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286話─『魔』を戴く者たち

「大口叩くなら、こっちの切り札で叩き潰してあげないとね。せーの……ビーストソウル・リリース!」


「お~、ニセモンでも変身出来るんだ~。マジおどろき~」


 さらに十数分が経過し、単なる打ち合いでは決着がつかないと考えたルテリもどき。彼女は一気にケリを付けるべく、魔神の力を解き放つ。


 かつてフィルとイレーナを苦しめた、刃の翼を持つ巨大なオウムの姿になった。オリジナルではないためか、体色が白になっていたが。


「ウチ、本気出した魔神と戦ったことないんよねぇ~。あいつらおっかなくてマジやばたんピーナッツだから、モクゲキジョーホー届いたら逃げてたからさ~」


「ふ~ん、ならここで捻り潰してあげるよ! ヴォーパルウッドラッシュ!」


「なら~、こうするし! ダイヤモンド・シェル・キューブ!」


 かつてフィルたちに放った大技を使い、いきなりレジェを仕留めようとするルテリもどき。武器庫の床、壁、天井……あらゆる場所から尖った木の杭が飛び出してくる。


 その全てをかわしきることさ不可能だと悟り、レジェは防御することを選ぶ。以前ゴライアとの戦いで使ったものの上位版の技を使い、四層のキューブ内に避難する。


「ふん、なにさ。そんな箱の中に逃げたってどうにもならないよ。それに、ダイヤモンドって案外脆いもんなんだって知ってる?」


「べ~だ、ウチのバチクソかーいー宝石ちゃんにはそんなの関係ないんです~。そ~やって舐めてると、後で大恥かくもんね!」


 レジェを守るダイヤモンドのキューブに、無数の杭が叩き付けられる。ルテリもどきの言った通り、一番外側にある第一層がヒビ割れ砕けた。


 そのまま二層目も……と、さらに攻勢を強めようとしたその時。役目を果たさなくなった一層目のキューブが一番奥に転移し、二層目が表に現れる。


 引っ込んだキューブが凄まじい速度で再生し、数秒程度で完全に修復された。それを見て、ルテリもどきは目を丸くして驚く。


「はあ!? なーにそれ、超再生能力持ちとかズルくない!?」


「それはそっちだって同じっしょ~? 胴体消し飛んでも死なないとかやばたんピーナッツだし~」


「むぐぐ、そんな無茶苦茶やれるのお父様くらいしかいないっつの! にしても、まずいなー。私の奥義でアレを崩すってなると、どれだけ魔力がいるかな……」


 お互いの持つ再生能力への文句を口にしつつ、ルテリもどきは思考を重ねる。オリジナルの彼女なら、まだ奥義はいくらでも使えた。


 だが、彼女はフィルの記憶から生み出されたまがい物。実際にフィルが見て、聞いて、体験したものしか再現出来ない。


 すなわち、これ以上の手札をルテリもどきは持っていないのだ。ゆえにやれることは一つ、このまま押し切るのみ。


「こうなりゃフルパワーだ! その箱ごと押し潰してやるー!」


「やれるもんならやってみろ~! 魔力だけならウチも負けないもんね~!」


 木の杭を増やし、さらに一つ一つの鋭さと強度を高めることで四層のキューブ全ての貫通を狙うルテリもどき。


 レジェの方もキューブを砕かれないよう、魔力を込めて強度と再生速度を向上させる。お互い全力を込めての、意地と意地のぶつけ合いだ。


「むむむ……生意気! たかが闇の眷属のクセに、私の攻撃を凌ぎ続けるなんてむかつく!」


「悪いんだけど~、ウチこんなとこでやられちゃうわけにいかないんよね~。フィルちん助けてさ~、みんなで帰らなきゃだから~」


「フン、そんなのは無理だね。攻撃は防ぎ続けられたとして、逆転するなんて無理でしょ? 私がこうやって攻撃してる間はさぁ!」


 堂々と言い放つレジェに対し、ルテリもどきはそう答え叫ぶ。確かに、キューブは無数の杭による猛攻に耐えその役目を果たしている。


 だが、絶対的な防御力を誇る代償にキューブ内にいる限りレジェからの攻撃は不可能。ルテリもどきを倒すには外に出なければならないが、今出れば確実に仕留められてしまうだろう。


「む~、人が気にしてること言ってくれちゃって~。でも、確かにそ~なんよねぇ。いや~、参ったねえこりゃ」


「ふふふ、いつまでも魔力を注げるわけがないし。そっちがガス欠した瞬間、一気にトドメを」


「食らえ! V:ストラッシュ!」


「え……あぐっ!」


「ウッソ!? フィルちんがもう一人~!?」


 攻め手に欠ける現状をどう打開するレジェが考えようとした、その時。壁をすり抜けて現れた幻影のフィルが、ルテリもどきの背中を斬り付けたのだ。


 シュヴァルカイザーの姿をした幻影は、不意討ちによってルテリもどきの攻撃を中断させた。そうして出来た隙を突けと、レジェに向かって叫ぶ。


「今です、レジェさん! 反撃を!」


「ハッ! あ、ありがとフィルちん! ブースターの冷却……終わり! そんじゃ~、逆転しちゃお~!」


「ぐっ、しまった……! このっ、離れろ!」


「離れませんよ、限界ギリギリまで邪魔してやりますから!」


 ブースターの冷却が完了したのを確認した後、レジェは得物を構える。ルテリもどきは攻撃を再開しようとするが、フィルの幻影が背中に剣を突き立ててくるせいでそうもいかない。


 全身をよじり、翼を羽ばたかせフィルの幻影を振り落とそうとする。だが、幻影も負けじと剣の柄にしがみつき離れない。


「よ~し、鬼デコ斧ちゃー魔力じゅうて~ん! 食らえ~、ラグジュラリアット・ボンバー!」


「やばっ、こっち来た! 逃げ……」


「させません! マナリボルブ:ストライク!」


「げっ、翼がやられた! まずいまずいまずい、このままじゃ……」


 そうしている間にレジェの準備が完了し、たっぷりと魔力を補充しアクセル全開になったブースターを使い突撃していく。


 こうなれば、幻影を乗せたまま回避するしかないとルテリもどきは翼を広げる。その瞬間、フィルの幻影は左手を離し指先から魔力の弾丸を放った。


 高い貫通能力を与えられた弾丸は容易にルテリもどきの翼を貫き、飛翔を阻む。これでもう、逃げるすべは完全に断たれた。


「チェストおおおおおおお!!!」


「よっ……はあっ!」


「うぐっああああ!! ちくしょー……前は大地の民に負けて……今回は闇の眷属に……負け……」


 そこへレジェが突撃し、斧の一撃でルテリもどきの首を刈り取った。その勢いのまま全身し、相手の背後に着地する。


 レジェが通り過ぎる直前、フィルの幻影は剣の上に倒立することで激突を免れる。首共々両断された剣と共に、床に降り立つ。


「フィ~ルち~ん! ウチらが助けるまでもな……あり? な~んかちっさくなってな~い?」


「ええ、僕はあくまで本体の心から生まれた幻ですから。里を追われた頃の姿を模して、こうやって助けに来てくれたみんなのお手伝いをしてるんです」


 首を失ったルテリもどきの巨大が倒れた後、レジェとフィルの幻影はそんな話をする。てっきり、本人が心変わりして帰ってきたと思っていたレジェは肩を落としてしまう。


「そっか~、偽物か~。でも、助けてくれてありあり~」


「ふふ、どういたしまして。それじゃあ、僕は次に」


「待ちなよ……君、こんな真似して……守護者が見逃すと思ってるわけ?」


「ひぇっ! 生首が喋ったぁぁぁぁぁ!!!」


 ジェディンに続き、レジェの手助けを終え去ろうとするフィルの幻影。その時、床に転がっていたルテリもどきの首が話し出す。


 ゴロンと転がって向きを変え、レジェたちの方へと顔を向ける。控えめに言って、トラウマになりかねない恐怖映像だった。


「思っていませんよ。すでに、僕を消し去るための刺客を放っているのは察知してます。だからこうして、あちこち逃げ回りながらみんなを助けてるんですからね」


「そ。分かってんならいいさ。……守護者もさ、不器用なもんだよね。私たちを造っておきながら、あんたのような存在も生み出しちゃう。放っておいてほしいのか、助けてほしいのか……どっちかにすればいいのに」


「そ~は言うけどさ。こうしてフィルちんの幻影が来たってことは、ウチらのとこに帰りたいって思ってるんしょ? 心の中で。なら、ちゃんと連れ帰ってあげなきゃ。ひとりぼっちはさびし~からさ」


 一人愚痴るルテリもどきに、レジェはそう呟く。彼女もまた、フィルやアンネローゼに出会う前は友も無く孤立した日々を送っていた。


 だが、二人と出会いカンパニーから離反し……死と蘇生を経て、かけがえのない仲間を手に入れたのだ。


「……そう。じゃあ、行きなよ。流石にオリジナルじゃないと……こっからの再生は無理だから、さ。お役御免ってわけ……だ、ね……」


「……消滅しちゃった。じゃ、先に行こフィルち……あれ!? いない!?」


 ルテリもどきの消滅を見届けた後、レジェは横を向いて隣に立っていたフィルの幻影に声をかける。だが、すでに彼は姿を消していた。


 城の中でロストメモリーズと戦っている、他の仲間を助けるために。やれやれとかぶりを振った後、レジェは歩き出す。友を取り戻すために。

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― 新着の感想 ―
[一言] 所詮ただの記憶体でしかないけど(ʘᗩʘ’) こうも顔見知りらしく喋る奴はやり辛く、倒しても何かスッキリしない物があるな(⌐■-■)
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