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221話─プロジェクト始動!

「済まない、質問の意図がよく分からないのだが。何故サラが出てくるんだ?」


「うふふ。あの娘ね、いつも楽しそうに聞かせてくれるんですよ。あなたのお話」


 スーマンの元に向かいながら、ネネは楽しそうにそう話す。サラはいつも、自分のことのっちのけでジェディンのことばかり話しているという。


「こんなお仕事していますから、いつ命を落とすか分からないでしょう? だから、サラはずっと親しい友人を作ろうとしなかったんです。それこそ、ジュディちゃんくらいなんですよ、あの娘の友達は」


「……確かに、な。レジスタンスに身を置いていれば、いつ亡くなるか分からない。親しい者の死は、堪えるものがある」


 かつて、妻や子……村の仲間たちを亡くしたジェディンにとって、ネネの言葉は深く共感を覚えるものであった。


 どんなに友情を育んでも、死んでしまえば無に帰してしまう。築き上げた絆が強ければ強いほど、失われた時の痛みや虚しさは大きいのだ。


「レジスタンスに入ってすぐの頃は、サラにもお友達がたくさんいたんです。同期の娘たちが。でも……一年の間で、ジュディちゃん以外は命を落としてしまいました」


「辛いだろうな、それは。共に生きた仲間を失う苦しみは……俺もよく分かるよ」


「だからこそ、サラはあなたに惹かれたのかもしれません。ジェディンさん、お願いが……」


「ハァーイ! 待ってたワヨ、ジェディンチャン! お手伝いに来てくれてありがとネー!」


 ネネの言葉を遮り、スーマンの陽気な声が聞こえてくる。いつの間にか、彼の元にたどり着いていたようだ。


 話は後で、と一旦切り上げネネは自分の作業に戻ることに。彼女が何を頼もうとしたのかは気になるが、ジェディンにはやらねばならないことがある。


「いや、こちらこそ待たせて済まなかった。解析はだの程度進んでいる?」


「それがネェ、プロテクトを外すのに苦労してるのヨォ。もー解除パスを割り出すのが大変で大変で! みんなで難儀してたのよネェ」


「ああ、やはりそこでつまずいていたか。俺も手伝おう、解除パスは知っているからすぐ終わるさ」


 ジェディンが予想していた通り、不正改造防止機能に悪戦苦闘していたようだ。フィルの仲間に加わって間もない頃、ギアーズから解除パスを聞いていたジェディンがドライバーを受け取る。


「どれどれ……ふむ、キチンと外装が外されているな。丁寧に扱ってくれて何よりだ」


「オホホホホ、あったりまえヨォ。技術者だもの、モノは丁寧に扱わないとネェ?」


 手渡されたダイナモドライバーは、バックル部分の外装が外されていた。内部機構が剥き出しの状態になっており、一部が灰色に明滅している。


 光っているのは、中央部に組み込まれた球状のダイナモ電池……それに加え、ベルト全体に魔力を行き渡らせるための細い管だ。


「さて、早速プロテクトを解除するか……。先生に教わったやり方を見せよう、この機会に覚えるといい。ドライバーを量産したら、俺一人では処理出来なくなるからな」


「ええ、お言葉に甘えさせてもらウワ。みんなー、集まってー! ジェディンチャンのダイナモドライバー講座が始まるワヨー!」


 スーマンが声をかけると、ネネを含む十数人の魔女たちがやって来た。彼ら彼女らに囲まれ、若干窮屈さを感じつつジェディンは講義を始める。


「外装の外し方は、スーマンがやっただろうやり方でいい。俺が教えるのは、ドライバーに掛けられたプロテクトを解除する方法だ」


 そう言うと、ジェディンはダイナモ電池の中央にに右手の人差し指を押し当てる。そのまま引っ掻くように指を下にスライドさせ、電源を切る。


 それを興味深そうに見ている魔女たちに、ジェディンはダイナモ電池の切り方について詳しい解説を行うことに。


「今のが、電池をオフにする方法だ。少々コツがいるが、指先に魔力を纏わせた状態で真ん中を押さえるんだ。そうしたら、下に指をスライドさせる。指を移動させる瞬間に、爪を立てるのが上手くいくコツだ」


「ふむふむ、なるほどネェ。みんな、ちゃんとメモしておきなさイヨ?」


 ジーッとダイナモ電池を見つめている部下たちに、スーマンがそう声をかける。我に返った魔女たちは、慌てて白衣のポケットからメモ帳を取り出してジェディンの言ったことを書いていく。


「ああ、ゆっくりメモするといいさ。そう急ぐことはないからな」


「あの、一つ質問! もし上や左右にスライドさせた場合はどうなるんですか?」


「滅多にやらないが、出力の調整が出来るとフィルや先生が言っていた。ま、わざわざ直接ダイナモ電池をいじらなくてもそれくらいはやれる。あくまでメンテナンスの時にちょっと調整する……くらいのものだ」


 メモを取り終わった緑髪の魔女が、ジェディンに質問をする。それに答えた後、今度はバックル部分に手を移動させた。


 身に着けた際に上を向く部分にある、小さなボタンをカチッと音が鳴るまで押し込む。すると、ダイナモ電池が青色に光り、空中に正方形のパネルが投影される。


「ダイナモ電池をオフにしたら、この場所にあるボタンを押してプロテクト機能を呼び出すんだ。この正方形のホログラムに、パスワードの入力画面が浮かんでいるだろう?」


「ええ、バッチリ見えルワ。パスワードを入れれば、そのプロテクトが解除されるのヨネ?」


「ああ。今から、スーマンに念話でパスワードを伝える。疑うわけじゃないが、万が一ソサエティのスパイがいた時に備えたい。気を悪くするだろう、済まないな」


「いえ、気にしないでください。賢明な判断だと思いますよ、ジェディンさん」


 全面戦争のまっただ中であるが故に、ルナ・ソサエティが裏工作に出ないとも限らない。レジスタンスがしているように、何らかの方法でスパイを送り込んでいる可能性がある。


 念には念を入れて、パスワードを念話でスーマンに教えるジェディン。彼が信用するに値すると判断された者にだけ、後ほどパスワードを伝えることに。


「済まないが、全員目を瞑っていてくれ。今からパスワードを入力する」


「というわけで、ちょーっとだけ盲目になっててもらうわヨン。それっ!」


「わあっ!? い、いきなりかけないでくださいよ隊長!」


 スーマンが視覚を封じる魔法を使い、部下たちを一時的に盲目にする。その間に、ジェディンは素早くパスワードを入力した。


『パスワードチェック中……認証完了、プロテクトを解除します』


「よし、出来た。スーマン、もういいぞ」


「はーい。ゴメンネみんな、元に戻してあげルワ」


「はー、見えるようになった。もー、いつも言ってるでしょ隊長。そういう危ない魔法使う時は、こっちが心の準備出来るだけの時間くたさいって」


「メンゴメンゴー、次から気を付けルワ」


 盲目状態が解除され、先ほどジェディンに質問をしていた緑髪の魔女がスーマンに文句を言う。それに対し、スーマンはウィンクしながら答えた。


 イカツい顔と体格が合わさり、とてもではないが可愛い仕草とは言えない。子どもが見たら、まず間違いなく号泣するだろう。


「……コホン。これでプロテクトは解けた。ここからは全員で解析を行い、ドライバーを複製しよう」


「ええ、そウネ。ネネ、天文台からの報告がいつでも受信出来るようにしてて。間に合わせられないと無駄骨になるワヨ」


「はい、分かりました!」


「急ごう、やることは多いからな」


 ソサエティへの逆襲に向け、ジェディンたちは行動を開始する。当面の目的は、自律行動が可能なインフィニティ・マキーナを作ること。


 そのためには、まずドライバーをある程度複製して失敗した時の保険を作らねばならない。学生時代を思い出し、ジェディンは笑う。


「さて、先生の弟子として恥ずかしくない仕事をしないとな」


 実に楽しそうに、そう呟きつつ作業を開始した。

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― 新着の感想 ―
[一言] ギアーズ博士の作品だけに生半可な代物ではないのはわかってたが(ʘᗩʘ’) 技術魔女の複製品ドライバーだけにあの平成15号の量産ライダー風になるのか?(↼_↼)
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