190話─スケルトンの脅威
オボロとネクロヒューマンズの戦いが始まった頃、スケルトンたちはレジェを探し出すべく進軍を続けていた。
木の上からしばらくその様子を見ていたレジェは、頃合いを見計らい先制攻撃を叩き込む。ジャングルを進む敵の軍団に向かって、大量の宝石型爆弾を落とす。
「ほーい、みんなここで潰しまーす。ラグジュラリエンド・ボム!」
「ケカ? カカカッ!」
頭上からの襲撃に気付いたスケルトンたちは、散開して攻撃を避けようとする。が、二十近い数の爆弾を投下されては逃げ切れない。
爆風が一帯を包み、スケルトンたちが呑み込まれていく。木々が消し飛び、炎の海が広がる中……レジェは斧に乗り、宙に浮いていた。
魔法で大量の水を呼び出し、地上に落として鎮火するレジェ。これ以上燃え広がると、オボロの方に悪影響が出るからだ。
「おー、そーかんそーかん。ガチめの攻撃だったし、全部死んだか……あり?」
「カカ……カカカカ!!」
「おー、一匹生きてた。おこな感じだしー、さっさと潰しちゃお~」
全滅させたと思っていたレジェだったが、スケルトンは一体だけ生き残っていた。彼女は偶然生き延びたと思っていたが、実際は違う。
生き延びたスケルトンは、近くにいた仲間を吸収してパワーアップしていたのだ。それを知らず、攻撃を仕掛ける。
「食らえー! ラグジュラリアット・インペール!」
「カカ……カッ!」
「ほえっ!? う、受け止めた!? マジありえんてぃーなんすけど!」
「ガァァァァ!!」
「あひゃあー!?」
斧に取り付けられたブースターを吹かし、地上へ急降下していくレジェ。が、スケルトンに斧刃を掴まれて攻撃を止められてしまった。
スケルトンは斧を掴んだまま身体を回転させ、レジェを投げ飛ばす。ぶん投げられたのは、オボロたちがいる場所の反対方向。
そのせいで、元々十数メートルあった彼らとの距離がさらに開いてしまった。スケルトンをどうにかしない限り、救援には行けない。
「いったー……背中ぶつけたし。もーおこぷんだわ。あいつぶっ殺す! ニトロニクル・アクセル!」
吹っ飛ばされたレジェは、焼け残っていた木に背中を叩き付けられる。衝撃で木がバラバラになり、木片にまみれて踏んだり蹴ったりだ。
涙目になりつつ、レジェは反撃に出る。斧を上下逆さまにして刃部分に飛び乗り、ブースターを作動させて勢いよく前進していく。
「ウラー! ラグジュラリアット・ボンバー!」
「カカカ……効かぬ、そんな技は」
「ほあっ!? しゃ、喋ったぁぁぁぁ!?」
レジェが迫る中、スケルトンは周囲に散らばる仲間だった残骸をさらに吸収していく。そして、身の丈二メートルを超える巨大スケルトンに進化した。
相手が叩き付けてきた斧を手で掴み、ニタリと笑うように口を開く。同時に、眼孔に赤い光が灯り言葉を発する。
「ふんっ!」
「おわっ! あらよっと!」
「ほう、今度は受け身を取ったか。何度もしてやられるわけではないようだな」
もう一度レジェを投げたスケルトンだが、同じ手は二度通じない。空中でブースターを噴射し、ブレーキをかけたレジェはそのまま地上に降りる。
「マジありえんてぃー。スケルトンのクセに喋るなんてやばたんピーナッツじゃね?」
「カカカ! ワタシはアンブロシア様に創られたスケルトン。時間が経てば経つほど、より強く賢くなっていくのだよ」
「ふーん、じゃあもう強くなれないようにぶっ潰しちゃお!」
斧を構え、レジェは笑う。一方の巨大スケルトンも、拳を突き出し迎撃の構えを取る。先に動いたのは、レジェの方だ。
「そりゃっ! キラデコ☆ジュエリートレイン!」
「来い! スカルタックル!」
もう一度斧に乗り、レジェはブースターを噴射してショルダータックルを繰り出す。それに呼応し、巨大スケルトンも体当たりをぶちかました。
ミッドナイトアーマーの肩に取り付けられた大きな宝石と、スケルトンの身体がぶつかり合う。その結果は引き分け。互いに後ろへ吹き飛ばされた。
「あひゃっ!」
「チィッ……」
「やるじゃーん、ならこーするもんね! ラグジュラリエンド・ボム!」
「同じ技は効かぬ……こうしてくれるわ!」
宝石型の爆弾を作り出し、敵めがけて投げつけるレジェ。対する巨大スケルトンは先手を打ち、勢いよく走り出す。
投げられた爆弾を途中でキャッチし、そのまま投げ返そう……と腕を振るが、爆弾が手から離れない。驚く中、レジェが笑う。
「ざーんねーん、そー来るのは予想してたから宝石の表面に粘着性を与えましたー。それ、起爆!」
「ぐっ……おおっ!」
レジェが指を鳴らすと、爆弾が起爆する。巨大スケルトンの右腕を、肘から先を綺麗に吹き飛ばして消滅させてみせた。
「チャンス到来! 鬼デコ☆キラキラテンペスト!」
「カカカ、腕の一本や二本……すぐに再生させられるわっ! 集まれ、同胞の力よ!」
片腕を失った巨大スケルトンに飛びかかり、斧を乱舞させるレジェ。全身を切り刻んでいくも、骨自体が頑丈で中々刃が食い込まない。
それを見て余裕が生まれたスケルトンは、黒焦げになった同胞の残骸に呼びかける。すると、骨の破片が集まり新たな腕が生まれた。
「あ、やっべ!」
「食らえ! スカルナックル!」
「おっひゃー!」
再生させた右腕を振るい、パンチを叩き込む巨大スケルトン。レジェは斧を盾代わりにし、ギリギリで攻撃を防いだ。
が、勢いを殺しきれず後方へ吹っ飛んでいく。これは一人だと荷が重いと判断し、レジェはオボロと合流することを決めた。
「こりゃー無理、にっげろー!」
「待て、逃がさんぞ!」
斧に乗り、オボロの気配がする方へと逃げていくレジェ。合流さえしてしまえば、なんとかなるだろうと楽観視していたが……。
「あ、いたいたオボロ……ってぇぇー!? オボロが二人いるー!? イレちんの顔してるのもいるー!」
「ぐ、レジェか……そちらは終わった……訳ではなさそうだな、その様子だと」
「え? なんかスッゲーボロボロになってるじゃん。そんな強いの? あいつら」
「ああ……どうにも、一人では骨が折れる相手だ」
相手に追い付かれる前にオボロと合流出来たレジェだったが、そこで三度も驚かされる。オボロが傷だらけにされ、さらに相手はそのオボロとイレーナそっくりな顔をした敵。
事情を知らないレジェが混乱してしまうのも、仕方ないことだと言えた。オボロと戦っていたネクロヒューマンズは、新たな敵を見て笑う。
「あ、もう一人が釣れたっすよー。スケルトンたち、いい仕事してくれたっすねー」
「気配が無くなったからな……ほぼ全滅した状態からここまでやってくれたのだ、上出来だろうよ」
「む、お二人は無事でしたか。カカカ、ここからはワタシも加わり」
「いや、お前はもういらん。お勤めご苦労、もう消滅していいぞ」
「な……ケカッ!」
そこに巨大スケルトンが追い付き、助力を申し出るが……ネクロボロムが放った砲弾を食らい、粉々にされてしまった。
「わ、酷い。仲間を殺すなんてマジありえんてぃー」
「奴の力などタカが知れている。役立たずが加わるより、我らのエネルギーとなってパワーアップに貢献してもらう方がよほど有意義というもの」
「そーそー。その方が確実に敵ちゃん殺せるしー」
レジェに非難されても、ネクロヒューマンズは涼しい顔をしていた。巨大スケルトンの残骸が溶けるように消え、もやとなって二人に吸い込まれていく。
「パワーアップ完了だ。これで二人まとめて始末してやれる。フフフフ」
「不味いな……レジェ殿、それがしはイレーナ殿の偽者を相手する。貴殿はそれがしの偽者の相手を頼む。自分が相手というのは、予想以上にやりにくくてな……」
「おっけおっけ、お任せー。なんだかんだで、めんどくさいスケルトンいなくなったし、数が互角ならなんとかなるっしょ!」
味方は疲労が溜まりボロボロ、敵はエネルギーを補給して万全。そんな状況でも、レジェはなんとかなるさと気楽な姿勢を崩さない。
敗北が脳裏にチラついていたオボロは、そんなレジェを見て肩の力を抜く。焦っていては、勝てる勝負にも勝てない。
「行くぞ、レジェ。本物の力というものを奴らに叩き込んでやろうではないか」
「おっけー! デカデカ骨にしてやられた分、あいつらにお返ししてやるしー」
「だってさー。怖いっすねー、ボロム」
「ムダだというのに。数が揃った程度で、我らに勝てるものか」
改めて闘志を燃やすオボロたちを、ネクロヒューマンズはあざ笑う。戦局が仕切り直され、役者は揃い、戦いは加速する。




