表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/311

157話─双子大地の秘密

 立ち話もなんだからと、フィルたちは一旦基地に戻る。そこで、並行世界にある双子大地……カルゥ=イゼルヴィアでの出来事を話す。


「へえー、魔女の組織っすかぁ。次の敵は、そいつらってことっすよね?」


「そうなりますね、イレーナ。彼女たちの目的は、このカルゥ=オルセナを滅ぼすこと。そうですよね、シゼルさん」


「ええ。とはいえ、ソサエティは単純な征服欲から事を起こしてるわけではないの。……褒められたことではないけど、事情があるのよ」


 フィルに確認されたシゼルは、そう答える。彼女の口から、双子大地の真実が……今、明かされようとしていた。


「そもそも、あなたたちは何故オルセナとイゼルヴィアが双子大地と呼ばれているか知っているかしら」


「お母様から聞いたわ。並行世界にある二つの大地が偶然重なり合ったせいで、世界再構築不全が起きているって」


「そう、その通り。でも、それは非常によくない状態なの。二つの大地が重なり合うことで、濁った魔力が溜まり……『ミカボシ』が生まれるのよ」


「!? ミ、ミカボシ!? そんな、ただのおとぎ話じゃなかったんですか!?」


 ミカボシという言葉を聞いた途端、フィルは激しく動揺する。どこかから拝借してきた酒を飲んでいたローグは、フィルに問う。


「なんだ、知ってんのかよ坊主」


「……ええ。僕がまだアルバラーズ家の里にいた頃、おとぎ話として語ってもらってたんです。ウォーカーの一族の切り札である、ミカボシのことを」


「え? ちょ、ちょっと待つし。そのミカボシってのは、フィルちんたちと関係あるわけ?」


「……はい。でも、それなら理由付けになるんですよ。ソサエティの魔女たちが、何故向こうの世界のウォーカーの一族を根絶やしにしたのかが」


 一人納得したフィルは、仲間たちにも理解出来るように説明を始める。彼の口から、驚くべき真実が語られた。


「ミカボシというのは、ウォーカーの一族が持つ最終兵器……()()()()()()()()()()()超常生物のことを指すのです」


「超常生物、だと?」


「そうです、ジェディンさん。異なる世界に存在する大地同士の座標を重ね合わせ、共鳴させることでそれぞれの大地が持つ魔力を混ぜ合わせるんです。やがて魔力は濁り、ミカボシの源となる核が生まれる……」


「そう。そうして、長い時をかけてミカボシは成長していく。その過程で引き起こされるのが、世界再構築不全。世界ごと混ぜ合わせた魔力を吸収し、蓄え、力を増していくのよ」


 フィルとシゼルの語ったミカボシの真実に、アンネローゼたちは開いた口が塞がらない。あまりにも壮大過ぎて、理解するのに時間を要しているのだ。


「……しかし、そうなると一つ疑問が生まれる。誰が何故、ミカボシを生み出したのだ?」


「答えは一つですよ、オボロ。まず間違いなく、ミカボシを作ったのはイゼルヴィアにいたウォーカーの一族……そうですよね、シゼルさん」


「ええ。ルナ・ソサエティに残されている資料にはそう記されているわ。だからこそ、魔女たちはウォーカーの一族を根絶やしにした。ミカボシが生まれた時点で手遅れだとも知らずにね」


 アルバラーズ家がミカボシを作ったのではないと、フィルには断言出来た。何故なら、彼らはいにしえの昔からカルゥ=オルセナに居たのではない。


 コリンとの取り引きの末、神々の手の届かない安全な大地に逃がされた結果、カルゥ=オルセナに住むことになったのだから。


「しかし、それでもまだ疑問が残るのう。何故イゼルヴィアのウォーカーの一族は、ミカボシなぞ作り出したんじゃ?」


「それは……私には分からない。そうした部分の資料は残っていなかったから」


「シショーなら何か分からないっすか? ミカボシを生み出す理由とか」


「……まず間違いなく、ミカボシを生み出す理由は『並行世界への侵略』でしょう。そうでなければ、莫大なコストをかけてミカボシを生み出す意味はありません。向こうのウォーカーの一族が駆逐されたのも、当たり前の話ですよ」


 もっとも、本当に生み出せるとは思っていなかったとフィルは語る。ミカボシを生み出すには、一つの大地を枯らしてしまうほどの魔力を抽出しなければならないらしい。


「まあ、もう生まれてしまっているわけですし話を進めましょう。ミカボシが生まれたわけですが、それと魔女たちの侵略と何の関係があるんです?」


「ルナ・ソサエティの最高幹部……月輪七栄冠はこう考えているの。オルセナにいる『封印の御子』を殺し、眠りに着いているミカボシをこちら側に押し付けてしまえばいい、と」


「封印の御子……お母様から聞いたわ。確か、双子大地それぞれに一人ずつ、世界のパワーバランスを保つために存在するって」


「なるほど、姉さんはそう説明したのね。それは半分正解、半分間違いといったところね」


「だな。それだとそもそも、『封印の』って肩書き付ける意味がねえからな」


 フィルやアンネローゼ、シゼルが話をしているところにローグが割って入る。どうやら、順調に『出来上がって』きているようだ。


「文字通り、御子は封印してんだよ。ミカボシが目覚めねえようにな。だから、仮にオルセナの御子が死んだらミカボシが入り込んでくる。で、大地滅亡ってすんぽーだ」


「なるほどのう。じゃから魔女たちは御子を殺そうと躍起になっておるのじゃな。自分たちが助かるために」


 そう吐き捨てるギアーズだったが、内心ではソサエティを責める気にはなれなかった。もし彼が彼女たちの立場なら、同じことをしただろうから。


 誰だって、無残に滅びる結末など迎えたくはない。大地を守る者として、ルナ・ソサエティの魔女たちは必死に生き残る道を探しているのだ。


「そう聞くと、なんか哀れね~。そのマジョたち、ノリノリでやってるわけでもなさそーだし」


「……どうかしら。少なくとも、イゼルヴィアの封印の御子様は心を痛めていると思う。でも、その下の魔女たちは……違うわ」


 レジェの言葉に対し、シゼルはそう口にする。過激思想の持ち主たちがソサエティにいると、彼女はそう語った。


「ソサエティも一枚岩じゃない。中には、大地を守るという使命抜きに、単純に侵略行為を楽しみたいだけのクズも相応にいるのよ」


「なんだ、結局カンパニーのような思想の者たちもいるわけか。そんな奴らまで御さねばならぬとは、上層部も大変だ」


「逆よ、むしろ上層部……七栄冠の一部が主導してるのよ。だから、そうした積極的侵略方針に反旗をひるがえす魔女もいるの。私のようにね」


 どの世界でも、組織というものは完全な一枚岩になり得ない。必ず、規模の大小はあれど派閥というものが生まれる。


 侵略推進派と、そうでない穏健派の根深い対立があるのだと、シゼルは説明する。穏健派の一部はソサエティを離れ、レジスタンスとして活動しているらしい。


「私や姉さんも、レジスタンスとして活動していたのよ。でも、姉さんは捕らえられ……追放刑に処されたわ。任務を口実に、カルゥ=オルセナに追われたの」


「その結果、私が生まれたってわけね。……凄い運命ね、これ。ドラマチックというか、なんというか……」


「でも、そのおかげで希望が見えた。私たちが力を合わせれば、ソサエティを止められる。そして、探し出すのよ。どちらかの大地を滅ぼすことなく、ミカボシを倒す方法をね」


 シゼルの言葉に、フィルたちは力強く頷く。ルナ・ソサエティがカンパニーのような完全悪なら別だが、そうではない。


 魔女たちはミカボシの脅威を消し去り、平和を取り戻したいだけなのだ。一部の過激派はともかく、そうでない者たちとは対話の余地がある。


「……いよいよ、新しいステップに進む時が来ましたね。まずは、探し出しましょう。カルゥ=オルセナにいる封印の御子を。彼……もしくは彼女にも協力してもらうんです」


「そうじゃな、そうすればミカボシを滅ぼすための方法が見つかるやもしれん。よし、今日はゆっくり休んで、明日から御子探しをするぞい!」


「おーーーー!」


「へいへい、こりゃ面倒なことになりそうだ」


 約一名を除き、ギアーズの言葉に全員が拳を天に突き出す。残りの一名、ローグはそう呟き酒をあおるのだった。



◇─────────────────────◇



『そうじゃな、そうすればミカボシを滅ぼすための方法が見つかるやもしれん。よし、今日はゆっくり休んで、明日から御子探しをするぞい!』


『おーーーー!』


「……動き出したね、シュヴァルカイザーとその仲間たちが。これでようやく……ぼくも作戦を実行に移せるよ」


「ええ、左様でございますね……クルヴァ様。これで、先祖代々受け継いできた悲願を……」


 新たな目標に向かって動き出そうとするフィルたちを、ミツメル者たちがいた。鏡を通して、神主のような装束を着た少年が一部始終を見ている。


 側に仕えていた巫女に声をかけられ、少年は頷く。傍らに置かれていた分厚いノートを手に取り、ぎゅっと握り締める。


「行こう、リーファ。彼らとコンタクトを取るんだ。ミカボシを滅ぼして、二つの大地を救う。そして……一族に課せられた封印の使命を、ぼくの代で終わらせる」


 ヒーローと魔女、そして封印の御子。三者が出会う時……物語は、さらに加速する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今回の次元戦争も向こうの世界のウォーカーの一族が作った傍迷惑な粗大ゴミが原因なのか(ʘᗩʘ’) 魔女連中も色々過激な奴まで居たら最悪、三つ巴か(?・・)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ