277話─テルフェもどきと三人の魔女
「……レジスタンスの魔女たち、か。まずいな、奴らに関してはほとんど知識が無い。厳しい戦いになるな……」
「何をブツブツ言っている? 来ないなら……私から行かせてもらう! トワイア、シゼル、連携攻撃だ!」
「はーい! 任せてー!」
ジュディたちの要請を受け、参戦した三人の魔女たち。彼女らを見たテルフェもどきは、そう口にし嫌そうな顔をする。
シゼルはともかく、他の二人はフィルとの付き合いがほぼ無くどのような戦術を使うのか全く分かっていない。
付き合いのあるシゼルも、共闘した回数は片手の指で足りる数だけ。ゆえに、ロストメモリーズの天敵とも言える者たちなのだ。
「他にも敵が来てないとも限らないから、イレーナちゃんたちは総裁の元に! ここは私たちが受け持つから、頼んだわよ!」
「ああ、分かった。俺たちより、あなたたちの方が有利に立ち回れそうだしな。行くぞ、イレーナ」
「っす! みんな、気を付けてくださいっす! ジュディ、サラ、行こ!」
「おう!」
「はい!」
ならば、ここはフィルに戦法を知り尽くされている自分たちよりシゼルらが適任。そう判断したジェディンは、仲間と共にメイナードの元へ向かう。
テルフェもどきの他にも、ゴッドランド・キーを奪おうとする敵が来ていないとも限らない。ゆえに、今鍵が入っていると思われる箱を持っているメイナードを守らねばならないのだ。
「待ちなさい、逃がし……むっ!」
「追いたかったら私たちを倒してからにしろ。ちょうどいい、偽物とはいえ相手は月輪七栄冠。あの戦争で溜め込んだフラストレーションを発散させてもらう!」
ジェディンたちを追おうとするテルフェもどきに向かって、エスタールが四本のクナイを投げる。全て潰してやろうと、テルフェもどきは重圧魔法を使うが……。
「おーっと、やらせませーん。それっ、まーがれー」
「なにっ!? クナイの動きが……むうっ!」
「あれあれ、知らないのー? 僕、念動力魔法使えるってこと」
「あの様子だと、どうやら知らないようね。もし知ってるなら、真っ先に君を潰しにかかるもの」
「ということは、こちらは好きなだけカードを切れるというわけだ。フッ、楽しみだな」
トワイアの念動力により、ナイフの軌道が大きく変わったことで圧滅魔法の範囲を逃れる。そのまま相手の四肢の付け根を貫き、手足をもぎ取った。
驚いて動きが鈍った隙を突いたとはいえ、いいように翻弄出来ることに気付きエスタールは嗜虐的な笑みを浮かべる。かなりのサディストなのだ。
「愚かな。未知の相手も学べば既知の存在になる。お前たちの攻撃など」
「うるさいなーもー。あっ、そうだ。リズムゲームやろうよ、お前太鼓ね!」
「なにを……うおっ!?」
手足を再構築しつつ、不敵な笑みを見せるテルフェもどき。そんな彼女の言葉を遮り、トワイアは自慢の魔法を発動する。
いくつかの瓦礫を持ち上げ、組み合わせて大きなバチを二本作り出す。それらを使い、テルフェもどきをバチクソにぶっ叩きはじめた。
「えいっ! えいっ! オリジナルのやってたこと思い出したら、なんかムカついてきちゃったからお仕置きしてやる!」
「……怖いわね、彼。無邪気さと残酷さが表裏一体だってこと、よーく分からされるわ」
「だな。……ひょっとすると、私以上のサディストになれる素質があるな。トワイアは」
念動力魔法をフルに使い、テルフェもどきをバチで殴りまくるトワイア。彼は以前から、テルフェ(オリジナル)の悪行に憤っていた。
いつか鉄鎚を下してやろうと思っていたが、自身の役職のためその機会が巡ってこず……とうとうテルフェがアンネローゼたちに討たれてしまった。
もやもやした気分を抱えながらここまで生き延びていた少年の前に、偽物とはいえやって来てしまったテルフェの末路は最初から決まっていたのだ。
「うぐっ、おっ、ぶばっ! やめろ、私は楽器じゃな……はごあっ!」
「そーれそーれ、もっとドンドコ……。あっ、もうダメ……と、糖分が……」
「エネルギー補給隊がいないのにはしゃぐからだ。まあ、少し休んでいろトワイア。あれだけ痛め付けられれば、私たち二人で仕留められよう」
「そうね、結構ボコボコになってるのをさらにタコ殴りにするのは気が引け……まあテルフェならいっか」
「ああ、奴なら構わん」
瓦礫製のバチで袋叩きにされ、何度も破壊と再生を繰り返すテルフェもどき。だが、それも長続きはしなかった。
トワイアがエネルギー切れに陥り、ダウンしてしまったのだ。ここからは、シゼルとエスタールにバトンタッチすることに。
「おのれ……もう許さないぞ! 三人纏めて押し潰してやる! プレッサーウォレイ!」
「フン、生憎だが貴様の手札は知り尽くしている。レジスタンスの幹部を舐めるな! シャドウズハイト!」
「人ならざる存在になって強くなった私の力、見せてあげる! 風魔法、ストームカノン!」
「なにっ!? 私の魔法が押し返され……チィッ!」
再構築を完了させ、テルフェもどきは反撃に出る。圧滅の魔法を使い、三人を押し潰そうとする……が、トワイアを抱えたエスタールに避けられ、シゼルの魔法で跳ね返された。
かつての対立時代から、最重要抹殺対象として対策をいくつも考案してきたのだ。今更現れたところで、シゼルたちの敵ではない。
「計算外だな……よもやここまで押されるとは。まずいな、これでは鍵を奪えぬ……」
「一つ聞かせてもらいたい、テルフェのまがい物。何故お前はそうまでしてゴッドランド・キーを奪おうとする? お前を生み出した守護者とやらの目的はなんなんだ?」
「そうね、それは知りたいと思ってた。その守護者の正体も、ね」
「……お前たちが知ったところであの方は意思を変えぬ。知られたところで支障はない……いいだろう、教えてやる」
かろうじて跳ね返された魔法の直撃を逃れたテルフェもどきは、悔しそうに歯ぎしりする。そんな彼女に、エスタールとシゼルは問う。
魔力回復の時間稼ぎも兼ねて、テルフェもどきは二人に向かって話し出す。自身を生み出した守護者の正体、そしてその目的を。
「守護者の正体はお前たちもよく知っているはずだ。フィル・アルバラーズ……彼がそうだ」
「!? そんなのあり得ない! 彼がアンネローゼたちの邪魔をするなんてそんなこと……」
「何も知らないんだな、お前たちは。まあ、それも仕方ないか。何せ……守護者が双子大地の聖礎に帰還するまで、千年分の時を次元の狭間で過ごし……大幅に変貌を遂げたのだから」
「なに……!?」
「千年も迷子になってたの!?」
テルフェもどきの口から語られた、衝撃の事実にシゼルたちは度肝を抜かれる。その様子に気を良くしたもどきは、ペラペラと話し出す。
「ああ、そうとも。元々、次元の狭間は神々の大地や暗域とは時の流れ方が違う。大地ではほんの数ヶ月しか経っていなくても、次元の狭間では数百……数千年の時が過ぎている。その逆もまたしかりだ」
「そんな長い時間、フィルくんは……ミカボシを破壊し尽くすために……」
「ああ、ミカボシは破壊された。その生物兵器としての力は失われたが……フィルの『望み』を叶えるべく、彼と一つになった。そうして生まれたのが守護者だ」
「フィルくんの望みかー。彼、何を望んだのさ?」
「そんなのは決まっている。この双子大地の永遠なる平和だ。そして……その平和を守るための存在になることを、彼は渇望したのだ」
シゼルやトワイアたちの問いに、テルフェもどきは答える。そうして、少しずつ真実が見えてくる。フィルが何故、守護者になったのか。
ロストメモリーズを派遣し、鍵を奪おうとしているのか……その真意が。




