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215話─開戦

 ルナ・ソサエティの部隊が攻撃を開始しようとしていた頃。レジスタンスのアジトでは、防衛兵器の準備が完了していた。


 ルナ・ソサエティ本部がある南西方面の守りを分厚く固め、どんな激しい攻撃に晒されてもいいよう何重にも結界を張り巡らされている。


 元々街から離れた山の中にあるため、無関係な一般人に被害が出ることもない。人事は尽くした。後は天命を待つのみ。


「そろそろ来るっすかね、ジェディン。ルナ・ソサエティの軍隊が」


「もうすぐかもしれんし、まだかかるかもしれん。天文台からの報告が来るまで、まだ待機──!」


「あ! た、太陽が!」


 それぞれのアーマーを装着し、サングラスをかけてエントランスから空を見上げていたイレーナとジェディン。


 数分もしないうちに、異変が起こった。空に浮かぶ太陽を、半透明な黄色のキューブ型をした結界が覆ったのだ。


「二人とも、天文台から緊急の報告……って、アレを見りゃ嫌でも理解するか」


「あれが時を固定した合図なのだな? ローグ」


「そうだ。ついてこい、第一防衛ラインに行くぞ」


 太陽を覆い隠す結界の表面に、ゆっくりと黒い鎖の文様が浮かんでいく。それを見ていると、廊下の方からローグが走ってくる。


 彼に促され、アジトの外に向かうイレーナとジェディン。目指すは、南西部に築かれた即席の要塞だ。即席とはいえ、造りは本格的。


 大量の対地魔導大砲や対空魔導砲が城壁から突き出し、連絡通路の上にもビッシリ並べられていた。ローグたちは、要塞の中に入る。


「要塞の地図と迎撃兵器の説明書だ、今のうちに頭に叩き込んどけ。脱出用の連絡通路も書いてある、全部とは言わんがある程度は覚えろ。じゃないと死ぬぞ」


「ひえっ、大きい図面……これ、全部覚えるなんて無理っすよ!」


「無理じゃねぇ、やるんだよ。じゃなきゃ死ぬだけだからな」


 分厚い説明書と大きな地図をイレーナに投げ渡した後、ローグは忙しなさそうに要塞の二階へと消えた。他の魔女たちも、皆忙しそうに動き回っている。


「あ、いたいた! 二人はこっちに来て、私やトゥリの部隊と一緒に前線に出てもらうわ」


「その方がいいだろうな、俺たちが今から兵器の使い方を覚える……というのは現実的じゃない」


「そうっすね、それよりは前に出てガンガン戦った方が貢献出来ると思うっす」


「ありがとう、敵はポータルを移動してこの要塞に攻めてくるはずよ。結界を張ってあるから、ここを無視してアジトを直接攻めるのは無理だから」


「なるほど、理解した」


 二人を迎えに来たシゼルに連れられ、要塞の正門方面へ歩いていくイレーナとジェディン。彼女ともう一人の部隊長が率いるチームに加わり、戦線に出ることに。


「今回に関しては、これまでとはまるで違う戦いになるってことを念頭に入れておいて。敵は初戦を『捨てて』くるわ」


「しょ、初戦を捨てる? どういうことっすか?」


「相手は一回目のリセットを使って、こちらの手の内を暴く作戦に出る確率がかなり高い……というより、まずやってくるわ」


 要塞の中を歩きながら、シゼルはイレーナとジェディンに説明を行う。過去何度か、ヘカテリームとレジスタンスがぶつかり合う事態になったことがあると語った。


「その時、毎回ヘカテリームは最初に使い捨ての兵器を差し向けてきたわ。損害を気にせず攻めて攻めて、こちらの手の内を暴く。それが終わったら、時の固定を解除して仕切り直す。それが敵の常套手段よ」


「そんなもの、都合よくいくものなのか? そもそも、時を巻き戻したら記憶もリセットされるのではないのか?」


「そうならないようにするための魔法を、こっちも向こうも開発済みよ。だから、二回目以降の戦闘はいつも泥沼になるのよね……」


 時の固定が解除されると、固定した時点にまで記憶がリセットされる。そのままでは、戦いで得た情報を活かせない。


 そのため、ルナ・ソサエティとレジスタンス双方で時が巻き戻っても記憶を維持出来るようにするための魔法が開発されたのだ。


「ふえー……アタイ、スケールがデカ過ぎてもう何がなんだか分かんねっす」


「要するに、だ。初戦は出来る限りこちらの情報を隠し通しつつ、敵の戦力やら何やらを分析して情報戦を有利に進める……ということか?」


「オウイエース! 流石ミスター・ジェディン、飲み込みがベリー早いデース! HAHAHAHA!」


 正門前のエントランスにたどり着くと、迷彩柄のボディスーツに身を包んだ魔女がジェディンたちを出迎えた。


 膝まで長く伸びた紫色の髪を、螺旋状にカールさせた特異な髪型と変な喋り方が特徴的な魔女だった。


「トゥリ、待たせてごめんね。ジェディン、イレーナ、この人が今回私と共同で指揮を執る部隊長のトゥリよ」


「ヘーイヘーイ! ユーらの活躍はミーも聞いていマース! ペルローナを倒したユーたちのアメイジングな活躍、期待するデース!」


「……シゼルさん。この人大丈夫なんすか? アタイ、いろいろ不安なんすけど」


「大丈夫よ、いつもハイテンションなところが玉に瑕だけど、トゥリは歴戦の猛者。戦力としてはレジスタンスで最高峰よ」


 ヘーイとデースと連呼するトゥリを見て、イレーナは不安に刈られる。こっそりシゼルに耳打ちし、本当に大丈夫なのか問いかけた。


 シゼルは小さな声でそう返すも、いかんせんトゥリの言動のせいで説得力が欠片もない。果たして、本当に頼りになるのか。


「! 魔力計に反応アリデース! シゼル、メンバーを集結させてくだサーイ」


「分かったわ。ジェディンたちはここにいて、すぐ招集するから」


 エントランスの奥の壁に立て掛けられていた、敵性反応の接近を示す計器に反応が現れた。三つずつの塊になった大量の反応の接近を見て、トゥリは即座に指示を出す。


 シゼルは懐から部隊招集用の小さな呼び笛を取り出し、おもいっきり吹き鳴らす。それを確認したトゥリは、ジェディンたちを連れ外に出る。


「わっ! 凄いっす、魔女たちがいっぱいっす!」


「前線に出るウィッチたちは、全部でシックスハンドレッド! 六百人の大部隊デース! ユー、驚いたデショー?」


「六百人、か。これだけ空に浮いていると壮観だな」


 シゼルに招集された魔女たちは、ホウキに跨がり要塞の前方の空にて待機する。その数、全部で六百人。


 トゥリと同じボディスーツを身に着け、その上から急所を守る黒いプロテクターを装備している。彼女らの頭には、トゥリとシゼル、どちらの部隊に属しているかを見分けるための軍帽を被っていた。


 赤がトゥリ隊、青がシゼル隊。部隊長が三百人ずつ率いる形だ。


「ユーたち二人には、アサルトするウィッチたちとは別行動してもらいマース。自由に動く、ツーマンセルの遊撃部隊として行動してくだサーイ!」


「ふむ、要するに高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に戦え、ということだな?」


「イエース! 敵は未知のウェポンでアタックしてきマース、不測の事態がベリーベリー起きやすくてデンジャラス!」


「アタイ、なんか頭痛いなってきたっす……」


 ハイテンションさは変わらず、やかましい声で説明を行うトゥリ。すでにイレーナが、精神的ダメージの蓄積でグロッキーになりつつあった。


 それでも気合いで耐え、トゥリの話に耳を傾ける。作戦に関わるがゆえに、聞き逃すわけにはいかないのだ。


「そこで、ユーたちには様々なミッションをしてもらいマース。負傷兵の撤退の補助、崩れそうになっている戦線の維持、敵ウェポンのデータ収集……」


「やることが盛りだくさんというわけだ。面白い、腕が鳴るな」


「オウ、やる気マックスでベリースバらしいデース! でも、ユーたちのミッションベリーベリーデンジャラス! まずいと思ったら遠慮なくエスケープしてくれて大丈夫デース!」


「そんなわけにはいかないっすよ! シショーの代理としてここにいるんすから、最後まで戦い抜く所存っす!」


 説明が終わり、イレーナとジェディンは気合いを入れる。獅子奮迅の働きで魔女たちを助ける。そう心に誓ったのだ。


「ベリーグッド! ユーのネバーギブアップソウル、ミーにバッチリ届いたデース! シゼル、もう全員来たデースか?」


「ええ、これで全員よ。私も含め、いつでも出撃出来るわ」


「オゥケーイ! ヘーイ、ウィッチーズ! これからミーたちはルナ・ソサエティとのワールドウォーに突入しマース! レジスタンスのファイデリティースピリッツ、見せ付けてやるデース!」


「おおおおお!!!」


 トゥリの言葉に、魔女たちは拳を天に突き上げて応える。いよいよ、決戦が始まるのだ。トゥリとシゼルも、呼び出したホウキに跨がり空に浮き上がる。


「それではいくっデース! レジスタンス、アッセンブル!」


「おおおおーーー!!!」


「行くぞ、イレーナ。俺たちの力を見せてやろう!」


「りょーかいっす!」


 トゥリの叫びに合わせ、進軍ラッパの音色が青空に響き渡る。ついに、ルナ・ソサエティとの全面戦争が幕を開けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] かなり無理してテンション上げてそうな新キャラが出て来たけど(ʘᗩʘ’) コイツ大丈夫か?戦場では恐れを忘れた奴から死ぬんだぞ(٥↼_↼)
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