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150話─唸れ! 愛と絆の刃!

 助太刀に現れたレジェとイレーナがヴァルツァイトと戦い、その間にフィルとアンネローゼは体力を回復させる。


「シショーたちに手出しはさせないっすよ! 叩き潰してやるっす!」


「鬼デコ斧ちゃーのサビにしてやるし~!」


「二人とも、気を付けて! ヴァルツァイトは僕たちの能力をコピーしています! 単体だけでなく組み合わせて使ってきますよ!」


「その通リ。エモーの使うスーツのデータは無いガ……遅れヲ取ることナどない! オロチ牙カマイタチ!」


 ヴァルツァイトは鎖の先端に刃を生やし、高速で振り回して周囲一帯を攻撃する。ジャングルの大木すらも容易く両断する、恐ろしい切れ味を見せ付けながら。


「ひえっ、こいつ無差別過ぎるっす!」


「まずハお前だ。死ねィ!」


「そーはさせないしー。キラデコ☆ジュエリートレイン!」


 木々を伐採しつつ、イレーナから抹殺せんと鎖を放つヴァルツァイト。そこに、背後に回り込んだレジェが攻撃を放つ。


 上下を逆にした斧に乗り、超高速の体当たりを叩き込もうとする、が。ヴァルツァイトは背中を守る翼を硬質化させ、体当たりを受け止めた。


「うっそ~!? マジで!?」


「残念だっタな。その程度ノ攻撃、受け止めるのハ造作もナい」


「でもでも~、こっちに意識向いたっしょ?」


「何……しまっタ!」


「レジェさん、ナイスっす! 食らえ、バイブレートショット!」


 受け止められたのは予想外だが、意識を逸らさせることには成功した。鎖のスピードが鈍ったことで、イレーナが迎撃する猶予が生まれたのだ。


 振動する弾丸を連射し、鎖を粉砕するイレーナ。相手が立て直す暇を与えんと、猛スピードで敵の懐に飛び込んでいく。


「今度はこっちの番っす! ギガソニック・アクセライズ!」


「チッ! 二人揃ってムダな足掻きヲ! アメジストセイバー!」


「レジェさん、同時攻撃っす! ギガソニック・シンセサイズ!」


「らじゃ~! ラグジュラリアット・ボンバー!」


 フィルが振るう剣を模した、紫色のフランベルジュを呼び出すヴァルツァイト。そこに、イレーナたちの同時攻撃が炸裂するが……。


「バカめ、遅い! シャトルエスケープ!」


「んあっ!? げ、迎撃しない!?」


「やっべ、ぶつか……あいたっ!」


 迎撃すると見せかけて、ヴァルツァイトは翼を羽ばたかせて素早く上昇。その場から離脱し、二人を同士討ちさせることに成功した。


 ヴァルツァイトが斬り刻んだ木の下敷きになりつつ回復に努めていたアンネローゼは、仲間たちを心配して叫ぶ。


「イレーナ、レジェ! 大丈夫!?」


「な、何とか大丈夫っす!」


「アーマー頑丈だし~、よゆーよゆー!」


 幸い、お互い急ブレーキをかけたことで直撃こそしたものの大きな怪我はせずに済んだ。しかし、ヴァルツァイトに頭上を押さえられるということはすなわち……奥義の発動を許すということ。


「ククク、安心してイられるノも今のうちダ! 今度コそ仕留めて……」


「そうはさせん! ジェディン殿、貴殿の力お借りしますぞ!」


「ああ、行けオボロ! ぬいぐるみたちで道を作る、踏み越えて進むんだ!」


 奥義の発動体勢に入ろうとした直後。遅れて合流してきたジェデンとオボロが現れ、連携攻撃を仕掛ける。


「チッ、次カら次へト……邪魔者が増えるナ! V・T・C:ストラッシュ!」


「させぬ……九頭流剣技、終ノ型! 地砕下り龍!」


 ジェディンが空中にぬいぐるみを浮かべ、道を作る。その上を跳び渡り、オボロはかつての主に刃を向けた。


 迎撃するヴァルツァイトだが、人間に生まれ変わり力がみなぎるオボロ相手には分が悪かった。剣を砕かれ、地上に叩き落とされる。


「グウッ! バカな、たカがドロイド風情に……」


「社長、それがしはもうドロイドではない。それがしは生まれ変わったのだ、生身の身体を持つ人に」


「あ、ホントだ! オボロ、いつの間に変身しちゃったんすか!?」


「詳しい話は後ですよ、イレーナ。今は……ヴァルツァイトを倒すのが先です!」


 人間になったオボロに驚くイレーナ。そんな彼女に、復活したフィルが声をかける。防御用に被っていた木々を押しのけ、アンネローゼと共にオーバークロスを行う。


「行きますよ、アンネ様! デュアルアニマ……」


「ええ、やってやろうじゃない! ……オーバークロス!」


 秘められた力を解き放ち、フィルは黄金の鎧を纏う戦士に、アンネローゼは漆黒の鎧と翼を持つ堕天使へと変化する。


 これで、数は六対一。圧倒的に優位な状況になった。


「エターナル・デイブレイク!」


「ラグナロク!」


「オン・エア!」


 それぞれ名乗りをあげた後、同時に叫ぶ二人。もはや、誰の目にもヴァルツァイトの敗色が濃厚であると見て取れた。だが……。


「……フン。中々ニ絶望的な状況ダな。だが、私は諦めるわけニはいかヌ! この『渇き』を癒やすタめに、勝たねバならぬのだ!」


「上等よ、アンタの事情なんて何にも知らないけど……ここでぶっ潰す! 私たち全員でね!」


 ヴァルツァイトは逃げない。真っ直ぐアンネローゼの元に突撃していく。だが、いくらフィルたちの力を使えるとはいえ数の差を覆すには至らない。


「これまで散々やって来た悪事、ここで全部裁いてやる! グラヴィトーラ・ヘイトス!」


「グッ……」


「お前の命運もここまでです、ヴァルツァイト! ウェザーチェンジ、サンダライト・ブレード!」


「ぐおあっ!」


 アンネローゼの突きを食らい、さらにフィルの天候操作によって引き起こされた落雷に貫かれた。怯んだところに、他の仲間たちの攻撃が放たれる。


「これまでやりたい放題してくれたお礼をしてやるっす! 覚悟しろオラー!」


「今ここで、禍根を断つ! もう二度と、カンパニーの魔の手をこの大地に伸ばさせはしない!」


「絶叫しろ、ヴァルツァイト。お前の断末魔の叫びが、地獄へと導く鎮魂歌になるのだ!」


 イレーナの放つ弾丸が、オボロの振るう刃が、ジェディンの操るぬいぐるみの群れが。ヴァルツァイトを襲い、アーマーを破壊していく。


(グ、バカな……この程度ノ数など、ルインブリンガーの性能ヲ以てすれば容易ク蹴散らセるはず。何が足りない、私ニは……ナニガ……)


 波状攻撃に晒される中、ヴァルツァイトの脳裏を走馬灯が駆け抜けていく。振り切るように反撃に移るも、かつての思い出がどんどん溢れてくる。


 遙か昔、ヴァルツァイトは暗域の片隅にあるスラム街で生まれた。生まれてすぐ親に捨てられ、誰にも愛されることなく、誰を愛することもなく生きてきた。


『この野郎、よくも俺たちの縄張りで残飯漁りやがったな! 死ね、このチビ!』


『うっ! ぐふっ! このっ……死ぬのはお前だ!』


『!? こいつ、ナイフを……ぎゃあっ!』


 誰も信じず、ただ一人孤独に生きてきた。その頃から、彼は『渇いて』いた。単純な空腹ではない、魂の飢えに苦しんでいたのだ。


(思えば、アの時からズっと……私は渇いテいた。この渇きかラ逃れタくて、私は……サイボーグにナったのだ)


 殺伐とした日々を生き延び、いつしか大魔公へと成り上がっていたヴァルツァイト。どれだけ栄華を手にしても、渇きは癒えない。


 ある時、ふと思い付く。生身の身体を捨て、キカイの身体になれば……渇きから逃れられるのではないのかと。だが、それもムダだった。


(だが、キカイの身体ヲ得ても脳髄ヲ苛む乾きは消えナかった。だかラ私は、考えタ。栄華を極めレば、いつしかこの乾きモ消えると)


 イレーナを翼の一撃で吹き飛ばしつつ、ヴァルツァイトは過去を思い出す。乾きから逃れるために、カンパニーを興し勢力を拡げ続けた。


 魔戒王となり、カンパニーの威光を万天下に知らしめることが出来れば。乾きが満たされるかもしれないと考えたのだ。


 しかし、それでも渇きが癒える気配はなかった。それでも、彼は止まれない。いつか、きっと。そんな望みを捨てきれずにいたのだ。


「何故ダ……ナゼ! 何故お前たちハ平然トしてイラレル!? カンジナイのか、私のように! 脳髄ヲ苛むコノ渇きを!」


「うあっ!? 吹き飛ばされるっすー!」


「邪魔者はキエロ……! 貴様らはイラナイ!」


「ヴァルツァイト、お前が何を悩んでいるのかは僕たちには分からない。その渇きが何なのかも。でも、これだけは言えます。僕たちは、一人として『渇いてはいない』!」


 これまで心の奥深くに閉じ込めてきた感情を爆発させ、ヴァルツァイトは再び無数の鉄片を出現させ嵐を巻き起こす。


 フィルとアンネローゼ以外を遠くに吹き飛ばし、二対一の状況に持ち込む。相手の豹変っぷりに何かを感じ取り、フィルはそう声をかける。


「……ナンダト?」


「僕たちは愛を知っているからですよ、ヴァルツァイト。誰かを愛することの尊さを知っているから、どんな状況でも渇かずにいられる」


「アンタ、随分偉い地位にいるみたいだけど。誰かに愛してもらったことある? 誰かを愛したことある? どうも、そんな経験してなさそうなのよね。言動で分かるわ、アンタ」


「ダマレ! 愛だと? そんなくだらぬモノ、私には不要ダ! ……貴様らが渇いてイナイと言うのなら、同じ乾きヲ与えてやる。この奥義でな! カタストロフ・エンドワールド!」


 激昂したヴァルツァイトは、奥義を放ちフィルたちに突進する。対するフィルは、黄金に輝く剣を作り出す。


「アンネ様、これで終わらせましょう。二人で一緒に!」


「ええ、そうね。見せ付けてやりましょ? 私たちの愛の力を!」


 フィルとアンネローゼは、手を重ね剣の柄を握り締める。そして、突進してくるヴァルツァイトに向かって飛翔していく。


「これで終わりです、ヴァルツァイト! 奥義……」


「ラヴァーズ・グランバースト!」


 二人の魔力が流し込まれ、刃が巨大化する。力を合わせて剣を振り上げ……一刀の元に、ヴァルツァイトを両断した。


「ば、かな……負け、たのか。この、私が……」


「愛を知らないお前に! 僕たちは負けない!」


「これで終わりよ、滅びなさい!」


 数多の悲劇を引き起こしてきたキカイの王が今、二人の英雄によって……引導を渡された。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラスボスがオールコピー可能な偽物野郎な時点でチームワークに負けるのは目に見えていたが(ʘᗩʘ’) 1番の弱点が当人の心持ちか(٥↼_↼)何も無かったから全てを欲したけど満たされず、唯一持っ…
[一言] ヴァルツァイトの奴、愛情を注がれなかったゆえに誰も信じられなかった ……ある意味フィルのIFなのかもしれないな
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