行く気になってくれたのであった。


確かに三階層は面倒臭いエリアであり極力戦闘を避けて走り抜けようとしても酸の粘液で服には穴が空き、ポイズンスライムの全身毒の体当たりにより気をつけていてもアシッドの酸で軽くただれた傷口から僕は毒を食らい、サービスでもらった毒消しポーションを飲む羽目になり今は四階層にて二人でテンションが駄々下がり状態で、


「ベル…お兄ちゃん毒が抜けるまでちょっと休むから、トイレするならそこら辺でしちゃいな…あんまりウロウロしなければ石に化けているストーンスライムは襲って来ないから」


と毒消しポーションの効果を感じながら四階層入り口の階段に座っていたのであるが、ベルは相当袖口を溶かされたのがショックだったのか、


「いい…ウンコは引っ込んだ…」


といじけている。


『だから…レディーがウンコって…』


とは思うが、


「まぁ、波が去ったら仕方ないな…でも第二波が来たら我慢するのは大変になるから、したくなったら早めに言いなよ…」


と毒消しが効いてシャキッとした僕が言うとベルは、


「お兄ちゃん、ダンジョンってお外じゃないから野糞じゃないのかな?」


と素朴な疑問を聞いてくる。


毒とは違った目眩に軽く襲われた僕は、


「おい、もう頭の中がウンコする事で一杯なら先にしちゃいなさい」


とベルに言うと、彼女は、


「違うよ、気になっただけだモン」


と、恥ずかしがる。


『恥ずかしがるポイント…ズレてません?…ベルさん…』


とは思うが、乙女心は難しいらしい…なので、僕は、


「お外でチビッてもお漏らしだし、トイレでチビッてもお漏らしだろ…そんな感じだ…たぶん…」


と適当に彼女の疑問に即興で答えると、ベルは、


「そうか…お兄ちゃん、頭良い~」


と褒めてくれたのであるが、こんな事で褒められたくは無かったというのが本音である。


と、まぁそんな事が有りながら、静かな洞窟エリアにて、


「お兄ちゃん、たぶんアレってスライムだよ少しズズッて動いた音がした」


と嗅覚だけでなく、聴覚も鋭いベルがストーンスライムを感知してくれ、僕がツルハシでガツンと倒してから渡された地図の採掘ポイントにて鉄鉱石を回収するのを繰り返す。


「地図が貰えて良かったよ、微妙に分かれ道が多いから迷うところだった…」


と言いながら「ガチン、ガチン」と採掘ポイントの壁を叩き、崩した壁の土の中から鉄鉱石っぽい物をチョイスするのだが、ベルは、崩した土の中の石を手に取りクンカクンカしながら、


「鉄臭い」


と言った物は麻袋に放り込み、


「鉄臭くない」


と言ってはその辺にポイとしている。


「便利だな、獣人族さんは…」


とギフトなし状態でも凄いベルの能力を羨ましく思うのであった。



読んでいただき有り難うございます。


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