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287話─恋人たちの再会

 レジェがフィルの幻影の力を借り、ルテリもどきを打ち倒した頃。アンネローゼは一人、闇が渦巻く部屋の中を漂っていた。


「もー、なんなのあの手の群れは。多分、ミカボシ的な何かなんだろうけど……ホント、変なとこに引きずり込んでくれちゃって! 腹が立つわー」


 アンネローゼは翼を広げ、闇の中を飛行しながら出口を探す。だが、どれだけ移動しても果てへと到達することはなかった。


 どこかに出口があるはずだと考え、速度を上げて突き進むも一向に景色に変化がない。そのうち、ここには出口などないのではないか……そんな不安に駆られるアンネローゼ。


「まさかとは思うけど、一生ここにいなきゃいけないなんてことは……。いやいやいや、流石にそれはないわよね。きっとどこかに出口が……ん? なんかみっけ!」


 しばらくして、アンネローゼは闇の中に何かが浮かんでいるのを見つけた。もしかしたら、出口に繋がるものかもしれない。


 そう考え、喜び勇んで近寄るが……。直後、彼女は前方に見えた『ソレ』の正体を知りヒッと息を呑む。そこにあったのは、干からびたミイラだったのだ。


「な、なにこれ……。一体何者なの? このミイラ。嫌ね、こんなの見つけちゃ」


「知りたい、か……女。俺の正体が」


「ひええぇっ!? い、生きてるぅぅぅぅぅ!?」


 縁起でもないものを見た、と嫌そうな顔をしつつミイラから離れようとするアンネローゼ。その時、死んでいるはずのミイラが喋り出した。


 仰天しているアンネローゼの方へと顔を向け、干からびた男は話し出す。自分は、この城に鎮座する守護者を倒しミカボシの力を奪おうとやって来たウォーカーの一族だと。


「アンタがウォーカーの一族ぅ? フン、嘘ついてもダメよ。あのクソッタレどもはフィルくんと他三人以外全部根絶されたんだから」


「ククク、お前は何も知らないのだな。エイヴィアスをはじめとする、役に立たぬ旧一族は確かに根絶やしにされた。だが……俺は()()()()ウォーカーの一族の一人。いわゆる新世代というやつだ」


「新世代……? ふぅん、前にリオって魔神が言ってたアンタらの一族の創造主がまた作ったの。クソッタレな役立たずを」


 相手の正体を知った瞬間、アンネローゼはつっけんどんな態度を取る。宿敵が相手なら友好的に振る舞ってやる必要はないと、不機嫌さを隠しもしない。


 さっさとこの場を離れ、出口捜索を再開しよう……とするが、相手が手を伸ばし腕を掴まれてしまう。ミイラのはずなのに、力が強く振りほどけない。


「まあ待て。俺もお前も時間は無限に等しいほどにあるのだ。少し暇潰しに付き合え、そうすればここを出る方法を教えてやらないこともない」


「へーえ、そう。ここを出る方法を知ってるなら、なんでアンタは脱出してないんでしょうね? 嘘つくのもいい加減にしなさいよ」


「嘘など言っていない。単純に、俺たちウォーカーの一族ではここから出られぬというだけのこと。あの者……守護者に生きた『電池』として飼われているせいでな」


「……どういうこと? それ」


「どうもこうも、そのままの意味よ。ミカボシの力を奪うべくこの城を襲った戦士たちは、城の外で殺されるか中に引きずり込まれるのがお決まりのパターンだ」


 最初は聞くつもりのなかったアンネローゼだが、気になるワードに興味をそそられる。何故守護者……フィルが一族の戦士を生かしておくのか。


 目の前のミイラ以外にも戦士がどこかにいるのか、そして……ここから脱出する方法について聞いてから探索を再開してもいいだろうと考え直した。


「守護者は無限の魔力を持つが、それはそれとして予備の魔力電池を欲した。イレギュラーが起きて、魔力の供給が止まればこの城は消え去るからな」


「なるほど、それでアンタらを使って予備の魔力を賄ってるわけね」


「そうだ。この城は、ウォーカーの力を持つ者を逃がさぬよう特殊な結界が張り巡らされている。そのせいで我々は脱出出来ぬのだ。実に腹立たしい!」


「ハッ、アンタらの自業自得のクセに何言ってるんだか。で、どうやったらここを出られるわけ?」


「ククク、簡単なことよ。……貴様がここで死ねばいいのだ!」


 アンネローゼが問うと、ミイラ男は突然身体を起こし掴み掛かってきた。戦乙女の首を絞めながら、ニヤリと気味の悪い笑み浮かべる。


「待っていたぞ……俺は、いや『俺たち』は! お前のような無知な者が罠にかかるのをずっと!」


「ぐ、アンタ……まさか、ベルティレムに巣食ってた奴らみたいに……複数の存在が一纏めになってるのね!」


「そいつが誰かは知らぬがその通りよ。我らは肉体を捨て、一つに寄り集まることで守護者による魔力の搾取から耐えてきた。貴様を殺した後、我らの力を移してやろう。そうすれば、俺たちはここから……!?」


「いけませんね、そんなことをしては。やはり、お前たちの自我は壊しておくべきでしたね……これは僕の失策です」


 そこまで言ったところで、男の動きと言葉が止まる。いつの間にか、背後から心臓に剣が突き立てられていたのだ。


 城を回り、かつての仲間たちを助けようとしていたフィルの幻影によって。ウォーカーの一族の集合体が消滅していく中、アンネローゼは目に涙を浮かべる。


「うそ……フィルくん!? ……にしては、ちょっと小さいわね。でもそんなのはどうでもいいわ! よかつた……貴方にもう一度会えて……」


「ごめんなさい、アンネ様。まさかあいつらがこんなことをするなんて。無力化すれば大丈夫だと思っていましたが、やっぱり油断はダメですね」


 フィルの幻影の胸に飛び込み、もう二度と離さないとばかりに強く抱き締めるアンネローゼ。そんな彼女に、幻影はいくつかのことを告げた。


 自分が本物ではないこと、オリジナルは心の奥深くでは助けを待っていること。そして、かつての仲間をサポートするため城を巡っていることを。


「そう……なんだ、やっぱりフィルくんも帰りたいって思ってるんじゃない。安心したわ、ついでにやる気もモリモリ出てきたわよ!」


「ありがとう、そしてごめんなさい。アンネ様たちの手を煩わせ……!」


 アンネローゼは申し訳なさそうに謝るフィルの唇に、己のソレを重ね合わせ強引に黙らせる。十数秒ほど経った後、ようやく唇が離れた。


「そうね、私は怒ってるわ。いや、私だけじゃない。イレーナもオボロもジェディンも、レジェも博士も魔女たちやローグも。みーんな貴方のことを心配してたんだから」


「……はい。そのことは、よく分かってます。本当にごめんなさい」


「だーめ、ちゃんと罰を受けてもらうから。無事救出したら、たっぷりイチャイチャさせてもらうからね。その後で……結婚しましょう、フィルくん。もう二度と離れないように、愛の誓いを交わすの」


 うつむきしゅんとしているフィルの幻影に、アンネローゼは優しく告げる。彼女はダンテの報告を聞いてからずっと考えていた。


 フィルを取り戻し、本当のハッピーエンドを迎えたら……愛する彼と結婚しようと。式を挙げ、共に永遠の愛を誓うのだと。


「フィルくんは嫌? 私と結婚するの」


「そんなことありません! 僕の本体も、きっと……全てを取り戻せば大喜びするはずです」


「ん? どういうこと? 今のフィルくんに何が起きてるわけ?」


 アンネローゼの宣言に驚いていた幻影は、恋人の言葉にそう返す。そして、今現在本当のフィルが置かれている状況を伝える。


「僕の本体は今、全ての記憶とフィル・アルバラーズとしての自我をほぼ全て失った状態になっています。守護者として、双子大地を守るために不要なものを捨てたんです」


「そんな! 元に戻すことって出来ないの?」


「……出来るはずです。アンネ様ならきっと。僕が忘れ去ってしまった、輝かしい思い出を……思い出させてあげてください。そうすれば、きっと守護者からフィルに戻れるはず」


 そう伝えた後、幻影はアンネローゼの手を取って闇の中を進んでいく。恋人に導かれるままに前へ向かっていくと、扉が浮かんでいた。


「見えました、あれに入ればここから出られます。……アンネ様、どうか……全てを忘れてしまった守護者を助けてあげてください」


「ええ、言われるまでもないわ! そのためにここに来たんだもの、だから不安になる必要はないの。待ってて、すぐに貴方を助けるから!」


 扉を開いた後、フィルの幻影はそう口にする。アンネローゼは力強く答えた後、扉の向こうに見える廊下へ身を躍らせた。


 扉を閉めた後、フィルの幻影は微笑みを浮かべ……そのまま消えていった。ロストメモリーズと戦っている、他の仲間たちを救うために。

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― 新着の感想 ―
[一言] カチコミじゃあ!! 恋路の邪魔する奴は蹴散らすんじゃあ!!!
[一言] 今までの流れ的に、いよいよクライマックスか・・・頼むアンネローゼ、孤独なヒーローを愛の力で救ってくれ・・・
[一言] ゴキ並みに増えるはゴキ並みの生命力が取り柄の新世代ウォーカーか(ʘᗩʘ’) そんな奴の死体が足元にあるのに熱烈な告白(予行練習)をするとは(٥↼_↼)
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