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修復ギフト持ちの貴族の息子でしたが追放されました  作者: ヒコしろう


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第17話 カサール到着

カサールの町の手前の道端にて野宿する事10日あまり、ベルの為に夜は僕が焚き火の番をしながら辺りを警戒するのだが、初めのうちはベルは怖い夢でも見たのかうなされたり、涙を流しながら眠る姿に何とも言えない気持ちになったが、ベルも僕という存在を頼りにしてくれ始めたのか、僕の近くで眠る様になってからは、うなされる事は少なくなっていた。


『本当に強い子だ…自分を逃がす時間を稼ぐ為に両親が命を落としたと理解した上で、起きている間は泣き言ひとつ漏らさずに一生懸命に…』


と考えてしまうと、不意にベルを見ているこっちの視界が滲んでしまうのが困り事なぐらいであり、彼女は野宿生活に文句の1つも漏らさずに、出会ったばかりの僕の迷惑にならない様にと頑張ってくれている。


僕は僕でこの10日間、


『金も何も無い追放者だが、少しでもまだ幼い彼女の心の支えになれたなら…』


などと思っていたのだが、2日間ほど雨に降られて大木の下でかなりの時間空を見上げて、


「雨…止まないね…」


などと特に何もする事なく過ごす日があったが、こんな何も無い時間を二人でのんびりと過ごせている事に気がついた瞬間に、


『ようやく仲間…というか家族のように落ち着ける関係になれたのかな?』


と、僕もベルが居てくれる事に安心感のようなモノを感じており、夜もうなされなくなった彼女を見ながら、


『ベルも安心して眠れているのなら嬉しいな…』


などと願っていたのである。


そんな結ばれたばかりの絆を確かめる様に過ごした、この野宿生活最終日の朝の狩りでは蟹ママがスッキリしたお腹で現れたので、どうやら彼女も無事に子蟹を川に解き放っており、あとは森に帰るだけの様子であった。


『チーム全員の目的は達成したな…』


ということで、この場所で出来る事は全て終了し、回収したホーンラビットの毛皮を罠に使っていたロープで纏めたり、朝どれの解体していないホーンラビット4匹を木のヤリに吊るしたり、魔石や角などを皮袋に詰め込んだりして、


「忘れ物…なし」

「焚き火の処理…ヨシ」


と僕が指差し確認をしていると、ベルが、


「ウンコも済ませたからいつでも行けるよ」


と元気に答える。


「これこれ、ベルさんや…レディーが…ウンコなどと…」


とやんわり注意すると、彼女は、


「えっ、お父さんは森で狩りのお手伝いをしてた時に【野糞したい】って言ったら、せめて【ウンコ】って言いなさいって…」


などと困り顔で言うのだが、


『そりゃあ、【野糞】はダメだよ…確かに…でも…』


と僕も説明に困り、


「せめて、トイレとかお花摘みとか…」


と、言うとベルちゃんは、


「外だからトイレは入ってないし、お花も摘んでないよ?」


と首を傾げていたのであった。


「ヨシ…面白い…そう来たか…」


などと、『これはじっくり向き合うか…』と彼女の無駄にヤンチャな男の子風のワードセンスの矯正に乗り出す事を誓った後に、僕とベルはカサールの町へと出発し、そして二人で歩く事半日、昼過ぎには追放後初となるギルドが有るほど大きな町であるカサールに到着する事が出来た。


町は立派な壁で守られたエリアとは別に壁の外にも難民達が暮らすスラムがあり、その周辺では案の定というか、日々の生活の為に薬草摘みや小型魔物の狩りが盛んな様子であり、ライバルが多く見える町周辺の草原エリアを眺めながら、


「手前で狩りをして正解だったな…」


と安堵する僕だったのであるが、僕の隣ではベルが、


「また、追い返されない?」


と少し心配そうにしているので、門の前に並ぶ入場手続き待ちの列に並びながら彼女に、


「大丈夫だよ、二人分の入場料の大銅貨十枚もあるから」


と僕は安心させる為に答えるが、ベルは、


「また、汚いガキはどっか行けって言われたら…」


と、僕は見ていないが前回一人で来た時に散々な扱いを受けたらしく順番が近づくにつれオドオドしはじめてしまう。


そして、どうやらその時に門兵だけでなく後ろに並んだ人達にも「早くしろ!」などと急かされたり、「何をしている!?」などと怒鳴られたのかベルには周りの全員が敵になった過去がある為にキツく僕にしがみついて、前方や後方までも何度もキョロキョロと確認しながら少し震えてしまっているのだ。


『親の最後の言葉を守って来たのに誰も手を差し伸べてくれなかったのだからトラウマにもなるわな…』


と理解した僕はベルに、


「手続きは僕に任せて…ベルは僕にくっついて居れば大丈夫だからね」


などと声をかけ続け、門兵さんが、


「はい次」


と呼ぶので僕は元気良く、


「はい、二人分でお願いします」


と、進み出ると門兵さんは、


「ギルド証など身分を証明するものが有れば提出を…ランクによって割引等が…」


とお決まりの台詞なのか無感情で呪文の様に唱えているので、


「冒険者ギルドに登録したくて来ましたので証明書ないです…あと、集落を盗賊に襲われて家から逃げて来た場合はどこに申し出ればよろしいでしょうか」


と、ダメ元で聞いてみたのだが、やはり門兵さんは、


「町の周辺ならば我々でも良いが、町から数日の集落であれば冒険者ギルドに調査依頼を出してくれ、その結果次第で代官様が騎士を向かわすだろうから…周辺の話じゃないなら後がつかえてるから…」


と、やる気の無い返事であった。


素っ気ない態度と、やはり動いてくれない門兵さんに嫌な記憶や失望が入り混じったのか僕の後ろからベルのすすり泣きまで聞こえてくる。


その声を聞いた瞬間に僕の中で何かが弾け、


「もしかすると東の戦場あと地からリント王国方面に抜ける街道から一本南の街道へと今回集落を襲った盗賊達が狩り場を変えた可能性があります。 商人の馬車が襲われたらこの子の様に親を亡くす子供が増えるんですよ!」


と、態度の悪い門兵に少し大きな声を出してしまったのである。


『目立たず真っ当に生きる』


と、悪目立ちして大変だった学生生活を教訓にしていたはずであるが、町に入る前から門兵を怒鳴ってしまい、あちらもイラっとしたのか、


「親が死んだ奴なんて、そこのスラムやこの国に五万と居る。 いちいち特別対応なんてしてられるか!」


と僕に詰め寄り、


「盗賊ならば冒険者に金を出して調査させて資料を領主か代官宛に提出するのが決まりだ! 文句は国にでも言ってくれや!!」


と睨んでくるので、僕はカウンターに大銅貨を十枚「バン」と支払い、


「そうさせて貰います。 ()()()()ありがとうございましたっ!」


と嫌みっぽく吐き捨てて町に入ろうとすると、門兵の野郎は、


「おう、ガキが調査費用を払えると良いな…まぁ、無理だろうがな…もし町で窃盗が有ったらスラムのやつより身分証も無いガキを真っ先に疑う事にするさ…はい、次…」


と、僕たちに脅しの台詞を放ち次の入場手続きを始めたのであった。


『キィィィ悔しい!』


とは思うが、僕の後ろにしがみついているベルがシクシクと泣いている事を思いだし、


「ベル、ごめんね…怖かったね」


と慌てる僕にベルは、


「ありがとう…ボクの為に…怒ってくれたんだよね…ありがとう…本当に…」


と、絞り出す様に言って再び僕にしがみついたのだった。


そして、そんな僕たちの後に入場して来た男性が、


「見てたよ。 ご両親は残念だったけど弟を庇いながら門兵とあれだけ言い合えるお兄ちゃんは、まぁ、なかなか居なぜ…良いお兄ちゃんだな…」


と、僕の影に隠れているベルに優しく声をかけた後に僕には、


「俺ら貧乏商人に調査依頼を出す余裕は無いが、お兄ちゃんの親を殺されても商人達や、その子供を心配してくれるっていう心意気が気に入った」


と言って握手を求め、


「俺はギャンだ。必要な物があればウチ店に来てくれ、安くするから」


と、僕とベルが兄弟とか色々と微妙な勘違いは有ったが、


【盗賊から逃げて来て何も持って居ない】


と、判断してくれたらしく生活雑貨の購入先として自分のお店を紹介してくれたのであった。


ギャンさんは、


「しかし、街道の盗賊かぁ…俺の商人仲間には集落を巡って商品を集めて来るついでに集落で商売する行商も居るからチョイと注意する様に声をかけておくが…金持ち商人の荷馬車か貴族の馬車でも襲わない限り、この間まで戦地だったこんな田舎じゃ盗賊を調査して領主に報告するヤツは少ないからなぁ…賞金首に出す賞金も田舎の貧乏お貴族様には厳しいし、戦争あとで減った騎士団を盗賊討伐に出すのも厳しいから…」


と言った後に、ギャンさんとやらは、


「おっと、町の往来でお貴族様の悪口なんて…」


と、一人で喋って、一人で反省した後に、


「じゃあ、待ってるからな…二人は冒険者ギルドに行くんだろ? 職員か誰かに【ギャンの店】って聞いたら解るから…」


と言って去ろうとするが、ギャンさんは何かを思い出したかのように、


「おっと、そうだ…お兄ちゃんの名前は??」


と聞くので、僕が、


「ジョンです」


と答えると、ギャンさんは、


「ジョン、ジョン…よし覚えた。 で、弟は?」


と、聞くと僕の後ろに隠れていたベルが、


「ボク…ベル…です…」


と少しギャンさんに心を開いたのか小さく答えると、


「おう、ベルだな。 よろしくなベル…後でお兄ちゃんと来てくれよ」


と言ってから、


「そいじゃあ、冒険者ギルドはこの道を真っ直ぐで、俺の店はあっちだから…」


と行ってしまったのであった。


『嵐のような人だったな…』


と、呆気にとられる僕の後ろでは何故かベルが楽しそうに、


「ふふっ…お兄ちゃんだって…」


などと呟いている。


僕はベルに、


「いや、僕は年上だしお兄ちゃんで良いんだけど、ベルは女の子なのにずっと弟って間違われてたんだよ…良いの?」 


と聞くと彼女は、


「うん、だってお父さんも男の子はあんまり攫われないから男の子みたいにしなさいって…でもボク、お兄ちゃんとか、お姉ちゃんがずっと欲しかったから…」


と、男の子扱いについては『どうでも良いですよぉ』みたいな感じであるが、僕を「お兄ちゃん」と呼べる事が嬉しいらしく、


『まぁ、普通に僕も色々説明が難しい人間だから、ややこしい説明が増えるより、簡単に説明が出来る【兄妹】の設定でも全く問題は無いのであるが…人攫いを恐れてベルが男の子のふりをしている為に【兄弟】と思われるのは、なんだか申し訳なくて微妙にハートに来ちゃうのだが…』


とは思うが、とりあえず当面は【お兄ちゃんと妹】であり、ベル本人としては両親の方針で【男の子】と見られても平気というスタンスで行く事に決まったのである。



読んでいただき有り難うございます。


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