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289話─幻影、揺らめく

 ワインセラーの奥へ移動したオボロは、愛刀を片手にかつての同志……ゴライアの紛い物に挑む。刃を煌めかせ、相手に肉薄する。


「受けてみよ、我が太刀を! 九頭流剣技、壱ノ型……菊一文字斬り!」


「ブロロロ、小手調べか。効かぬわ、そんな一撃などこのオレにはな! ディスクガイズ・カッター!」


「やはり、その装甲は簡単に斬れぬか。まあ、それくらい予想はしていた! 弐ノ型、天風廻転独楽!」


 関節を狙えば腕を斬り落とせるか……と刃を躍らせるも、頑強さならカンパニー最強格のゴライアもどきには通じない。


 あっさりと弾き返されたうえ、反撃までされてしまった。バックステップで円盤を避け、もう一度攻撃を行うオボロ。


(さて、大見得を切ったはいいがどう攻略するか……。以前のような手はゴライアには通じぬ、さて……)


 かつて、チェスナイツ・ポーンとして復活したカストルと戦った時は唯一生身だった頭部にトドメの一撃を叩き込み勝利出来た。


 だが、ゴライアもどきは脳以外のあらゆる臓器と骨に筋肉、皮膚に至るまで全てをキカイパーツに換装している。


 カストルに対して出来た『弱点となる生身の部分を攻める』という手法は使えない。地道に攻撃を積み重ね、ダメージを蓄積させて勝つしかないのだ。


「ブロロロ、考え込んでいるな。なら……少し驚かせてやるとしようか!」


「なっ!? あれは……妖刀『霞双月』!? 何故あの者が!?」


「ブロロロ、先ほども話した通りオレは進化したロストメモリーズ。オレ自身の記憶の中にある同志の力や武器を再現することなど、造作もないのだ」


 攻略法を見出そうとしているオボロに対し、ゴライアもどきは驚きの行動に出る。かつての同胞、ビショップ・マグメイが使っていた二振りの刀を呼び出したのだ。


「だが、刀を呼び出したところでどうするつもりだ? お前は剣術に疎かったはず。流石の妖刀も宝の持ち腐れになるぞ」


「バカめ、オレ自身が使うとは一言も言っておらぬわ。この刀はこやつに使わせるのだ!」


 オボロの問いに答えながら、ゴライアもどきは腹部を開き銀色をしたもやのようなものを吹き出させる。その正体は、大量のナノマシン。


 ナノマシンを組み合わせ、ゴライアもどきはマグメイそっくりのヒトガタを作り出し妖刀を持たせる。それを見て、オボロは冷や汗を流す。


 相手はクイーン・テンプテーションの能力までも己の物にしているのだ。自分の認識がいかに甘かったかを嫌というほど思い知らされる。


「……これは驚いた。それがしはお前を甘く見過ぎていたようた。ここまで応用を利かせられるとは思わなんだぞ」


「ブロロロ、今更気付いたか? だが、もう遅い。さあ、死ぬ覚悟は」


「だが、おかげで作戦を閃くことが出来た。それがしの策……お見せしよう」


 だが、それと同時にオボロは突破口になり得るかもしれない策を思い付いた。もったいぶった口調でそう言い放った後……。


「秘策……三十六計逃げるにしかず! ハッ!」


「なにっ!? お前……うぬっ、逃がすものか!」


 近くの壁に斬撃の衝撃波を飛ばし、穴を開けてさらに奥にある貯蔵庫へと逃げ込む。まさかの逃げの一手に、ゴライアもどきは意表を突かれる。


 が、すぐに我に返ってナノドールと共にオボロを追いかける。穴を押し広げ、無理矢理先に進むと……。


「来たか、これでも食らえ!」


「ぬうっ、次はタル攻撃か。ブロロロ、小癪な真似をしおる。武士の誇りとやらはどうした!」


 先んじて迎撃準備をしていたオボロが、積まれていたタルをゴライアもどきたちへ投げ付ける。空っぽのタルを粉砕しつつ、相手の元に向かうゴライアもどきたち。


(いいぞ、いい具合に時間を稼げている。ゴライア、確かにお前の能力は厄介極まりない。だが……)


「ブロロロ、ようやく追い詰めたぞ。さあ、覚悟はいい……な……? ぐっ、不味い……これは!」


「やはりな、それがしの閃きは正しかった。ゴライアよ、お前……魔力が底をついただろう。あれだけ能力を大盤振る舞いし、かつ維持するとなれば……大量に魔力を消耗するからな」


 十数分後、貯蔵されていたタルが底をついた。いよいよオボロを仕留めようと、ゴライアもどきが一歩踏み出した次の瞬間。


 突然ナノドールが動きを止め、溶けるように崩れ落ちてしまった。ゴライアもどき自身も、息苦しさを感じよろめく。


「ブロ……」


「進化したはいいが、まだ自分の限界を把握出来ていなかったようだな。敵を知り、己を知れば百戦危うからずと言うが……お前は自分を知らな過ぎた。それが敗因だ」


「舐めたことを! 確かに魔力は尽きた、だが! オレのフィジカルがあればお前を戦闘不能に追い込むのは容易いことだ!」


 ゴライアもどきは、確かに進化し厄介な能力を身に付けた。だが、複数の能力を発現させて組み合わせるほど、消費する魔力は跳ね上がっていく。


 当然、キャパシティオーバーすればせっかくの能力も意味がない。そのことを全く考慮していなかったことが、痛恨のミスと言えた。


 だが、それはあくまで能力を用いて圧勝することが出来なくなっただけ。未だオボロ側には、ゴライアもどきの装甲を一撃で破る策は無い。


「結構、厄介な能力を封じられただけでもこちらの勝率が上がる。我が剣で、真正面からお前の装甲を破ればいいだけだ!」


「ブロロロ、やれるものならやってみろ! ディスク……」


「そこまでです! マナリボルブ:ストライク!」


 いざ、真正面からの直接対決が始まる……と思われたその時、オボロの背後から声が響く。そして、魔力の弾丸がオボロの横をすり抜け突き進む。


「なっ……ぐはっ!」


「その声……フィル殿!?」


「なんとか、間に合いましたね。オボロ、あなたとアンネ様で……最後です。ロストメモリーズと戦っているのは……」


 弾丸はゴライアもどきの胴体を貫き、著しく耐久性を落としてみせた。オボロが振り向くと、そこにはフィルの幻影がいた……が、様子がおかしい。


「フィル殿、どうなされた? 身体が透けて……」


「ごめんなさい、本体に……魔力を叩き込まれちゃいまして。もう、存在を維持出来そうに……ないんです」


「ブロロ……いい気味だ。散々オレたちを妨害したのだ、消されるに決まっている」


 アーマーはボロボロになり、幻影自身もどんどん透明になってきている。大本の存在である守護者が、ついに邪魔者を消しにかかったのだ。


 膝を着いたゴライアもどきは、いい気味だとせせら笑う。だが、思っている以上に傷が深くそれ以上の動きをする余裕はないようだ。


「もう一人分幻影を増やして、手分けをしてみんなを助けていたのですが……。どうやら、これ以上は無理みたいです」


「二手に別れる前に、アンネローゼ殿から少しだけ話は聞いた。……ありがとう、フィル殿。ここからはそれがしたちに任せてくれ。必ず、貴殿を救う」


「すみません、オボロ。今がチャンスです、ゴライアが魔力を蓄積して傷を治す前に……トドメを」


「ブロッ、そうはいか……うぐっ!」


「ああ、ここで決める! 九頭流剣技、伍ノ型! 駿閃・破穿突!」


 回復する暇など与えないとばかりに、オボロは立ち上がろうとするゴライアもどきへ高速の突きを放つ。フィルの幻影が与えた傷へ、寸分違わず。


「ぐ……がはっ! ブロロ……足下を掬われたか。だが……もう一人はオレのような無様は晒さぬ。あの女はここで……脱落だ……」


「ならぬさ。アンネローゼ殿は強い。それがしたちとは意思の強さが倍以上に違う。必ず勝つ、愛する者を取り戻すためにも」


 崩れ落ちたゴライアもどきは、オボロの言葉に反論する間も無く息絶えた。刀を鞘に納め、オボロは消えていくフィルの幻影の元に戻ろうとする。


 せめて、最後に少しでも言葉を交わしておきたかったのだが……。幻影自身に拒否された。それよりも、アンネローゼを助けてほしいと。


「今、アンネ様は一人で戦っています! 僕は気にしないでください、だから……あの人を助けて!」


「フィル殿……分かった、必ずアンネローゼ殿と共に勝つゆえしばし待たれよ!」


 来た道を引き返し、ソロンもどきと交戦しているアンネローゼの元に向かうオボロ。彼の世界を見ながら、フィルの幻影は満足そうに微笑む。


「……頼みましたよ。オボロ」


 そう呟いた後、幻影は泡となって消えた。そうして……後には、ゴライアもどきの遺骸だけが残ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] アンネは果たして無事か・・・
[一言] 機能面と能力面はパワーアップした様だけど(ʘᗩʘ’) 頭の中身は今一つだったようだな(⌐■-■)
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